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2013.05.07

映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』の完結編『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』

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『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』
2009年 スウェーデン
監督:ダニエル・アルフレッドソン
製作:ソロン・スターモス
製作総指揮:ピーター・ネーデルマン
原作:スティーグ・ラーソン
    『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』
脚本:ヨナス・フリュクベリ
出演:ミカエル・ニクヴィスト、ノオミ・ラパス

【ストーリー】・・・ネタバレ含む・・・
 瀕死の状態で病院に運ばれたリスベットとザラは、一命を取りとめる。
 ザラと深い関係を持つ秘密組織・公安警察特別分析班の長老たちは、班の存在とその秘密活動が明るみに出ることを恐れ、ザラとリスベットの抹殺を計る。
 
 ザラは狂信者を装ったかつての特別分析班長エーヴェルト・グルベリに入院中のベッドの上で射殺された。同じ病院に入院中のリスベットは、ちょうど訪ねてきたミカエルの妹で弁護士のアニカの機転で難を逃れる。ザラを撃った後、リスベットの病室に向かったグルベリだったがアニカが内側からドアをブロックしたためリスベットの病室に入れず、末期の肝臓がんの痛みに襲われリスベットの病室の前で拳銃自殺する。

 リスベットは警察の捜査でダグとミアそしてピュルマン殺害の嫌疑は晴れたが、ザラへの殺人未遂罪で起訴されることは間違いない。
 治療とリハビリが終わったらリスベットは拘置所に移送され、裁判が始まる予定だ。
 最初は弁護人を拒絶していたリスベットだったが、アニカが弁護につくことになった。

 公安警察特別分析班では、自分達の秘密を守るために身を挺したグルベリの遺志を継いで、グルベリの後任班長だった長老フレドリック・クリントンが中心になって、リスベットに対して新たな作戦を立てていた。
 裁判でリスベットの異常性を主張し、再びリスベットを精神病院に閉じ込めてしまうという作戦だ。そのために、少女時代のリスベットを精神病院に閉じ込めた時の主治医・テレポリアンが再び登場することになった。

 テレポリアンは早速、精神鑑定と称してリスベットに面会を求める。
 しかし、リスベットの担当医ヨナソンは、回復状況からして面会は許可できないとして警察からも、さらにテレポリアンからもリスベットを守る。

 一方、ミカエルがリスベットの裁判支援策として打ち出したのが、雑誌『ミレニアム』でリスベット特集号を出すこと。
 担当医ヨナソンの協力を得てPDA(携帯情報端末)をリスベットに渡し、それで自伝を書くよう勧める。

 裁判に向けて公安警察特別分析班は様々な妨害工作を企てた。
 『ミレニアム』社に盗聴器を仕掛けたり、裁判で有力な証拠となるはずのビョルク文書のコピーをすべて奪ったり。
 また、リスベットの自伝を含む『ミレニアム』リスベット特集号の発行を阻止すべく、ミカエルの共同経営者で愛人でもあるエリカに再三脅迫メールを送りつけ、深夜、エリカの部屋を襲った。

 どんな脅迫にも屈したくないミカエルと、他の記者たちの身の安全を考え特集号の発行を止めようとするエリカの間に大きな溝ができた。

 さらに、ミカエルの部屋に忍び込み、麻薬と大金を隠したことが判明。
 リスベットのリサーチャーとしての能力を高く評価し、彼女を娘のように案ずるセキュリティ会社社長ドラガン・アルマンスキーや、リスベットのハッカー仲間で天才ハッカーでもある“疫病神”ことプレイグの協力を得てミカエルは妨害を乗り越え、裁判に有利な証拠を求め続けた。

 また、最強の味方も現れた。
 闇で活動していた特別分析班の存在を知った首相から特別分析班の全貌を明らかにするよう命じられた公安警察の責任者トーステン・エドクリントが、情報交換などの協力をミカエルに求めてきたのだ。

 裁判も間近かに迫った時、特別分析班はついに卑劣な方法でミカエルを襲おうとした。
 セルビア出身で指名手配中のならず者兄弟を使って、麻薬にまつわるギャングのトラブルを装いミカエルを殺そうとしたのだ。
 特別分析班を監視していた公安警察はそのことに気がつき間一髪でレストランで話し合っていたミカエルとエリカを救った。

 そしていよいよ、3日間の裁判が始まった。
 リスベットは戦闘スタイル・・・最強のパンクファッションで裁判に臨む。

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 リスベットへの人権侵害を告発する弁護人アニカ、傍聴席ではミカエルをはじめ、アルマンスキーや疫病神がリスベットを見守った。

 しかし、特別分析班の戦略にハメられた検事リカルド・エクストレムは弱者である女性の人権擁護と国家機密が関わっていることを盾に非公開裁判を主張。
 結果、裁判は非公開で行われることになった。

 1日目、検察側の取調べでは黙秘を貫いてきたリスベットが初めて口を開いた。
 検事エクストレムの質問に、冷静かつ論理的に答えていくリスベット。そしてザラ殺害に関してはキッパリと正当防衛を主張した。

