韓国ドラマ『白い嘘』全159話 視聴完了! ところで、主人公は誰だったの?!
『白い嘘』 White Lie
韓国放送日:2008年12月1日~2009年
出演者:シン・ウンギョン、キム・ヘスク、キム・テヒョン、キム・ユソク、イム・ジウン
【あらすじ】
【特 徴】
●「人魚姫」「妻の誘惑」に続く、刺激的でドロドロテイスト満載ドラマ
過去に傷を抱えた女。心を閉ざした息子に過剰な愛情を注ぐ母。地位と名声のために愛する女を捨てた男。
シン会長の息子ヒョンウがウニョンに好意を抱いたことから、3人のそれぞれの思惑が縺れ始める。カネに物を言わせ、あらゆる手段で息子の為にウニョンを嫁に迎えようとする偏った母親の愛情が、次第に人々を巻き込み刺激的で壮絶な愛憎劇を引き起こす!
●人気の秘密がここにある! 刺激的な愛憎劇×ヒューマンドラマ!
息子のことになると我を失い、それ以外には血も涙もない冷徹な悪母役を実力派女優キム・ヘスクが演じ、息子を守りたい母の愛を圧倒的な演技で表現する。
また、幼い頃のトラウマで心を閉ざした青年ヒョンウが、愛する女性の力を借り、母の元を離れ一人前の男性へと成長していく姿をキム・テヒョンが好演。
視聴者を引きつける2人の名演技から目が離せない!
【感 想】 (※注意:ネタバレあり)
Gyao! にて2013年10月16日~2014年3月23日無料配信(視聴は3月29日まで)
5ヶ月間、毎日毎日ひたすら見続けた159話。
その結果・・・・えっ、えっ、しゅ、主人公は誰だったのぉ---

と叫ばずにはいられないほど、ラスト10話位から主人公が摩り替わっていて、騙されたような、不可解なラストを迎えた作品でした。
■主人公は誰?
あらすじを読む限り、主人公はウニョン(シン・ウンギョン)。
ドラマの流れもウニョンの結婚を巡って過去の恋愛問題や人間関係が二重三重にもつれにもつれる。そんな複雑な愛憎劇の渦中にあって、唯一、打算のない無私の愛でウニョンを包むヒョンウ(障害者のように描かれている)。ほとんどの視聴者は主人公ウニョンがヒョンウの愛を受け入れて、幸せになるよう祈りながら、このドラマを見ていただろう。
ところが・・・・このウニョン、木の葉のように周りに翻弄されてばかりで、あっちにもこっちにもすぐ「すみません」と謝ってしまうという、今時珍しい自己主張の出来ない女。
主人公なんだから、イザって時に戦えよ!(能動的に動けよ!)・・・っと思わずハッパ掛けたくなってしまうキャラ。
Gyao!のレビューを読んでいて分かってきたのは、ほとんどの視聴者が受身の主人公ウニョンに共感できずに、ウニョン以外のドラマの要素に面白さを感じて見続けていたらしいということ。
まさに私も、シン会長役のキム・ヘスクさん、ヒョンウ役のキム・テヒョンさん、『がんばれ!クムスン』で叔父と甥役だったジョンウ役のキム・ユソクさんとイ・ウンスちゃんを見るのが楽しみで見続けた。
シン会長の策略に翻弄されるウニョンの父や母、妹夫婦の描き方はいかにもステレオタイプで、後半は実家のシーンはほとんど早送りで見てしまった・・・(ストーリーにほとんど影響ないし・・・)
そして気がつけば、最終話。主人公であったはずのウニョンの出演シーンは2,3シーンのみ。主人公は明らかにシン会長とヒョンウに取って代わっていた。
150話に入った辺りから、アレレ、主人公が主人公としての働きをしていない?!
エエエッ、シン会長とヒョンウ母子の話にシフトチェンジしている?!
・・・・・と気がついたけど、そのままラストまで母子モノで突っ走ったよう。
韓国ドラマの特徴として、
・視聴率によって回数が変動する(視聴率良い場合は20話くらい増える?!)
