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2014.04.13

ジョルジュ・メリエス『月世界旅行』(1902):シナリオ採録してみた!

  


世界最初のSF映画といわれる『月世界旅行』(1902年)


この時代にはまだ今のような形式のシナリオ(脚本)というものはなく、メリエスはストーリーの流れと撮影のアイディアをしっかりと紙に書き留めて、カメラマンや役者に配り、撮影を行ったそう。

【スタッフ】
製作・監督・脚本:ジョルジュ・メリエス
原案:ジュール・ヴェルヌ「月世界へ行く」(1865)
    H・G・ウェルズ「月世界最初の人間」(1901)
撮影:ミショー、リューシャン・テンギィ
美術:クローデル
衣装:ジャンヌ・ダルシー

【登場人物】
バルバンヒューイ会長(ジョルジュ・メリエス)
月の女神(ジャンヌ・ダルシー)
その他(ヴィクター・アンドレ、、アンリ・デラヌー、ブリュネ、デピエール、ファージョー、クルム)

【あらすじ】
天文学会の議場で、会長(ジョルジュ・メリエス)が月世界探検旅行の提案をする。天文学者たちは賛否両論、喧喧諤諤の議論が沸き起こる。その結果、会長を隊長として5名の天文学者が隊員として選ばれ月世界旅行に行くことが決定。
一行は砲弾の形をしたロケットに乗り込むと、大砲によって宇宙へと飛び出した。     
月は大きな顔になっていて、砲弾船は目のあたりに不時着。                
一行が疲れ果てて眠っていると月の女神(ジャンヌ・ダルシー)が現れ、侵入者を懲らしめるために雪を降らせる。
寒さに震えて探検隊員達が地下の洞窟に入っていくと、一面に不思議な巨大キノコが生えている。  
会長が傘を地面に突き刺すとそれがキノコとなってぐんぐん伸びていく。
やがて、角を生やし 手が巨大な蟹の鋏のような月世界人(月人)が現れる。
彼らは傘で叩くだけで簡単に煙となって消えてしまうほど弱いのだが、あまりの数に探検隊一行は捕らえられ、月の王の前に連れてこられる。

しかし、会長は隙を見て王をやっつけ、皆で逃げ出す。
崖の淵に繋がれた砲弾船を見つけ、隊員たちは乗り込んだ。その隊員たちを守るために一人で月人たちと戦う会長。
そんな会長の機転で砲弾船は再び地球へと戻り、熱狂する市民たちの前に凱旋するのだった・・・。


【シナリオ採録】


 N は英語ナレーションバージョンの日本語翻訳字幕


1 天文学会・議場
     大勢の天文学者が集まっている。
     女性たちが天体望遠鏡を持ってきて天文学者たちに渡す。
N 「ホールに集まるのは大勢の天文学者たちと、学会の偉い人たち」
N 「着席すると、うやうやしく運ばれてくる天体望遠鏡」
     会長がやって来て、一同着席。
     会議が始まる。
     黒板を使って月世界探検旅行の説明をする会長。
N 「会長が月世界旅行の計画を提案をする。賛成多数だが、一名が強固に反対」
     議論が沸騰し、荒れる議場。
     会長はたまらずデスクの上の書類を投げつける。
N 「議論は紛糾し、会長が物を投げつける」
N 「何はともあれ、実施が決定」
     会長が5名の科学者を選んでいく。
     探検用の服が運ばれてくる。
     会長はじめ探検隊のメンバーたち、早速、探検用の服に着替える。
N 「同行者として、5人の学者が選ばれ、早速準備に。行くのは会長のバルバン
   ヒューイ以下、ノストラダムス、アルコフリバス、オメガ、ミクロメガス、パラファラ
   ガムスの6人」
     着替えた一同、それぞれ傘を手に意気揚々と議場を出て行く。

2 巨大工房・中
     砲弾型宇宙船が造られている。
     大勢の職人たちが働いている。
N 「ここは工房の中、大勢の職人たちがそれぞれの仕事をして・・・」
     やって来る探検隊のメンバーたち。
     製造途中の砲弾船の中に入って乗り心地を確かめたりと動き回る。
     と、メンバー同士がぶつかり、一人が桶にはまり込む。
N 「ミクロメガスが桶にはまり込む」
     職人に助けられるミクロメガス。
N 「職人の話によると屋根の上に行けば、大砲の鋳造が見物できるらしい」
     探検隊一行、階段を登っていく。
N 「一行はハシゴをのぼって・・・」

