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2006.01.08

ドラマではなく現実に

「年賀状見ました」と久々にAさんから明るい声で電話が掛かってきた。

ここ2年近くメールをはじめ音信が途絶えていたAさんからの突然の電話なので、私は嬉しくて「明けましておめでとうございます!」。が、次のAさんの言葉に、絶句してしまった。


「実は、あのあとすぐ、白血病で入院して。再入院中なんです」


“あのあと”というのは・・・
Aさんは、ある事件に関してご自分も被害者であり、いろいろと情報を提供してくれ、取材・調査にも協力してくれた。

2004年3月、私が単独でロサンジェルスに取材に行った時は、日本にいていろいろと心配してくれたAさん。
ところが私がロサンジェルス滞在中に、日本では某掲示板上で問題の事件を巡っていろいろあって・・・。結果的に、被害者だったAさんの傷口をさらに広げてしまうような事態になってしまった。

ロサンジェルスから帰国後、Aさんからもうあの事件を引きずりたくないというメールをいただいた。
私にはそういうAさんの気持ちもよく理解できた。Aさん一家にとってあの事件は思い出したくもない忌まわしい事件であり、その事件の話はタブーになっていた。だが、Aさんは、自分たち一家と同じような被害者が増えないよう、対策を探るために家族には伏せて取材・調査に協力してくれていたのだ。

その事件で散々傷ついたAさんとご家族をこれ以上傷つけないために・・・
それ以後、その事件のことで私からAさんに連絡を取るのは遠慮させていただくことにした。Aさんからも連絡が無くなり、過去の嫌な事件を忘れて前向きに生きてらっしゃるのだと思っていた。

だが実際には・・・
2004年4月、体調が悪く、体がだるくて病院に行ったところ「すぐに入院してください」と告げられ、白血病だと判明。以後、骨髄移植、感染症、寛解、再入院などを繰り返し、ずっとずっと白血病と闘っておられたのだという。

そんなAさんの話に、ショックのあまり一瞬言葉を無くしてしまったが、私はあるドラマの仕事の時に聞いたある言葉をAさんに伝えた。

「白血病で人が死ぬドラマだったら、お断りします」

白血病の治療で著名な医師に白血病患者の出てくるドラマの医事監修を頼んだ時、その医師が真っ先に言ったのがその言葉だ。
昔、白血病は不治の病と言われた。だが、今、白血病は治る病気である。
その医師の言葉にはいつまでも白血病を昔のイメージで取り上げるテレビドラマに対する抗議が含まれていた。(その時、私が書いたドラマではもちろん白血病では死なないッ)

免疫抑制剤のために感染症で再入院されているAさんだが、「退院したら、また連絡します!」と明るい声で電話を切った。

Aさん、頑張って!
春にはお会いしましょう!

思いきってAさんに年賀状を出してみて良かった・・・。

(今日の朝日 ↓)
060108-2 060108-1

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