映画『チャドルと生きる』
2000年 イラン
監督・製作・編集:ジャファル・パナヒ
脚本:カンブジア・パルトヴィ
出演:
フレシテ・ザドル・オラファイ
マルヤム・パルウィン・アルマニ
ナルゲス・マミザデー
エルハム・サボクタニ
モニル・アラブ
ファテメ・ナギヤウィ
モジュガン・ファラマジ
【ストーリー】
ある女性が赤ちゃんを産んだ。産婦人科の廊下で慌てふためく女性の母親。出産前の検査では男の子が生まれるはずだったが、生まれてきたのは女の子。新たな生命は祝福される運命にはなかった。「男の子でないと離縁されてしまう。」母親に促され叔父を呼びに行った女性は表通りの公衆電話で3人の女性とすれ違う。
すれ違った3人は刑務所から仮釈放された身だった。警察官の姿を目にするたびに逃げ惑い、身をかくす3人。彼女たちは逃避行のためなら何でもする覚悟だった。身分証明書もなく長距離バスに乗ろうとするが、窓口で懇願し、嘘をつかなくては乗車券も買えない。
故郷を目指す少女の儚い願いは叶うのか・・・。
時を同じくし、妊娠してしまった未婚女性が堕胎のために刑務所を脱走する。やっとの思いで実家にたどり着くも、実の兄弟に脅されて追い出されてしまう。あてもなく町を彷徨う彼女は、生活苦のために実の娘を捨てようとする母親と出会う。娘の幸せを願えばこそ、娘を捨てようとする母親に、堕胎の途を求める女性は何を思うのか。
そしてすべてを知り尽くしたような娼婦の見つめる先には・・・。
http://www.gaga.ne.jp/circle/index.html より
【感想】
2000年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞、国際批評家連盟賞、ユニセフ賞、OCIC賞スペシャル・メンション、セエルジオ・トラサッティ賞など、各種の賞を受賞し世界各国で絶賛されながらも、この映画は本国イランでは上映禁止だという。
かつての厳格なイスラム原理主義の圧政から開放されたといっても、それは男性にとっての話。イランでは女性は今もって一人で自由に行動することが出来ない。また、場所によってはチャドルというベールで全身を覆わなければならず、男性の庇護の元に生きるのが普通の生き方。
この映画に描かれた女性たちは、そんなイラン女性の普通の生き方から少し逸れてしまった女性たち。彼女たちは誰の庇護も無しに自分の意志で行動しようとする。
その彼女たちの前に必ず立ちはだかる女性抑圧の壁・・・。
この映画に描かれた女性たちの抱える問題は、この日本でもそんなに遠くない昔にあったことではないか。
また、イランだけでなく他の国でも起こっていることではないか。
この映画の原題は『The Circle』・・・円・循環。
生まれ、育ち、結婚し、妊娠し、母になり、そして娼婦に・・・循環する女たちの人生。
あるいは社会という輪の中に閉じ込められている女たちの人生。
どちらとも取れる原題だが、そのどちらともをきちんと描いた優れた作品だと思う。
願わくばこれからのイラン女性たちの未来が、大きく広がっていくスパイラルのような円であることを・・・。
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