3 巨大工房・屋上A
     屋上に昇ってくる探検隊一行
     鋳造所の全景が見える。
     溶鉱炉では巨大な大砲が鋳造されている。
N 「屋根の上にたどり着く。遠くの煙突から立ち上る大量の煙」
     溶けた鉄が巨大大砲の鋳型の中に流し込まれる。
     蒸気と炎がひときわ大きく立ち上る。
N 「旗を合図に、溶けた鉄がそれぞれの炉へ一斉に流し込まれる。熱い蒸気と炎!
   一行はこの光景に大興奮する」

4 屋上・B
     完成した巨大大砲。
     階段を登って、会長を筆頭に探検隊一行が屋上に現れる。
     見送りの人々に挨拶をして、砲弾船に乗り込む探検隊一行。
N 「街の屋根の上で、おごそかに準備が進み、待ちかまえる大砲」
N 「学者たちは、拍手で迎えられ、船に乗り込む」
     全員が乗り終わると、砲弾船の扉が閉められ、ハシゴが外される。
N 「ハシゴが外され・・・」
     10人の女性たちが砲弾船を押して、巨大大砲の中に装填する。
N 「大勢で砲弾船を筒のなかへ押し込む」

5 発射台
     砲弾船が装填された巨大大砲。大砲の先端は月に向けられている
N「装填完了 準備よし。人々は船の発射を、今か今かと期待して待つ」
     見送り隊の女性たちが並び、ラッパを吹いてファンファーレが響き渡る。
     発射の合図が振り下ろされ、同時に大砲に点火される。
     大砲の先端から白い煙が立ち上る。
N「発射の合図で火がつけられ、弾は宇宙へ飛び出す」
     興奮して見送る大勢の人々。

6 宇宙空間A
     月が少しづつ近づいている。
N 「どんどん(地球から)遠くへ・・・」
     さらに月に近づいくと、月の顔がハッキリと見えてくる。
N 「月が見えて・・・大きくなっていく」

7 月の顔
     月の顔の片目に砲弾船が突き刺さる。
N 「そして月の瞳にキスをする」

8 月面(月世界)A
     月面に着陸した砲弾船から会長を先頭に探検隊メンバーたちが出てくる。
N 「船は月面に激突」
     月面の光景に驚く探検隊一行。
     (砲弾船は画面から消える)
N 「一行は初めての月の景色に目を奪われる」
     奥のほうに地球が昇ってくる。
     地球を見守る探検隊メンバーたち。
N 「地平線から地球が徐々に上ってきて、不思議な光で月を照らす」
     月面を見渡す一行。
N 「辺りを見ても、穴ぽこだらけだ」
     と、突然、火山が噴火して、その爆風で倒れる探検隊メンバーたち。
N 「いきなり爆発が起り、一行はよろめき倒れる」
     やっと起き上がるが、皆、疲れてもうへとへと。
N 「過酷な旅に、もうへとへとなのだ」
     会長が毛布を配り、とにかく横になって寝る一行。
N 「その場で仮眠を取る」
     背景に星が流れる。

9 月面空
     一行が眠っている背後の空に、七つの星が現れる。
N 「いきなり現れる、大きな北斗七星」
     そして、七つの星の中央に女性の顔が現れる。
N 「それぞれの顔は女性で、月への侵入者にご立腹。一行に、隕石の降り注ぐ、
   恐ろしい夢を見せる」
     ×  ×  ×
     背景が変り、左に星を掲げた二人の女性、真ん中に三日月に腰掛けた
     月の女神。右に土星が現れる。
N 「そして、次に現れたのは、三日月の女神。土星の神様に、星を掲げた双子の
   少女」
     月の女神が雪を降らせ、消える。
     ×  ×  ×
     雪が降り注ぐ中、目を覚まして起き上がる探検隊一同。
N 「地球人を懲らしめようと、女神は辺りに雪を降らし、月面は銀世界。寒さが
   厳しくなる」
     窪みの中へ入っていく一行(それぞれ傘を手に持っている)
N 「目を覚ました一行は、凍えそうなので何も考えずにくぼみのなかへ向かい、
   吹雪の中、ひとりづつ、姿を消してゆく・・・」  

