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2005.12.11

境界性人格障害(6)

境界性人格障害・自己愛性人格障害を含む人格障害について、改めて整理しておきますね。

※『境界に生きた心子』の著者・稲本雅之さんのブログにはより詳しい境界性人格障害の説明がありますが、一応私なりにまとめておきたいと思います。

【人格障害(Personal Disorder)とは】

精神科の領域で精神病(鬱病、統合失調症など)、脳器質障害(てんかん、痴呆など)や神経症、不安障害(パニック障害、全般性不安障害など)、ストレス障害(PTSD、急性ストレス反応など)などではなく、本人の持つ性格そのものに起因する障害。生まれ育った環境やストレスなどが人格障害の大きな原因と言われているが定かではない。むろん精神病や神経症などを引き起こしやすい病質とも言える。

定義分類・診断基準として、アメリカ精神医学会(APA:American Psychiatric Association)が作成編集した「DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」があり、この定義分類・診断基準が世界の主流になっている。

DSM-IV-TRによる「人格障害(パーソナリティ障害)」の項目は、大きく、クラスターA、クラスターB、クラスターCの3つのクラスター(群)、10のタイプに分類されている。

 

【DSM-IV-TRの人格障害(パーソナリティ障害)の項目】

※DSM-IV-TR日本語版2003年8月新訂版から邦訳が「人格障害」から「パーソナリティ障害」と修正された。()の中は、最新版邦訳の診断名。

■ クラスターA [精神病に近いA群]
遺伝的に分裂病気質を持っていることが多く、自閉的で妄想を持ちやすく、奇妙で風変わりな傾向があり、対人関係がうまくいかないことがある。
ストレスが重大に関係することは少ないが、対人関係のストレスには影響を受ける。

①妄想性人格障害 (妄想性パーソナリティ障害)
 他人の動機を悪意あるものと解釈するといった、広範な不信と疑い深さ。

②分裂病質人格障害 (シゾイドパーソナリティ障害。日本精神神経学会では「統合失調質人格障害」が採用されている
 社会関係からの遊離、対人関係状況での感情表現の範囲の限定などの広範な様式。

③分裂病型人格障害 (失調型パーソナリティ障害。日本精神神経学会では「統合失調型人格障害」が採用されている
 親密な関係で急に気楽でなくなることとそうした関係を持つ能力の減少、および認知的または知覚的歪曲と行動の奇妙さの目立った、社会的および対人関係的な欠陥の広範な様式。

■ クラスターB [中間のB群]
感情的で混乱の激しい人格障害。演劇的で、情緒的で、うつり気に見えることが多い。ストレスへの脆弱的傾向がある。

④反社会性人格障害 (反社会性パーソナリティ障害)
 他人の権利を無視し侵害する広範な様式。

⑤境界性人格障害 (境界性パーソナリティ障害)
 対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式。

⑥演技性人格障害 (演技性パーソナリティ障害)
 過度な情緒性と人の注意をひこうとする広範な様式。

⑦自己愛性人格障害 (自己愛性パーソナリティ障害)
 誇大性(空想または行動における)、賞賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な様式。

■ クラスターC [神経症に近いC群]
不安や恐怖感が非常に強い人格障害。まわりに対する評価や視線などが常に気になり、それがストレスになる。

⑧回避性人格障害 (回避性パーソナリティ障害)
 社会的制止、不適切感、および否定的評価に対する過敏性の広範な様式。

⑨依存性人格障害(依存性パーソナリティ障害)
 世話をされたいという広範で過剰な欲求があり、そのために従属的でしがみつく行動を取り、分離に対する不安を感じる。

⑩強迫性人格障害 (強迫性パーソナリティ障害)
 秩序、完全主義、精神面および対人関係の統制にとらわれ、柔軟性、開放性、効率性が犠牲にされる広範な様式。

■ どの診断項目の基準も満たさないパーソナリティ機能の障害に診断されるもの
特定不能の人格障害(特定不能のパーソナリティ障害)
また、思春期以前は、人格がまだ固まっていないために人格障害(パーソナリティ障害)とは容易に診断しない。(反社会性人格障害や境界性人格障害に相当するものは行為障害と診断される事が多い)

【境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害=BPD)補足】

 人口の約2%BPDと言われており、単純計算すると、日本では約250万人BPDであることになる。
 なお、精神科を受診する患者さんの約10%がなんらかの「人格障害」で、そのうちの半数、つまり5%BPDであるという報告がある。
 また世界で最もBPDの患者さんの多い米国では、1000万人以上BPDであるのではないかと推測されている。
 明らかに女性に多く(75%)、入院患者さんではさらに男性の4倍に達している。
 http://www.deborder.com/border.html

 なお、BPDの回復期には、一過性の自己愛性人格障害を経るケースが多い という報告がある。
 ちなみに、予後についてのアメリカでの追跡調査では、最終的には症状が治まって健全に社会復帰しているケースが数多くある(10年以上の経過研究で約3分の2の患者さんが比較的良好な社会適応をしている, McGlashan,T.H.)ことも報告されている。

 また我が国の調査でも約6割が良好な予後を示したという報告がある(町沢)。
 最終的な治癒に至らなかったケースの多くは治療からのドロップアウト(逃げ出し)が原因であると言われている(治療を始めた約半数は半年以内に中断してしまい、治療終結まで治療を継続できたBPDの患者さんは10人に1人であったという報告がある)。

 また、残念なことに約1割(10%)程度のBPDの患者さんは、自殺に至ってしまうという報告がある。
 ちなみに、社会復帰に関しては、他人のこころに敏感な人が多いので、心理職、福祉職、看護職に就く人が多いという報告がある。また優れた知性と芸術的な素質に恵まれていることも多く、創造的な分野で成功している人も多くいる。
 http://www.deborder.com/border.html

 BPDの多くは思春期に発症するものであり、16歳以上に診断がなされるものとしている。つまり、後期思春期ないし成人期に見られやすく、30歳代になると次第に改善が見られる。30代後期には安定すると言われる。 
 これはBPD病因が、発達時の混乱、自我同一性の拡散と関連があるからではないかと考えられる。
 それ以前にも兆候が見られるが、BPD思春期に発症し、20歳付近で何らかの問題が生じることの多い障害である。
 また、近年のアメリカの研究ではBPDの病因として、幼児期の外傷体験が有力なものとして注目されている。
 ZanariniはBPD患者の、6歳までの分離体験は46%、幼児虐待は60%、性的虐待は6%いると報告している。

 日本では町沢が68人のBPDを詳細に調べた結果、親子分離は16%、暴力虐待は3%、性的虐待は1.5%となっていて、アメリカほどの関連性はない

 日本の場合ははっきりと分かる外傷体験はないが、小刻みな外傷体験があるのではないかという憶測もある。家族による拒絶、過干渉が原因という見解が多い。 
 http://f17.aaa.livedoor.jp/~etsubu/bpd.html

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コメント

はじめまして
境界性人格障害の現実
というブログを書かせていただいております
興味があれば覗いてみてください
よろしくお願いいたします

失礼いたしました
http://kyoukaisei.kitaguni.tv/

投稿: 三田 | 2008.10.27 02:13

御礼が遅くなりましたが、コメントありがとうございます。

ブログ拝読、頑張ってくださいね。

投稿: k-shimizu | 2008.11.06 22:56

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