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2003.11.23

R.P.G.(4)


   カズミは言っていた。ネットのなかの“家族ごっこ”は楽しかったと。
   そこでしか得られないものがあったと。大切だったと。

   “お母さん”も言っていた。孤独な人生を慰めてくれるものが、そこにはあったと。

   ミノルが斜に構えながらも、“家族”から目を離せなかったのも、“話せるオヤジって、
   ちょっと欲しかった”という些細な夢を、そこでなら、不完全な形ながら、かなえることが
   できたからだろう。

   もしも△△が、ネットのなかに足を踏み入れていたらどうだったろう?
   
   △△が自身の顔も見せず、声も聞かせず、ハンドルネームの陰に安全に身を隠して、
   その心の内を誰かに語る機会を得ていたら?

   怒りに暗く翳る瞳や、傷心に頑なに歪んだ口元は隠したまま、ただ言葉でそれを
   誰かに伝え、ぶちまけることができていたら?

   ひょっとしたらそのネットのなかの誰かは、血肉を具え行動力があるが故に、
   いたずらに△△に引っ張られていった××にはできなかった役割を、果たして
   くれたかもしれない。
   △△に捕まえられず、△△に巻き込まれることのない距離から、彼女に語りかけ、
   彼女を癒し、彼女の怒りを理解する役割を。
   中本のような理解者にも、出会えたかもしれないのに。

                     『R.P.G.』宮部みゆき著

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