10 月の地底・巨大キノコの洞窟
     探検隊一行が迷い込んでくる
N 「穴の中は、不思議な世界。巨大キノコがいっぱい」
     会長が丸木の橋を渡って、傘を差してキノコの大きさと比べてみる。
     と、傘がキノコに変身。
N 「傘を差して、大きさ較べ。すると根が生え、傘もキノコに変化。そして、どんどん
   伸びていく」
     その時、キノコの陰から何かが飛び出してくる 
     頭に角が生え、手は蟹の爪のよう。
N 「キノコの裏から突然、妙なものが登場。化け物だろうか。いや、月面に住む
   月人たちだ。襲い来る月人たちに立ち向かう一行」
     会長が、傘を手に月人に向かっていく。
     傘で叩くと、月人は煙とともに消える。
     二人目が現れるが、同じように傘で撃退。
N 「傘で叩くと、月人は粉々に砕け散った。二人目も撃破」
     ところが月人の大群が現れて、襲われる一行。
N 「すると大群が襲来。一行は迫り来る月人から逃げようとしたものの・・・」

11 月の王宮・中
     月人の護衛兵たちや星の女たちできらびやかな王宮
     王座に座る月の王。
     捕らえられた探検隊一行が連れてこられる
N 「数に圧倒されて捕縛。月人の王宮へ連行された」
N 「星々にかしずかれ、月の王は鎮座まします」  
     月の王が立ち上がり、捕らえられた一同に向かって怒る。
     と、会長が月の王の前に躍り出て、月の王を抱え上げると地面に叩き
     付ける。
     すると、煙とともに消えてしまう月の王。
N 「その時、会長が王へ走り寄り、(王を)軽々と持ち上げ地面に叩きつけた。
   あわれ、王も粉砕」
     驚く星の女たちや月人護衛兵たち。
     その隙に逃げ出す探検隊一同と会長。

12 月面B
     逃げる探検隊一行
N 「混乱に乗じて一行は逃げ出す」
     月人兵士たちが追って来る。
N 「追撃する月人たち。全速力で逃げるが、差は詰まっていく」
     探検隊を守るべく、傘を振り回して一人で月人の追っ手と戦う会長
     月人を砕き、やっと一行の後を追い逃げる会長。
     だが、大量の月人兵士が追いかけてくる。
N 「なおも応戦する会長。追っ手はとどまることなく、もうダメかと思ったとき・・・」

13 月面C・断崖の上
     崖のふちにロープに繋がれた砲弾船がある。
     先に砲弾船に乗った隊員が会長に一生懸命「急いで!」と手招きする。
N 「なんと船を発見。慌てて中へ乗り込む」
     追ってきた月人を振り払い、一人戦う会長。追ってきた月人を粉砕。
N 「追っ手が来るまでまだ時間がある」
     会長は外に残ったまま砲弾船のドアを閉める。
     そして、砲弾船をつないでいたロープを解くと、そのロープを握ったまま崖に
     ぶら下がる。
     会長の重みで砲弾船が傾き、崖の下に真っ逆さまに落ちていく。
     だが、砲弾船が月面を離れる瞬間、追ってきた月人の一人が砲弾船の後部
     に飛んでしがみつく。
N 「会長はひとり外へ残って、前の綱をつかみ、そのまま船を月の端から引きずり
   降ろす。月人も負けじとしがみつき、落ちる船について行く」
     追ってきた月人兵士たちは悔しそうに崖下を覗いている。

14 宇宙空間B
     宇宙空間を垂直に落下していく砲弾船。
     ロープにしがみついている会長、月人も船にしがみついている

15 うねる海

16 海上
     海に墜落していく砲弾船。
N 「まさに急転直下。海が現れ・・・」

17 海中
     海中深くに沈んでいく砲弾船。
N 「船はそのまま海中へどぼん。だが幸いにも船内は密閉されていたので・・・」
     海上に向って浮上していく砲弾船
N 「船は海面へ浮かび上がる」

18 港
     穏やかな港の風景
     海上を蒸気船がやって来る
     その蒸気船に曳かれて港へ向かう砲弾船。
     砲弾船の上で、会長が意気揚々と手を振っている。 
N 「船を見つけた蒸気船が港へ運び、無事帰還できた次第」

11分48秒バージョンはここで終わり

19 広場A
     月世界旅行の成功を祝って多くの市民が集まっている。
     軍楽隊、砲弾船のパレードに続き会長ら探検隊メンバーが現れる。
     探検隊の勇気と栄誉を称えて6名に冠と勲章が授与される。
     誇らしげに喜び合う探検隊メンバーたち。
     そこに捕虜となった月人が連れてこられて一般公開される。
     異様な月人の姿に驚きと興奮で歓呼する市民たち・

20 広場B
     中央に月を征服した天文学者の銅像がそびえる。
     市民が取り囲む中、軍楽隊がパレード。
     銅像を取り囲んで、楽しそうに輪になって踊る市民たち・・・。

14分バージョン  END



世界中で大成功を収めたこの作品。

エンタメ脚本の基本中の基本、【日常→非日常→日常】 の構成にはきちんとハマっています!

