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2004.09.26

映画『ボーリング・フォー・コロンバイン』

bowling_for_columbine.jpg1999年コロラド州のコロンバイン高校で
起きた生徒二人による銃乱射事件を入り口に、
突撃ルポのマイケル・ムーアが銃社会のアメリカを
斬っていく。

あらゆるメディアが事件の分析を試みた。

映画やTV、ビデオゲームにおけるバイオレンスの
氾濫が悪いのだ・・・
家庭の崩壊の産物だ・・・
高い失業率が原因だ・・・
アメリカが建国以来たどってきた暴力的歴史の
せいなのだ・・・
犯人が聴いていたという理由からハード・ロック歌手マリリン・マンソンが悪いのだ・・・

マリリン・マンソンのライブコンサートがコロラド州で禁止された。
そこでマイケルは問う。
「マリリン・マンソンのライブを禁止するのなら、なぜボウリングも禁止しないのか?」
なぜなら、二人の少年はその朝、ボーリングをしており、その後に凶行に及んだ。
歌を聴いていたというだけでマリリン・マンソンが悪いと言うなら、犯行直前までやっていたボーリングは悪くはないのか?

マイケルは先に挙げた分析について、一つ一つを検証していき、アポなし突撃取材を敢行していく。
彼は、映画を見る人の気持ちに立って、一つの取材で疑問が湧けばそれを検証するために次の取材を行う。
その行動力は感動的でさえある。

そしてマイケルはコロンバイン高校銃乱射事件で障害を負った被害者二人とKマートの本社に乗り込んでいく。
犯人の少年たちが銃弾を買ったKマート本社に、銃弾を売るべきではないと訴えるために。

さらに、マイケルは単独で全米ライフル協会(NRA)会長チャールトン・へストンの豪邸を訪れアメリカ国内での銃規制に反対する人々や組織に説明責任を求める。
逃げるように背中を向けたチャールトン・へストンにマイケルは一枚の写真を差し出す。
それは6歳の少年に銃で射殺された6歳の少女のあどけない笑顔の写真。

Kマートの時も、6歳の少女の写真にも、私はマイケルの銃規制の願いを感じて涙がこみ上げてしまった。
『華氏911』の時も、そうだった。
息子をイラクで亡くした母、家族の目の前で突然アメリカ軍に連れ去られるイラクの男性・・・戦争の犠牲者たちの生の声、生の姿に何度も涙がこみ上げた。

アメリカという国を愛しているが故に「世界一の銃犯罪大国・アメリカ」に疑問を突きつけるマイケルの思いがひしひしと伝わってくる。

そして、なぜ銃犯罪大国になってしまったのかの考察の中に、「恐怖を煽るマスメディア」の問題が出てきた。
それはまさに『華氏911』に引き継がれる問題の一つでもある。

同じコロンバイン高校事件をもとに『エレファント』という映画が作られている。
監督のヴァン・サントによると『エレファント』というタイトルは、イギリス人アラン・クラークの同名映画にヒントを得たと言う。

クラークは「同じ部屋にいる象にさえ気づかない、見て見ぬ振りをしたほうがいい」ということわざからタイトルをつけたらしい。だが、サントは盲目の僧侶達が自分の手で触れた(象の)一部分の印象しか語れず、物事の全体像は見えにくいという教訓話のほうがこの映画にしっくりときたという。

『ボーリング・フォー・コロンバイン』はまさに「同じ部屋の象に見て見ぬ振りできない」マイケル版『エレファント』といえるかも・・・

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コメント

もう12年前になるが、服部君は、住所の似通った他の家を
ハロウィンパーティ会場と間違えたことで、射殺された。
http://waseda-links.com/event/article/0309_qoon/

…この事件の原因は『Freeze!(止まれ!)』という意味が
分からなかったからとも。全米ライフル協会が守ってる利権。
「銃社会アメリカ」の生んだ悲劇とも、言われている。

…ボウリング・フォー・コロンバインのなかで、カナダでも
銃が自由に持てるが、銃による犯罪は少ないと示している。

ドイツ381人、フランス255人、カナダ165人、イギリス68人、
オーストラリア65人、日本39人が、1年間に銃で亡くなった。
そして アメリカでは 11,127人が、銃で亡くなった。

700万丁の銃があるカナダと、アメリカはどこが違うのか?
全米ライフル協会が言うように、銃そのものには、罪はない。
しかし銃犯罪国アメリカで銃利権を貪る人々には、罪がある。
全米ライフル協会は、その筆頭だろう。

マイケルムーアの視点は、アメリカという『国』に注がれる。
しかし、銃犯罪に対する恐怖と、銃による自己防衛に固執する
人々の連鎖は、終わらない「悪循環」に見えてしまうのだ。

…アメリカという国は、対立・恐怖と、力の論理の上に立つ。
アフガン・イラク…戦争を続ける論理が、そこに見える。

投稿: たまり | 2004.09.29 22:29

イギリスから逃れてきた清教徒から始まる「恐怖」と「自己防衛」の歴史は、アニメでとても分かりやすく描かれていましたね。

私もこの映画を見ることで、アフガンやイラク、それ以前の他国への出兵・・・戦争を続けるアメリカの論理が分かりやすく見えたような気がしました。

マッド・アマノ氏がマイケル・ムーア監督に「広島・長崎原爆投下記録映画を作ってもらおう署名運動」ってのを一時期言ってましたが(やっぱ単にパロディだった?)、一瞬マジで賛同しかけると同時にちょっと情けなくもあり・・・
日本版マイケル・ムーアはいないのかい?って感じで(苦笑)

投稿: ラブママ | 2004.09.30 15:14

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» ボウリング・フォー・コロンバイン [大器は晩成す]
ボウリング・フォー・コロンバイン http://www.gaga.ne.jp/ [続きを読む]

受信: 2004.10.05 23:00

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