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2009.03.01

「おくりびと」からのメッセージ

遅ればせながら、第81回米アカデミー賞 外国語映画賞『おくりびと』&短編アニメ映画賞『つみきのいえ』 W受賞、おめでとうございます!

『おくりびと』の脚本、小山薫堂氏は売れっ子の放送作家で、映画脚本はこの作品が初めてとのこと。


日本映画の昨年08年の興行収入は、洋画を上回り過去最高の1158億5900万円(前年比22.4%増。洋画興収は789億7700万円で、前年より23.9%減)
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY200901290316.html より


日本映画が元気になっているのは嬉しい!
さらにアカデミー賞のW受賞で、日本映画の存在感が世界に示せたことは素晴らしいと思います。


『おくりびと』がなぜアメリカのアカデミー賞選考委員たちに支持されたのか?
それについては、アメリカ在住の作家・冷泉 彰彦氏が彼のメルマガ記事の中で分かりやすい分析をしています。

(前略)

一つ象徴的なエピソードがあります。今週発表されたアカデミー賞候補作の中で、作品賞と外国語映画賞でそれぞれに有力になっている『ベンジャミン・バトン、数奇な人生』と『おくりびと』は驚くほど似通った世界を表現している作品なのです。

生と死の問題に真っ正面から相対していること、人の一生ということへの無限の愛おしさを表現しようとしていること、言葉の力の限界を悟りながら静謐の中に豊かな情感を描き込んでいること、そうした点でこの二作は対になる作品とすら言えます。

例えば、『おくりびと』の中で本木雅弘の演じた主人公が、人生の転機にあたって庄内平野の橋の上から河を見下ろす場面が何度かあります。

また『ベンジャミン・バトン』では、ブラッド・ピットが演ずる主役が大西洋の日の出を見に行くシーンが数回あります。

そのどちらも、ほとんどセリフのない静謐な時間を演出しているのですが、その時間のクオリティはほとんど等質なのです。(何故そこに行くかという理由も全く共通です)

文化の成熟ということで、日米は極めて近い場所に立っているということを物語っているエピソードです。

(以下略)
         from 911/USAレポート / 冷泉 彰彦
        第393回 「オバマ就任、そして日米」 2009-01-24 より

冷泉氏は日米のパートナーシップは成立するかというテーマの記事の中で、文化の成熟度においては日米は極めて近いということを示すために、『ベンジャミン・バトン、数奇な人生』と『おくりびと』を引用しているのですが、上記を読むと、『おくりびと』がアメリカの人々の感性にも十分受け入れられる作品であるということがよく分かります。


個人的には『おくりびと』受賞後の、本木雅弘さんのコメントに深く感動しました。
原作に出会ってから15年間、その作品の映画化を諦めなかった本木さん。

映画にしてもテレビにしても、作品にしたいと思う素材(原作や事実)との出会いは大切。
脚本家をしていると、多くの素材と出会い、好運にも作品として実現したものもあれば、企画が通らず作品化を諦めてしまう素材も数知れず。

そんな中、どんなに作品化が難しくても、どうしても諦めきれない素材がある。


実は、私には大事にしている二つの素材がある。
一つは6~7年前から、もう一つは10年近く前からどうしても「捨てられない素材」であり、昨年、両方とも作品化させるチャンスがあったんだけど、一つは最終の企画会議で上手くいかず、もう一つはシナリオ2稿まで書いて資金の問題などなどで頓挫してしまった。

それでも、今後もいろいろな方法でなんとか作品化したいと思っている。

それは、その素材の中に、私自身の生きてきた体験や人生に対する考え方と重なるものがあり、また、世相や時代が変わってもその素材の中に人にとって普遍的なメッセージがあると信じているから。

物書きとして、そこまでこだわれる素材と出会ったことは、本当に幸せなことだと思っている。


そんな私にとって、本木さんが原作と出会ってから15年目にして『おくりびと』を完成させたということに、映画人としての本木さんの素晴らしさ、そして「こだわれる素材」と出会ったことの幸せ、諦めないことの大切さなど、大事なことをたくさん教えられたような気がする。

私も、諦めずに頑張りますからっ!

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