前半、大きな砲弾に人間が乗り込んで月に打ち上げられるという話はジュール・ヴェルヌの「月世界へ行く」、後半、月面の地下に月人が生活しているという話はH・G・ウェルズの「月世界最初の人間」をヒントにしたそうだけど、全体のストーリーは見事、メリエスのオリジナル!


【カラーバージョン】

 

1993年にスペインで発見された着色版です。
長い時間を掛けてデジタル処理で修復されたもので、修復の過程が映画になっています。( 映画「メリエスの素晴らしき映画魔術」 )


1985年12月28日、パリのグラン・カフェで行われたリュミエール兄弟の「シネマトグラフ」による世界初の映画上映会で、メリエスはたちまち映画に魅せられます。

1986年春には、仲間を集めて「カード遊び」という映画を撮影(ほとんどリュミエール兄弟の模倣だったけど・・・)

1896年後半、マジシャンとしての本領を発揮。たまたま発見した“止め写し”と“置き換え”の手法を駆使して「ロベール・ウーダン劇場における婦人の雲隠れ」(1分)を上映。その映像マジックが話題になりました。

1896年から1897年にかけてメリエスは100本以上の映画を撮りました。といってもフィルム1巻が約1分。なので、1本あたり数十秒から1分前後の作品だけど。

そんな中、メリエスは新しい挑戦をします。
長編映画で、しかもカラー映画!

そして出来上がったのが、「悪魔の館」(1896)3分。
当時、3分は長編だったのです!
カラーの色は・・・もちろんカラーフィルムなどなかった時代、色はすべて手描きで着色!


メリエスは1896年9月にパリ近郊のモントルイユに映画スタジオを建て始め、翌1897年3月、世界初の本格的映画撮影スタジオが完成しました。

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アメリカではエジソンが1894年に「キネトスコーピック・シアター」というスタジオを持っていたけれど、これは大きなターンテーブルの上に小屋が乗っている感じの建物で、内側も外側もタールで黒く塗られてた。その奇妙な外観が囚人護送車に似ていたところから、このスタジオは囚人護送車のあだ名と同じ「ブラック・マリア(ブラック・マライア)」と呼ばれていました。とても本格的とはいえないスタジオだったよう。


1897年、メリエスは撮影スタジオと同時に、巨大な彩色アトリエも作りました。

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女工さんたちが出来上がったポジフィルムに1コマずつアニリン染料で色を塗っていく。
一人が1色を担当し、多い時には20色以上使うこともあったそうです。セルアニメの彩色作業と同じことが、拡大鏡を覗きながらここで行われていたのです。
無声映画は1秒16コマなので、3分では2880コマ。
それをプリントの本数だけ塗るという、まさに気の遠くなるような作業が続けられて完成したのが「悪魔の館」カラーバージョンでした。

メリエスは一つの作品のモノクロ版とカラー版を興行主らに販売しており、フランスだけでなく世界中でメリエスの作品が上映されました。

「月世界旅行」のカラー版もそういう訳でスペインで発見されたのでした。

この作品が作られた頃から1907年くらいまではメリエスの絶頂期でした。

ところが、1914年に第一次世界大戦が勃発。
フランス陸軍はフィルムに含まれるセルロイドと銀を再利用するため、メリエスの映画の原版400本以上を没収。陸軍は軍靴のかかと部分などにメリエスのフィルムを使ったそう。
さらに1923年には新しい大通りを建設するためという理由で、メリエスが所有していたロベール・ウーダン劇場が取り壊されてしまった。そしてその年、メリエスのスター・フィルム社とモントルイユの撮影スタジオを製作費の借金の形にシャルル・パテに明け渡すことになった。やけになったメリエスは、モントルイユのスタジオに保管されていた全てのネガやセットや衣装を燃やしてしまいました。→この辺はマーチン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』の中でパパ・ジョルジュが語っていましたね。
  

そんなこんなで、メリエスの全531作品のうち現存するのは約200作品といわれています。メリエスの作品は、見れば見るほど、
「メリエスって人は、人を驚かせたり、楽しませたりするのが大好きで、そして、なにより映画作りが大好きな人だったんだなぁ」と嬉しくなります!

  

    

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