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2018.09.11

『没後20年 旅する黒澤明』と生誕100年ロバート・アルドリッチ『キッスで殺せ』を観る 

PFFで中元雄監督・脚本の『一文字拳 序章 −最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い−』を観た後、所用で京橋から西葛西の映画学校へ。

その後、再び京橋に戻り国立映画アーカイブ開館記念『没後20年 旅する黒澤明』  ポスター展へ。

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世界30か国にわたる黒澤映画のポスター84点、さらにプレス資料など。
ポスターを見ているだけで凄い迫力。
黒澤映画がいかに世界で支持されたかがよく解った。

下の写真は、唯一、撮影が許可されていた2点のポスター。

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18時からはPFF招待作品部門 『女も男もカッコいい! 今こそアルドリッチ』 特集の『キッスで殺せ』を観る。

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『キッスで殺せ』  Kiss Me Deadly 1955年/白黒/105分

監督:ロバート・アルドリッチ
脚本:A・I・ベゼリデス
原作:ミッキー・スピレイン
出演:ラルフ・ミーカー、アルバート・デッカー、ポール・スチュアート
1999年、アメリカ国立フィルム登録簿に登録

【あらすじ】
 私立探偵マイク・ハマーは深夜のハイウェイで謎めいた美女に出くわす。しかし男たちに襲われ、彼女は殺され、ハマーも重傷を負ってしまう。
 事件の真相を探るハマーは助手ベルダを人質に取られながらも、核開発をめぐる陰謀に迫っていく。
 名匠アルドリッチが過激な暴力描写で描く衝撃のフィルムノワール。
 ゴダールらヌーベルバーグ作家たちによって支持され、カルト化。
                               ( eiga.com  より )

前からロバート・アルドリッチ監督、ベティ・デイビスと ジョーン・クロフォード主演の『何がジェーンに起ったか?』(1963)を観たい観たいと思い続けていたので、この機会に同監督作品を観ておくことに。

上映後に黒沢清監督のアフタートークがあるというのも魅力で、この日は朝から夜まで映画漬けでした。

『キッスで殺せ』の冒頭のハイウェイシーンは、なぜかデヴィッド・リンチ監督の『ロスト・ハイウェイ』(1997)をすぐに思い出したけど、もしかして。『キッスで殺せ』のオマージュ?

探偵が主役で、ファム・ファタール(運命の女・悪女)が登場して・・・お~、まさにフィルム・ノワール・・・と思っていたら、ファム・ファタールは早々に消え、次々に女性が・・・。
途中から、主役の行動原理が訳わかんなくなって、思わず笑ってしまったり。
さらにラストのホラー的なオチには、唖然として、内心、大爆笑。

じょ、除染が必要なのでは……(爆)
しかし『アトミック・カフェ』 (1982)で取り上げられていたように「核爆弾がピカッと光ったら伏せて隠れろ!それさえ守れば安全だ!」のプロパガンダが行き渡っていた国だと思うと、このオチにも納得。

なんとも、不思議な吸引力のある作品でした。

白黒で、ロケ多用、即興演出的な展開を見ていると、フランスのヌーヴェルバーグ(1950年代後半から60年代にかけてのフランスの新しい映画運動)への影響も感じた。

※後で調べたら、ヌーヴェルヴァーグの巨匠、ジャン=リュック・ゴダールが影響を受けた過去作品の中に『キッスで殺せ』も取り上げられていた。
https://theriver.jp/godard/


黒沢清監督は開口一番「何度見ても、よくわからない」作品とのこと。
「物語の全貌がつかめるようでつかめない。マイク・ハマーという探偵が一貫して謎を追っているが、それ以外のことがほとんどわからない。でも、こちらの目を釘付けにする普通じゃない瞬間がいくつもある」と作品の持つ複雑な魅力を語っておられました。

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<参考>

第40回PFF開幕 黒沢清監督が語るロバート・アルドリッチ



<余談>

シナリオ分析の授業で前期は『チャイナタウン』 (1974年ロマン・ポランスキー監督)を取り上げたが、後期はぜひ、白黒のフィルム・ノワールの名作を一本取り上げたいと思っている。
候補は……

『マルタの鷹』 (1941年ジョン・ヒューストン監督)
 フィルム・ノワールの始まりといわれる作品。
 
『黒い罠』 (1958年オーソン・ウェルズ監督)
 冒頭の長回しで有名な作品。
 ハリウッド映画をとことん風刺した『ザ・プレイヤー』 (1992年ロバート・アルトマン監督)の冒頭の長回しで「長回しといったら『黒い罠』……」を聞いて、即、amazonで注文。
 『市民ケーン』 (1941年)での長回しやクレーン撮影がこの作品でも発揮されている。同時代のヌーヴェルヴァーグの監督たちからは彼らの信奉する作家主義の完璧な実践例として絶賛されたという。

しかし、ワタシ的にフィルム・ノワールといえば……

『第三の男』 (1949年キャロル・リード監督)
 『黒い罠』と同じくオーソン・ウェルズが悪役で登場。最もドイツ表現主義の影響がよく分かる作品で、光と影の映像美や、哀愁を掻き立てるチターの音楽、有名なラストの別れのシーン……すべてに強烈な印象を受けた作品。

どの作品も学生たちに一度は見ておいて欲しい作品。
それぞれに素晴らしく、どれか一本というと迷ってしまう。
後期授業が始まるまでに、決めておきますから(笑)


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