『邪魔』上・下
『最悪』を読み終えたあと、「奥田英朗作品をもっと読みたいッ!強い誘惑」に負けて、これまた買ったままになっていた『邪魔』上下巻、ひたすら読んでしまった・・・
奥田 英朗 (著)
講談社文庫 各¥660(税込)
『最悪』と大きな構成は似ている。
『最悪』では、町工場の社長・銀行OL・フリーターの三人。
『邪魔』では、刑事・パートの主婦・落ちこぼれ受験生の三人。
それなりにごく普通・平凡に暮らしている人々が、これまたよくありそうな周囲からのストレスを受けていき、そのストレスが徐々に、徐々に、雪玉が転がるように膨らんでいき、気がついたらとんでもないところに自分が立たされている・・・
それぞれの置かれている状況、心理状態を丁寧に描くことで、読み手をぐいぐい物語の中に引っ張りこんでいく。その筆力はスゴイ!
ワタシ的には、平凡な人物が大きく変化していくターニングポイントは何か? を探りながら読んだ。脚本を書く上で一番クッキリ・ハッキリさせておかなくちゃならないところを、この小説ではどう描いているのか・・・その意味ですごく勉強になる作品だった。
『邪魔』の解説(関川夏央氏)に奥田さんは長編作品ではプロットを立てないと書いてあった。
<プロットやテーマは二の次で、ディテールが命>
「ディテール」が作品の「リアリティ」を保証する
その意味で、奥田さんはテレビドラマ・小説の別なく山田太一作品が好きだという。
なるほど、そういわれればとてもよく分かる。
山田太一さんは、確かハッキリ言っていた。「日常の中にこそドラマがある」というようなことを。
どんな人間の中にもある弱さや脆さ・・・そこに外的な各種ストレスが加わることで、弱さ脆さがどんどん変貌していく。
なんとミステリアスな人間の心、そして予測できないサスペンスフルな展開・・・
それらを丁寧に的確に描いていく、それが山田作品と奥田作品の共通項だ。
私は『イン・ザ・プール』と『空中ブランコ』を読んで奥田ファンになったわけだけど、 『最悪』『邪魔』でますます、奥田ファンになってしまった!
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