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2013.09.29

映画『さあ帰ろう、ペダルをこいで』(2008年ブルガリア)二人乗り自転車で亡命先のドイツからブルガリアの故郷に向かう、祖父と孫の心温まるロードムービー。

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自転車関連の記事が続いているので、最近観た自転車の映画を1本。


『さあ帰ろう、ペダルをこいで』
SVETAT E GOLYAM I SPASENIE DEBNE OTVSYAKAD

2008年 ブルガリア=ドイツ=ハンガリー=スロベニア=セルビア

監督:ステファン・コマンダレフ 
原作:イリヤ・トロヤノフ 
脚本:ステファン・コマンダレフ、デュシャン・ミリチ、ユーリ・ダッチェフ、イリヤ・トロヤノフ 
出演:ミキ・マノイロヴィッチ、カルロ・リューベック、フリスト・ムタフチェフ、アナ・パパドプル

【あらすじ】
1983年、共産党政権下のブルガリアからドイツへ亡命したアレックス一家。
25年振りにブルガリアへと帰郷する途中、一家は交通事故に遭い両親は死亡、一人息子のアレックス(カルロ・リューベック)は記憶喪失になってしまう。

孫・アレックスを心配してブルガリアからやってきた祖父バイ・ダン(ミキ・マノイロヴィッチ)の誘いで、アレックスはタンデム(二人乗り自転車)でヨーロッパ横断の旅へ出る。目指すは故郷ブルガリア!

幼い頃手ほどきを受けたバックギャモン(西洋すごろく)をふたたび祖父に教わりながら故郷へ向かう道中、アレックスは自分自身の人生をもう一度辿り始める・・・。

東西冷戦の歴史に振り回され別々に暮らすことを余儀なくされた祖父と孫が、自転車旅行やボードゲーム「バックギャモン」を通じて絆を修復していくヒューマン・ドラマ。

【感想】
帰郷途中の交通事故から映画は始まる。そして、現在と過去を往復しながらドラマは進行していくが、その過程でこの一家の歴史が見えてくる。

ブルガリアといえば先ず思い浮かぶのがヨーグルト、そしてバラ。
かつてブルガリアが共産圏の一国で、秘密警察(市民警察か)などもあり厳しく情報統制、思想統制されていたとは、この映画を見るまで知らなかった。

この映画の主役、祖父バイ・ダンは、若い頃、自転車競技で優勝して東ドイツに留学。ハンガリー動乱で学生運動に身を投じて、スターリン像を爆破した罪でブルガリアに強制送還されてしまい、15年も刑に服していたことなどが短いセリフの中で明らかにされる。

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バイ・ダンはバックギャモンの名手でもあり、アレックスの7才の誕生日には手作りのバックギャモンのボードをプレゼント。ゲーム仲間の前でアレックスにバックギャモンを教え、アレックスに約束させる。


「バックギャモンは名誉ある戦い、決してお金を賭けてはいけない」と。

娘婿ヴァスコの勤める繊維会社の部長は政府の秘密警察の一員であり、兼ねてからバイ・ダンの動きに監視の目を光らせていた。そしてある日、部長はヴァスコの弱みを突いて、バイ・ダン監視のスパイになるよう強要する。

バックギャモンをしながらヴァスコは義父のバイ・ダンに言う。
 「もう、手詰まりです」。
すべてを察したバイ・ダンは答える。
 「道は必ず開ける。強行突破だ、最善を信じて」と。

バイ・ダンの一言に背中を押され、スパイになるよりは亡命の道を選ぶヴァスコ。
妻と7才の息子・アレックスとともに、ようやくイタリアの難民キャンプに辿り着くが、そこでは悲惨な生活が待っていた。

妻とアレックスを守り、そんな難民生活から抜け出すために、ヴァスコはある決心をする・・・。

それから25年後、亡命先のドイツからブルガリアに初めて帰郷する途中で事故が起きてしまった。故郷を逃れ、歴史に翻弄されたアレックスの両親が気の毒でならない。

一方、政府に目を付けられながらも、渋とく故郷に根を張るバイ・ダンの存在感がすばらしい。
娘と娘婿の死に内心、慟哭しながらも、たった一人の孫を迎えにドイツに向かう。
そして、記憶障害となった孫のためにタンデム自転車でブルガリアを目指す。
ゆっくりと旅することが、少しでも記憶の回復の助けになるかもしれないと・・・。


この映画の中で象徴的に使われるバックギャモンとタンデム自転車。

バックギャモン
世界で最も遊戯人口が多い(3億人)といわれ、日本でも飛鳥時代に大陸から伝わり、「盤双六」として古来から親しまれてきたボードゲーム。

映画では、「人生」を象徴するものとして、ゲームシーンが再三登場。
バイ・ダンはいう。

「人生はサイコロと同じ。どんな目が出るか、それは時の運と、自分の才覚次第だ」

人生とは、天から与えられる「運」もありながら、あくまでサイコロを振るのは自分であり、人生を切り拓いていくのもまた自分自身なのだと。

ラストの感動的なシーンにもこのバックギャモンが使われている。

タンデム自転車
自らの力でこぎ出さなければ前に進まないし、二人のこぎ手の息が合わなければ前に進めない。そして素晴らしいのは寄り道をして新たな発見もできること。

その他にも、子供の頃にアレックスが大事にしていた赤いミニカーが、現代のアレックスにとっても非常に大切なアイテムとして効果的に使われている。

厳しい社会状況を背景にしながらも、端々に温かいユーモアがいっぱいのジワリと感動がこみ上げてくる素敵な作品だった。

バックギャモンといえば、私も盤まで買ってハマっていた時期があった。
対戦相手がいない時はPCゲームのバックギャモンを。ある時は無料のオンラインでバックギャモンができることを知って時々はオンラインバックギャモンを楽しんでいた。このオンラインバックギャモンは世界中の人がアクセスできて、ヨーロッパやアジアの知らない人たちとバックギャモンを楽しんだりと。サイコロを振って駒を進めるゲームなので言葉は不要だし。

日本ではマイナーなイメージがあるけど、ヨーロッパではメジャーなゲームなんだとこの映画で初めて知った。
さらに、この映画のように、人生を語れるほど奥の深いゲームであることも知らなかったなぁ。

   

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