久々の渋谷で
先日、渋谷にて久しぶりにプロデューサーのI氏にお会いした。
2年ほど前、I氏から企画打診の原作本が送られて来た時期と映画企画がGOになった時期が重なったため、事情を話してI氏のほうの仕事をお断りした。
そんな経緯があったため連絡が途絶えていたが、お互い諸々の状況が変わり久しぶりにお会いすることになった。
I氏はプロデューサーとして私がとても信頼している人の一人。
彼が送ってくる原作はどちらかというとシリアスな内容だったり、文学的要素の強い作品だったり。視聴率に媚びるのではなく、とにかく良い作品を作りたいという思いが伝わってくる。
そんなI氏と久々にお会いしてお互いの仕事のことなど情報交換。以前と変わらずドラマ作りを熱く語るI氏に、それまで胸につかえていた塊が溶けていくようで、ホッとする。
なぜなら……。
一度仕事をお断りしたことで私のほうに“申し訳ないことをした”という負い目があって、素直に自分のほうから連絡できなかったもので、再び一緒に仕事が出来るかもと思うと嬉しくて。
基本的に私は来た仕事を断ることはほとんどない(選べるほど仕事がワンサカ重なって……なんて状況もないし)
しかし、たまには来た仕事を断らなければならない時もある。
シナリオライターにとっては一番辛い状況だけど、現実は身は一つ、掛け持ち仕事ができないのがこの仕事だから。
かつて、その教訓のような出来事があった。
以前、先輩のライターと組んで連続ドラマの仕事をしていた時。
先輩ライターの書いてきたシナリオ第1稿を読んだプロデューサー氏がなぜかイライラして、いつにも増して手厳しく直しを入れてくる。
やがて、プロデューサー氏のイライラが爆発。その原因が分かった。
先輩ライターは他局のドラマ枠のドラマと同時進行でシナリオを書いていた。そのことを次期新番組情報でプロデューサー氏が知り、シナリオ第1稿の問題部分・不満部分すべてが“掛け持ち”仕事のせいの手抜きと感じたらしいのだ。
実は私は先輩ライターが掛け持ちで仕事をしていることは知っていた。少し前の打ち合わせの帰りに「両方とも断れなくて、他局の仕事もやっている」と聞いていたのだ。
その時、私にはその先輩がキラキラと眩しく見えた。断りきれないほど仕事が来るってステキっ! 私もそんな売れっ子になりたいっ! 目指せ先輩っ! などと心底思った。
それから間もなくしてのプロデューサー氏の爆発……。
先輩ライターもいずれは自分が同時期に放送の他局のドラマ(時間帯は違う)を書いていたことは知られると分かっていたと思う。
民放各局の新ドラマ情報は全局に回るし、そのことは先輩も知っていた。しかし、予想より早くプロデューサー氏は情報をキャッチしたのだ。
「コチラの仕事を、掛け持ちできるほど簡単だと思っているんだったら、もう結構!」
プロデューサー氏の怒りの言葉に、打ち合わせの雰囲気は険悪、最悪。
帰り道、落ち込んでいる先輩ライターに私はどう声を掛けていいものか分からなかった。
やがて、その先輩に代わって、別のシナリオライターが入ってきた。
以後、先輩がそのドラマ枠を書くことが出来たかどうかは……不明……。
もしかして、例え掛け持ち仕事をしたとしても、どの仕事も内容が素晴しければそんなことにはならなかったかもしれない。
しかし、よほど器用で、よほどパワーのある人でなければシナリオの掛け持ちは無理。
また、テレビの場合、企画が通って放映日が決まりシナリオ作りが始まると、同時にキャスティングを含めてすべての撮影準備も始まる。
早く言えば、ドラマ作りは数千万円~数億円のプロジェクト。
シナリオライターの仕事はそのプロジェクトの基礎・土台を作る最も重要な仕事であり、だからこそ手抜きは許されないわけで。
そんな先輩の実例を体験していたから、シナリオの仕事に入っている時は、締め切りが重なる他の仕事は受けることができず、2年前のI氏の企画の仕事も泣く泣くお断りせざるを得なかった。
今なら、企画のお仕事大歓迎。
優先順位の一位はシナリオの仕事。これだけは変わっていない。
そういうことが再確認できたひとときだった。
久々の渋谷なので渋谷らしい写真を撮ろうと思ったけど特に引っかかる風景はなし。
待ち合わせに使った東急プラザ9Fの「イタリアントマト」、5月31日閉店の貼り紙がこの日一番の衝撃だったかも。
「イタトマ」撤退?! 外食産業の厳しさを垣間見た。
←お散歩がまた滞ってしまっているラブの 不貞寝姿
この無防備な姿を見ていると、ほんと、心が和みます
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