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2003.11.23

R.P.G.(4)


   カズミは言っていた。ネットのなかの“家族ごっこ”は楽しかったと。
   そこでしか得られないものがあったと。大切だったと。

   “お母さん”も言っていた。孤独な人生を慰めてくれるものが、そこにはあったと。

   ミノルが斜に構えながらも、“家族”から目を離せなかったのも、“話せるオヤジって、
   ちょっと欲しかった”という些細な夢を、そこでなら、不完全な形ながら、かなえることが
   できたからだろう。

   もしも△△が、ネットのなかに足を踏み入れていたらどうだったろう?
   
   △△が自身の顔も見せず、声も聞かせず、ハンドルネームの陰に安全に身を隠して、
   その心の内を誰かに語る機会を得ていたら?

   怒りに暗く翳る瞳や、傷心に頑なに歪んだ口元は隠したまま、ただ言葉でそれを
   誰かに伝え、ぶちまけることができていたら?

   ひょっとしたらそのネットのなかの誰かは、血肉を具え行動力があるが故に、
   いたずらに△△に引っ張られていった××にはできなかった役割を、果たして
   くれたかもしれない。
   △△に捕まえられず、△△に巻き込まれることのない距離から、彼女に語りかけ、
   彼女を癒し、彼女の怒りを理解する役割を。
   中本のような理解者にも、出会えたかもしれないのに。

                     『R.P.G.』宮部みゆき著

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R.P.G.(3)

   私は偏見を持つほどに、ネット社会のことをよく知らないのでね。

   ただ、ある媒体があれば、そこに人間関係が生まれるということぐらいはわかる。

   現実社会に真実と嘘が混在しているのと同じように、ネット社会にも嘘と真実が混じり合って
   存在しているんだろう・・・ということぐらいはわかる。

                     『R.P.G.』宮部みゆき著

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R.P.G.(2)


   何が欲求不満よ。
   そうやって女をバカにするあんたたちのおかげで、あたしたちがどれほど嫌な思いをするか、
   ちょっとでも考えたことがあるの?
   
   もう若くないというだけで、夫がいなかったり、子供がいなかったりするだけで、まるで
   人間じゃないみたいに言われる女の気持ちが、あんたにわかるの?

   そんな現実に、私は心底うんざりしてるの! 疲れたのよ。だけど生きていかなきゃ
   ならない。働かなきゃ食べていけない。会社でも煙たがられているのはわかってる。だけど
   今さら仕事をやめて、どうしろっていうのよ。どこに行くっていうの?

   逃げ場が欲しかったの。だから楽しかった。
   “お母さん”になるのは楽しかったのよ。
   ネットのなかだけでもよかった。
   自分の人生まで変わったみたいな気持ちになって、それだけであたしは幸せだったの!

                     『R.P.G.』宮部みゆき著

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R.P.G.(1)


   サイバースペースで育まれる人間関係には、現実社会のそれと同じくらいの価値もあれば
   温かみもあるんです。
   デタラメや嘘ばかりが横行しているわけじゃありません。
   顔を合わせないからこそ、自分の姿や立場にとらわれないからこそ打ち明けあうことので
   きる本音もあれば、そこで育つ親愛の情だってあるんです。

                     『R.P.G.』宮部みゆき著

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