『チルドレン』伊坂幸太郎
ここ数日、大掃除と平行して面白い本を立て続けに読んだ。
『チルドレン』 伊坂幸太郎 講談社
『砦なき者』 野沢尚 講談社文庫
『イラクの中心で、バカとさけぶ』 橋田信介 アスコム
『さらば小泉純一郎!』 天木直人 講談社
この4冊、一度読み出したら止められなくて、とにかくひたすら読み続けた。
(もち、その分大掃除は遅れているわけで・・・汗)
この作者の作品を読むのは初めてだけど、
とにかく面白かった。
帯には「短編のふりをした長編小説です。
帯のどこかに“短編集”とあっても
信じないでください。伊坂幸太郎」とある。
確かに一編一編は独立した話だけれど
最初の「バンク」に登場する陣内という
人物を核にして全編エピソードが繋がっ
ている。
学生の陣内と友人の鴨居、そしてたまたま
そこにいた永瀬が巻き込まれた銀行強盗事件。
どうやらこの強盗事件は普通の強盗事件
ではないらしい。
そして数年後、家庭調査官になった陣内。
○後輩の武藤は、ある少年事件を担当。彼は陣内の押し付けがましいアドバイス
を内心迷惑がりつつも、そのおかげで少年とその父親の不可解な態度の意味をだん
だん知っていく。
○永瀬の恋人・優子は学生時代、陣内に無理やり彼が恋した女の子に告白する
シーンを見ててくれと付き合わされた事件を思い出す。結局、優子と永瀬は陣内が
振られるシーンを見ることになってしまう。失恋した陣内は「今、この場所は時間が
止まっている」ととんでもないことを言い張る。周囲を見渡すと、確かに時間が止まっ
ている? そこから意外な事件が見えてくる。
○非行少年相手の部署から離婚調停を扱う部署へと異動した武藤。担当した一組
の夫婦は離婚には同意しているが、娘の親権のことで揉めている。そんなある日、
陣内は武藤を、自分が担当する非行少年の働く飲み屋に連れて行く。実は陣内は・・・。
○そして最後は、永瀬と優子の学生時代、陣内がデパートの屋上でバイトをすると
いうので見に行く。なかなか現れない陣内を待っている間に小さな事件がおきる。
そしてやっと現れた陣内は意外な姿。さらに、この物語の最初のほうに提示されて
いた陣内の「ある謎」が解き明かされる・・・。
時系列は前に行ったり後ろに行ったりなのだが、全然不自然さを感じない。
陣内という一見豪快でいい加減な男のキャラクターが見事に魅力的に描かれており、
もっともっと陣内を知りたくなってしまう。その意味だけでも一読の価値はあった。
さらにさらに、一編一編のひねりが「オミゴト!」
どんな風に期待を裏切ってくれるのか、ワクワクしながら読んだ小説は久々のような
気がする。
伊坂幸太郎さんはまだ30代前半の作家さん。その才能に一挙にファンになりました!
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