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2008.11.25

金融詐欺事件:被害者の心理と犯人野放しの実態

■被害者の複雑な心理

 2006年11月28日、Bさんからの電話で「株式会社日光」の話を聞いて、私はすぐに金融詐欺だと思った。

 ネットをやっていれば、未公開株や新規上場株の詐欺事件の手口の情報がいろいろと入ってくる。

 Bさんも薄々、怪しい話だと感じたので東京在住の私に電話をしてきたのだろう。

 しかし、A氏はこの時点では不安が過りながらも、詐欺であることは認めようとしなかった。

 株式会社日光の登場人物は三人・花田宮下和田

 三人ともが投資を進めるにあたって具体的な銘柄を出してきた。

 株の知識がそれなりにあったA氏はついつい株の話で彼らと話が盛り上がった。
 最初は彼らの話に反発していたA氏だが、彼らは言葉巧みにA氏のプライドをくすぐり「他の人には言えない特別の投資情報をアナタだけにお伝えします。アナタのような人にぜひ買ってほしい」などと畳み掛けるように電話をしてきて、A氏の気持ちを取り込んでいった。

 なので、詐欺の可能性が99%だと周囲が言っても、A氏は「花田さんも宮下さんも和田さんも、いろいろと話したが、みんないい人たちだった」と詐欺の可能性をはねつけようとした。

 そんなA氏に、相手は詐欺グループだという現実を受け入れてもらうためには、まず会社の存在を確認しなければならない。
 そういうわけで、会社を探しに行ったのだが、やはり会社の実態はなく住所はレンタル私書箱だった。

 その事実が判明しても、A氏の心は揺れ動いていた。

 11月30日以降、消費者センターへの問い合わせや弁護士会への相談、そして12月5日に内容証明を郵送した。

 この段階では、A氏は「せめて元本さえ戻してくれたら、事を荒立てずに何もなかったことにできる」と思っていた。

 彼らは親切だった、彼らは本来悪い人たちじゃない、きっと元本だけは返してくれる……そう信じていた。

 しかし、返金約束期限の12月15日に返金がされてないことを知って、A氏は激しい抗議の電話を入れた。
 この日までは電話が通じていた。

 そして、12月17日、内容証明郵便が返送されて、電話も通じなくなっていた。

 犯人たちにも良心があるだろうと一縷の望みを持っていたA氏の期待も祈りもここですべて断ち切られ、A氏の怒りは頂点に達した。

 警察に被害届を出すことを決意、次の被害者を出さないためにもテレビの取材に応じることに気持ちが傾いていった。

 12月19日、Bさんに付き添われてA氏は最寄りの警察署に被害届を提出
 この時、調書作成のために長時間を要し、高齢のA氏は心身ともに疲れ果てたようだ。

 警察ですべてを話した安心感と疲れのためか、テレビの取材は断るという。

 対社会に向けて被害防止のために取材を受けては……と第三者として願う気持ちはある。

 しかし、年金をやり繰りしてコツコツ貯めた金で株をやっていたA氏。そのなけなしの金が騙し取られたと同時に、真面目に正直に生きてきたA氏の人間に対する信頼感が踏みにじられ、また、“騙されたバカな老人”と見られてしまうのではないかとプライドはズタズタにされ……
 激しいショックで憔悴しきったA氏の様子を聞くにつけ、テレビの取材を勧めることは出来なくなった。

 親戚のBさんはもちろん、他人である私でさえ、犯人たちに対してははらわたが煮えくり返るほどの怒りを感じる。

 しかし、誰よりも一番傷つき、後悔し、反省しているのはA氏であり、彼の傷口を広げるようなことはできない。

 以後、A氏が精神的に回復するまで、この事件についての話題は避けてきた。

 Bさんによれば、上記事件以後も株投資関連だけでなくさまざまな勧誘電話やパンフレットなどがA氏に送られてきているという。A氏の名前が記載された何らかの名簿が闇で売買され、いろんな詐欺グループが利用しているのではないかと思う。

 もう二度と騙されることはないと思うが、あれから二年経ち、気持ちを引き締めてもらうためにも「振り込め詐欺救済法に基づく公告」ホームページのことを報告したという次第。