・視聴者の反応・反響によって、内容が変化する
などがいわれている。
シン会長役のキム・ヘスクさんは素晴らしかった。主人公ウニョンに対して明らかにアンタゴニストであり、同時に悪のメンターでもあり、母性の中に潜むモンスター性を動と静のメリハリあるど迫力の演技で演じていた。
また、ヒョンウ役のキム・テヒョンさんの役作りも凄かった。幼い頃の母との関係で深いトラウマを背負い、自分の中に閉じこもってしまった青年。彼がウニョンと出会うことで少しづつ母親の呪縛から逃れ、コミュ障から自分を取り戻し、自立していく様をとてもリアルに演じていた。
キム・テヒョンさんはあまりに役作りにのめりこんで、実生活でうつ症状を発症してしまうほどだったらしい。
物語のはじめ、貧しい庶民の娘・ウニョンを捨てて財閥系の娘と政略結婚したジョンウ役のキム・ユソクさんは、韓国の大学の演劇映画科を卒業後、ロシア シェープキン国立演劇大学に留学、編入して演技実習・理論修士学位を取得。韓国で演技指導者としても活躍している実力派。
そんな、実力派の役者さんたちに囲まれて、ウニョン役のシン・ウンギョンは演技も存在感も霞んでしまった? その結果、主役交代となってしまったのだろうか?
そんな疑問を抱きながら、メイン人物のキャラクターアークを見てみると・・・
第1話から159話までで一番大きく変化したのは?
①ヒョンウ:コミュ障・発達障害様の閉じ籠りから脱して、画家として才能を開花、自立する(ウニョンはそのきっかけを作る)
②シン会長:全体を通してヒョンウ命であることに変化なし。ラスト2話で激変。金も地位も、命も捨てる(ヒョンウの危篤がきっかけ)
③ジョンウ:愛人の子供として生まれ、本妻であるシン会長に逆らえない状況から始まり、やがてシン会長に反撃を開始。結局、地位、財産失い、残ったのは妻・ナギョンだけ(ウニョンの存在きっかけ)
④ナギョン:政略結婚でジョンウと結婚。愛のない仮面夫婦→妻の立場を死守→夫への愛に気がつく→夫を支える妻(ウニョンの存在がきっかけ)
⑤シヌ:母・シン会長に反抗的で批判的→客観的立場から母と兄・ヒョンウ、そして兄嫁ウニョンなど家族を見守る
※ウニョン:①~⑤の変化のきっかけになり、翻弄されまくりだが、彼女自身の人間的変化とか成長は曖昧・・・・・?
ドラマは主人公の変化と成長を描くもの・・・キャラクターアークの変化の大きさからしたら主役はヒョンウとシン会長の母子。
第1話のトップシーンはシン会長から始まり(ジョンウとナギョンの結婚式)、最終話のラストシーンはヒョンウとシン会長。
実は最初からこのドラマは母性の中に潜む狂気(モンスター性)を描くのが本当のテーマであり、一見主人公に見えるウニョンは視聴率を稼ぐためにマクチャン・ドラマ(無理矢理のあざといドラマ)部分を展開させるための見せかけの主人公だったのかもしれない。
冒頭、主人公と思わせておいて、途中から主役が交代して観客をあっといわせる・・・そんなふうに故意に観客をミスリードするテクニックを『リバーサル(reversal)』、あるいは『赤いニシン(red herring)』という。
※『赤いニシン』:貴族のキツネ狩りに反対している人が、キツネのいる方向とは逆に赤いニシンをぶら下げて猟犬の嗅覚を攪乱したというところから来ているらしい。
このテクニックで有名なのはヒッチコックの『サイコ』。
主人公は恋人のために金を持ち逃げしようとしたマリオンだと思っていると、中盤でマリオンは殺されてしまう。本当の主人公は彼女ではなく・・・母の亡霊に支配された息子・・・。
『白い嘘』が最初から『赤いニシン』のテクニックを狙った構成だったのか否かは不明だが、普遍的なテーマである母性を追求した優れたドラマであると同時に、マクチャン部分の呆れ果てるような愚劣な展開・・・優と劣を併せ持った不可思議なドラマだった。
それから、“劣”の部分で、159話も使って描いたドラマとしては、あまりにも積み残し(ペイオフされてない)エピソードが多すぎて、なんでこんなにアンバランスな結末になってしまったのか・・・理解不能・・・。
【以下はGyao!レビューより:積み残された謎】
○シン会長はなぜ死んだの? 霊界と取引?
○ヒョンウの障害は治ったの?
○ウニョンとヒョンウは結婚するの?
※韓国の倫理観・結婚観では一人の女性が、別々の時期だとしても兄弟のそれぞれと恋愛することはあり得ないほど許されないことだそう。
○ジョンウ母は今どこに? 生活費はどうなってる?
○デパートは誰が経営してる?
○シン会長からもらったウニョン父母のマンションはどうなった?
○ウニョン父母がシン会長からもらったスパは結局、誰に?
○ウニョン父の病気は治ったの?
○ウニョン妹夫婦の子供「カミナリ」は生まれたの?
○シヌとミンジェはどうなった?
○アン秘書は再就職できたの?
※『なぜかハマった韓国ドラマ!』は更新が停まったままですが、時間が出来たらまとめてUPするつもり・・・です。
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