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2010.04.05

転載:夕食時のこわい予言『イグアノドンの卵』

■4■ セピア色の記憶 
     夕食時のこわい予言『イグアノドンの卵』   松田雄一

 大木豊さんといえば、演劇評論家として重きをなした方だが、先日ご家族から脚本・台本が寄贈された。段ボール箱で4つ。数百冊はあるだろう。
 昭和30・40年代には芸術祭テレビ部門の審査員でもあったので、寄贈脚本は芸術祭の年度別に整理されていた。
 多くはドラマの脚本だが、そこにとんでもないものが混じっていた。

 音楽バラエティー、「光子の窓」(日本テレビ)のスペシャル版『イグアノドンの卵』である。 
 これについては、小林信彦さんの名著『テレビの黄金時代』文藝春秋刊)の序章で語られ、筆者などは一読こわくなったおぼえがある。

 台本本体を見ていこう。ガリ版刷りでおよそ120ページ。経年変化でわら半紙は茶色くなっている。表紙は黒のラシャ紙。タイトル部分は、昭和丗五年第十五回芸術祭参加番組 花椿ショウ 光子の窓 第130回 イグアノドンの卵(第8稿)―決定稿、と銀文字のガリ版である。放送日は十月丗日(日)午後六時十五分より七時まで。

 当時の「光子の窓」は30分番組なので、15分枠大の特別編。日本初のカラーVTR番組だった。

 主なスタッフは・・・脚本は三木鮎郎とP・キノトール。音楽・廣瀬健次郎、美術・真木小太郎、振付・竹部薫、制作・秋元近史、東宝テレビ部、演出・井原高忠。
 表紙をめくるとメモが挿んであり、本番組に関してお問い合わせがございましたら、芸能局長阿木翁助宛ご連絡下さいますよう願い上げます、という趣旨の試写に備えてのタイプ打ちが。

 主な出演者は(登場順で)小島正雄、大平透、伊藤素道、三国一朗、草笛光子、南利明、徳川夢声、トニー谷、旗照夫、宇治かほる、西村晃、柳沢真一。バンドは原信夫とシャープス&フラッツ。

 『テレビの黄金時代』を援用しながら台本の中身を見ていこう。
 まずは進行役の小島正雄が現れ、「今回は冒険をいたします」と言ってスポンサーである王様に許可をもらう。ここからバラエティー作りのプロセスをショーとして見せる。骨になる部分は仮面劇で進行。視聴者・スタッフ・王様、みな仮面である。あとでわかる生々しいテーマを寓意として見せるためだ。

 ここで仮面を付けた西村晃が登場。盗賊のボスである彼は、おれがスポンサーになると言い、草笛光子をやとって「演芸ごった煮」という低俗番組を作り(これを番組内番組として見せる)、大ヒットさせる。

 大衆は<勉強よりテレビが面白い!><朝から晩までテレビを観ていよう!>という有様で、盗賊たちは彼らの家を盗んでいく。

 そしてボスを囲む大パーティーで、彼はヒトラーのような世界征服を企む独裁者であることを見せる。ボスの正体を知った光子は「戦争反対!」と叫ぶ。しかし大衆はテレビで洗脳・煽動され、光子には止められない。

 ボスは「われわれにはもう1つ武器がある」と叫び、核兵器のボタンを押す。そして次々世界の核のボタンが押され、人類は滅亡。核の火は盗賊団にもふりそそぎ、ボスも焼死。ひろがる焼跡には1台の焼けたテレビが転がっている。

 「これはあくまでお話ですが、テレビには気をつけてください。……さて、これは中生代に栄えたイグアノドンという怪物ですが、私たちはこのイグアノドンの卵を2つ持っております。1つは原子力、もう1つはテレビです」と視聴者に語りかける小島。

 登場人物全員、仮面を捨てて歌い踊る。<イグアノドンの卵、うっかり放っておけない><こわいケモノに変わる>・・・大急ぎで紹介するとこういう感じだ。

 よくテレビ番組になったと思う。8稿まで練ったのがスゴイ。問い合わせに芸能局長が答えるというのがまたスゴイ。
 日テレの社主は「テレビの父」「原発の父」正力松太郎だ。さまざまな事態を想定していたのだろう。
 芸術祭の結果は奨励賞。“カラーの効果に対して”という名目だった。

 唯一現存する『イグアノドンの卵』の映像は、横浜の放送ライブラリーで誰でも見られるという。行ってみますか?

                   (日本脚本アーカイブズ・メールマガジン4号より転載)



 4月6日からの「ザ・脚本-放送作家たちの80年」では、この「光子の窓」(日本テレビ)・スペシャル版『イグアノドンの卵』の脚本の一部をタッチパネルで読むことが出来ます。



※「日本脚本アーカイブズ・メールマガジン」では「太陽にほえろ!」など、寄贈された脚本・台本についてのエピソードなどが連載されています。
 このホームページの左上から登録(無料)できますので、ぜひ読んでください!

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