■一網打尽のチャンスは何度もあったのに……

 ①11月×日    100万円振り込み
 ②11月××日   225万円振り込み

 二回目の振込が確認されたその日の内に、犯人グループは次の投資を勧めてきている。
 ①②とも、恐らく振り込んだ日にお金はすべて引き出されているだろう。

 しかし、犯人グループはA氏からもっとお金を騙し取るつもりらしいので、電話で連絡が取れるうちは彼らは株式会社『日光』として存在しているはず。

第一のチャンス:11月29日 
  株式会社『日光』の住所がレンタル私書箱であり、会社の実態がないと判明した時。

 その事実があったにもかかわらず、消費者センター弁護士会に相談に行くようにいい、弁護士会は銀行口座の凍結には手続き(弁護士に正式依頼や被害届提出など)が必要である。しかし、犯行グループはすでにお金を全額引き出している可能性のほうが大きい。なので、弁護士に依頼して手続きを進めても元本は返ってこず、弁護士費用だけがかかるという結果になるだろう、という。

 犯行グループはまだこちらの動きを察知しておらず、A氏からなんとか金を引き出そうと電話してきている。
 犯行グループが逃げ出さないうちに、A氏に一刻も早く被害届を出すように勧める。
 しかし、A氏は元本さえ返してもらえば、必要以上に事を荒立てたくないという気持ちが大きかったよう。

 
第二のチャンス:12月2日 
  警視庁へ電話。被害者でないと詳しい相談には乗ってもらえないだろうとは分かりつつ、とにかく電話してみた。
 株式会社『日光』の住所・電話番号など伝え、住所が虚偽の住所であること、さらに業務内容から証券取引法違反の疑いが濃いことを伝える。

 しかし、被害者本人が被害届を出さない限りは動けないという。
 被害届を出した地方の最寄り警察署→警視庁に捜査依頼、この形式を踏まないと疑わしいだけでは動けないと。

 警察の言うことも分かる。組織とはそういうものだろうとは思う。しかし、そんな手続き踏んでいる間に犯行グループは逃げてしまう……。

 
第三のチャンス:12月8日
  詐欺口座のある銀行へ通報。口座番号と口座名義人を伝える。

 ここもまた、警察からの依頼がなければ動くことは出来ないという。
 口座の金の出入りを見れば(多分、他にも被害者がいただろうし)、怪しい口座だということは一目瞭然だと思うのだが……。結局、銀行も何も出来ず。

 
第四のチャンス:12月5日~
  テレビ局の取材。

 詐欺グループと電話連絡が取れている限り、彼らはまだ解散・逃亡せずに詐欺行為を実行しているはず。
 なので、テレビの取材力で彼らのアジトを突き止めてもらいたい。今の時点で警察も銀行も動けないのなら、頼れるのはメディアの力だと思った。
 彼らもこの詐欺事件に積極的に関心を持ってくれた。しかし、肝心のA氏が……。

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 12月5日元本返還要求の内容証明を送り、その後12月15日まで犯行グループとは連絡が取れ、彼らはまだその役割を演じていた。

 しかし、12月8日に親戚の者としてBさんが犯行グループに電話を入れた(あくまでも、詐欺に気がつかない振りをして)あたりから、彼らは用心し始めもうA氏から金を搾り取る余地はないと判断し始めたよう。

 12月19日、被害届提出
 「振り込め詐欺救済法に基づく公告」ホームページによると、同日、該当口座が凍結されている。その時の残金は298円也。

 この事件の経過から思うに……

 ★詐欺だと気がついた時点で、すぐに被害届を出していれば詐欺グループは捕まっただろうか?

  今のシステムだと、被害届→銀行口座凍結だ。おそらく銀行口座の凍結が分かった時点で、彼らは蜘蛛の子を散らすように跡形もなく逃げ出しただろう。
  振り込まれた金は、振り込んだその日の内に引き出しているだろうし。

 ★なので、詐欺グループの存在が分かり、まだ彼らがターゲットに執着している第一、第二、第三のチャンスのうちに警察が動いてくれたら、彼らを一網打尽にするチャンスは十分あったのにとつくづく思う。

 振り込め詐欺に関しては、例え被害届が出ていなくても、詐欺の疑いが濃厚なケースに関しては内偵とかしてもらえないものだろうか……。

 今のままだと法律と現実の狭間で、一般国民は結局、泣き寝入りするしかないみたいだ。

 最大の防衛は、自己責任で引っかからないようにするしかないんだけど。

 それから、最後に気になったのは……

 「振り込め詐欺救済法に基づく公告」のことを一般の人は、どれほど知っているのだろうか?
 私はたまたまテレビを見ていてニュースでチラッと耳にしたので、インターネットで調べてそのホームページのことを知った。

 しかし、振り込め詐欺の被害者は高齢者が多く、インターネット環境にない人も多いはず。
 例え詐欺口座に残金が残っていて、少しでも騙し取られたお金が戻ってくるシステムがあったとしても、その存在を知らなければ、分配金の申請も出来ず、結局は泣き寝入りのままだ。

  ネット環境にあるものにとってはありがたい情報システムだけど、ネット環境にない高齢者の方々のことが気になってしまう。

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