 2日目、3日目はいよいよ証人としてリスベットの少女時代の主治医ペーテル・テレボリアンが出廷する。
 特別分析班の戦略としてリスベットを妄想型統合失調症として再び精神病院に幽閉する、そのためにテレボリアンが精神鑑定書を提出することになっていた。

 アニカは頭を抱えた。かつて、リスベットの精神鑑定が特別分析班によって仕組まれた陰謀であり、テレボリアンが偽の精神鑑定を作成したことを証明するはずのビョルク文書が盗まれてしまった今、テレボリアンの不正を証明するための新たな証拠を得る事ができないでいたのだ。

 そしていよいよ、法廷でのリスベットとテレボリアンの対決が始まった。
 果たして、裁判の行方は・・・
 『ミレニアム』リスベット特集号は発行できるのか・・・
 秘密組織・特別分析班の行く末は・・・
 死んだ父・ザラチェンコが乗り移ったようにリスベットの命を狙い続ける異母兄ニーダーマンとの決着は・・・
 リスベットとミカエルの関係は・・・



【コメント】
『ミレニアム2』に続いて見たけど130分+148分 計278分。ほぼ4時間半があっという間、というくらい面白かった。

最大の魅力は、なんといってもリスベット・サランデルという主人公のキャラクター。
原作ではリスベットは150cm、40キロ。検事のエクストレムが初めてリスベットを見た時に「あんな小さな女だとは」と驚いたくらい小柄で華奢。

小さな体の全身をタトゥーとピアスで武装し、誰にも媚びず、必要以上の言葉も発しない。そんな外見に関わらず彼女は誰よりも明晰な頭脳と映像記憶能力を持ち、そして天才的なハッカーというずば抜けた能力を持っている。

ニーダーマンとの対決で、瞬時に彼の弱点を突く作戦を思いつく(鋲打ち機を使ったり)頭脳と冷静さは、つい最近やっと見た『ボーン・アイデンティティー』ジェイソン・ボーンの女版かと思った。
※『ボーン・アイデンティティー』もすごく面白くてシリーズ3本まとめて借りなかったことをちょっと後悔。シリーズ2、3も後日、必ず見る予定。

さらに、彼女にそういう生き方をさせた過去の出来事が少しづつ鮮明になるにつれて、彼女の感情に同化していき、応援せずにはいられないんだよね。

もう一人の主人公、ミカエルはエリカという愛人がいるものの、映画ではストイックで、不屈のジャーナリスト魂を持った大人の男として魅力がある。

何よりぐんぐん響いてくるのは、シリーズ全作品を貫くテーマ。
第1作は邦題『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』となっているけど、原題は『ミレニアム 女を憎む男たち』
全作を通して女性に対する蔑視および暴力がテーマとなっており女を憎む男たちが登場する。

著者スティーグ・ラーソンは15歳の頃、一人の女性が輪姦されているところを目撃したが、何もできずに逃げ去ってしまった。翌日、被害者の女性に許しを請うが拒絶された。その時以降、自らの臆病さに対する罪悪感と女性暴力に対する怒りがつきまとい、これらの作品に反映されていると思われる。

第1作では男たちの家庭内暴力、性虐待、反ユダヤ主義による女たちへの猟奇殺人、2,3作目では後見人という立場を悪用しリスベットを性の奴隷にしようとした弁護士ビュルマン、少女時代のリスベットへ偽の診断をくだし虐待を続けた精神科医テレボリアン、リスベットやミミを容赦なく襲う金髪の巨人ニーダーマン、人身売買や少女売春組織など女を憎む男たちがこれでもかと登場する。

それに対して、リスベットはもちろん、『ミレニアム』編集長エリカ、ミカエルの妹で弁護士のアニカ、公安警察のモニカなどが勇猛果敢にそんな男たちに立ち向かう。

過去のトラウマから誰も信じず、自分の規律に従い、攻撃には容赦なく応えてきたリスベットだが、特に第3作で彼女を守るために動いてくれた人々の存在を身にしみて感じ、少しでも心の傷が癒されたであろう事を信じたい。

オールラストでのリスベットとミカエルの短いが未来を感じさせるセリフに、リスベットの変化を垣間見た。


ところで2作目と3作目を続けて見て、なんだかやけにテレビドラマ的な繋ぎ方だなぁと感じた。
やはりというか、2作目、3作目はテレビドラマ用に作られたものを、第1作目があまりに好評なため映画用に編集し直して、テレビドラマより先に公開したのだそう。

プロデューサーのソロン・スターモスの来日インタビューによると、スウェーデンでは映画とテレビの立場が逆。日本ではテレビドラマが当たったらそれを映画化するが、スウェーデンでは最初からテレビシリーズを前提に映画が作られる。つまり、映画が広告塔になって、評判がよければテレビシリーズ化されるらしい。

「スカンジナビアでは、テレビ局が映画製作に全面的に関わっているので、テレビなしでは映画は作れない」とソロン・スターモス氏。

テレビが先か映画が先か、順番は逆だとしてもテレビ局なしでは映画は作れない・・・日本もそうなりつつあるのかも。



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