『それでも生きる子供たちへ』
オムニバス映画を探していて、またまた観た作品だったけど、とても心に残る映画だった。
2002年、イタリアの有名な女優でありWFP(国連食糧計画)の飢餓撲滅大使でもあるマリア・グラッツィア・クチノッタが、映画監督のステファノ・ヴィネルッソとともに、この映画の製作を呼びかけ、ユニセフ(国連児童基金)とWFPが協力して、この映画が作られた。(この映画の収益の一部はWFPとユニセフに寄付されます)
搾取や戦争のために多くの子どもや青少年の人権が否定されている。
世界中で飢餓に苦しむ子どもは3億5千万人以上にのぼり、また学校へ通ったことがない子どもも1億人を超える。
“All the Invisible Children”(邦題:『それでも生きる子供たちへ』)は、このような子どもたちに捧げられた作品。
“All the Invisible Children”は直訳すると、『目に見えない子供たち』=『存在を忘れられた子どもたち』
まさに、存在を忘れられた子どもたちの生活がこの映画のテーマ。
どの作品の子供たちも、世界の無関心さの影に生きる、忘れられた存在。
この作品の中で、彼らは、世界中で貧困、権利の侵害などに苦しみながらも、たくましく希望を持って生きる同じ境遇の子どもたちを代弁している。
(参考:WFPホームページより)
第1話『タンザ』(ルワンダ)
監督・脚本:メディ・カレフ
主人公は、自慢のスニーカーを片時も離さぬ向学心旺盛な12歳の少年兵タンザ。
第2話『ブルー・ジプシー』(セルビア・モンテネグロ)
監督:エミール・クストリッツァ 脚本:ストリボール・クストリッツァ
主人公は、盗人一家の子供で少年院での出所をようやく迎えた15歳の少年マルヤン。
第3話『アメリカのイエスの子』(アメリカ)
監督:スパイク・リー 脚本:サンキ・リー &ジョイ・リー
主人公は、母子ルートでHIV感染した少女ブランカ。
第4話『ビルーとジョアン』(ブラジル)
監督・脚本:カティア・ルンド
主人公は、廃材回収業で日銭を稼ぐ幼い兄妹・ビルーとジョアン。
第5話『ジョナサン』(イギリス)
監督:リドリー・スコット&ジョーダン・スコット 脚本:ジョーダン・スコット
主人公は、岐路に立たされた戦場カメラマン。少年時代の自分と出会い・・・。
第6話『チロ』(イタリア)
監督・脚本:ステファノ・ヴィネルッソ 原案・脚本:ディエゴ・デ・シルヴァ
主人公は、家族への不信から窃盗を繰り返す10代のチンピラ少年・チロ。
第7話『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』(中国)
監督:ジョン・ウー 脚本:リー・チャン
主人公は、裕福な暮らしを送るソンソンと、身寄りのないシャオマオの二人の少女。
それぞれが大人の身勝手により辛く厳しい境遇に置かれ・・・。
゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。
どの作品も、テーマがひしひしと伝わってくる。
そんな中でも、ストーリーが分かりやすかったのが、第3話『アメリカのイエスの子』と第7話『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』。
『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』は「フェイス/オフ」などハードボイルド系のジョン・ウー監督が、「レッドクリフ」の前に撮ったヒューマン作品。
18分の作品だけど、セリフをできるだけ押さえ、内面や状況を映像で見せるシーンが多々ある。またフランス人形や鉛筆、花売りの花など小道具が非常にうまく使われていた。
何度観ても、クライマックス直前のシャオマオのひた向きに生きようとする強い意志を持った眼差しに涙があふれてしまう・・・・・。
日本でこのテーマの映画というと、『誰も知らない』(是枝裕和監督 柳楽優弥主演)が、ぴたりとこのオムニバスのテーマに当てはまるような気がする。
一見、物に囲まれ、物の溢れた国の中での、恐ろしいまでの他人への無関心。
その被害者は、子供たちだ・・・・・。
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