2014.10.31

「観客が知っている事実を、君が台詞で繰り返すべきではない」スティーヴ・マックイーンからチャック・ノリスへのアドバイス!

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調べ物をしていて、たまたま“チャック・ノリス”に行き着いた。
チャック・ノリスの出演作品って、ほとんど観たことないなぁ……

で、wikiのチャック・ノリスの記事の中のスティーヴ・マックイーンの言葉に「さすが!」
以下、wikiより抜粋。
(出典が明示されてないけど、的を射た言葉なのでそのまま抜粋)

『暗黒殺人指令』(1978年)が劇場公開されると、チャックはスティーヴの感想を聞くために、思い切って彼を映画館に誘った。

「なかなかいいじゃないか」スティ-ヴはチャックに言った。

「ただ少しだけアドバイスしておこう。君は映画の中で、観客が既に分かっていることをわざわざ口で説明している。映画というのは視覚的なものだ。だから観客が知っている事実を、君が台詞で繰り返すべきではない。次の映画では、他の役者に必要な筋書きを喋らせて、君はここぞという重要な時にだけ口を開くんだ。そうしたら観客は君の台詞を憶えるよ。ただただ意味もなく台詞を喋っているだけじゃ、誰の記憶に残らないんだ

スティーヴはその例として、彼の『ブリット』(1968年)を挙げた。
ロバート・ヴォーンと絡む場面で、自分の台詞が長過ぎると感じた。そこで彼は、監督に頼んで台詞を大幅にカットしてもらい、次の一言に変えた。

「『お前は自分の側の道を歩け。俺は俺の側を歩く』 誰もがあの台詞を憶えているんだ」

スティーヴが言った。

「君が映画でやるべきこともまさにそれだよ。まず脚本をじっくり読み、台詞が気に入らなかったら監督に頼んで、できるだけ台詞を短くして皆の記憶に残るようにするんだ。例えば、クリント・イーストウッドの『さあ、やってみろ。俺の日にしてくれ』があるが、皆あの台詞を知っている。歌詞にもなったし、レーガン大統領もスピーチに取りいれた。それと、映画のキャラクターに成りきるんだ。誰もが自分の性格にいろんな面を持っている。軽くて人間的な面と、重くて攻撃的な面の両方を引き出すんだ。そうすることで映画のキャラクターは、君にとっても観客にとっても説得力のあるものになる。本物のスターとは、観客が感情移入できる俳優を言うんだ」

スティーヴのその励ましの言葉は、チャックにとって大きな意味を持っていた。
事実チャックは何年にも渡り、その言葉を忠実に守ろうと努めた。
そして、結果的にはスティーヴの言った通りだったのだ。


シナリオ初心者の頃は、どうしても“言葉”で説明してしまいがち。
ストーリーを追うことに精一杯で、“映像に語らせる”ことが抜け落ちてしまうが、最初のうちはそのことさえ気がつかないことが多い。

台詞に関してのスティーヴ・マックイーンの言葉は、まさにその通り!


ヒッチコックも以下のように語っている。


今作られている映画の大部分がとても<映画(シネマ)>とは言えない代物だ。
<しゃべっている人間の写真集>とでも呼びたいくらいだね。

映画でストーリーを語るときには、どうしても必要なとき以外は台詞にけっしてたよってはならないというのが鉄則だと思うんだよ。

すくなくとも、私自身は、いつも、できるだけ純粋な映画的手段で、ショットからショットへの連続とその間にいくつかフィルムの断片(こま)を挿入してイメージを積み重ねていくことによって、ストーリーを語ろうと努めているつもりだ。

中略

わたしたちは、映画のシナリオを書くときに、まず、台詞と視覚的な要素をはっきりと区分し、つねに、できるかぎり台詞にたよらずに、視覚的なものだけで勝負することがかんじんだ。

どんなふうに話を運ぶにせよ、最終的には観客が息をのむところまで確実に持っていかなければならないからだ。

要するに、スクリーンという矩形の空間をエモーションで埋めつくさなければならないということだ。

            (『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』-50ページ)

そして、ヒッチコックもトリュフォーも、音(台詞)に頼らなかった、サイレント映画(ピクチャー)というのは<映画(シネマ)>の最も純粋な形式だと思う、と語っている。


いやいや、勉強になることばかり。

<映画>の海は、広くて深い……


余談ですが

チャック・ノリス・ファクト

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shockチャック・ノリスがブーメランを投げるとき、ブーメランは怖くて戻ってこれない

shock神が「光あれ」と言ったところ、チャック・ノリスに「『お願いします』だろ?」と怒られた

shockチャック・ノリスはコードレス電話でも人を絞め殺すことができる

shockチャック・ノリスは一輪車でウイリー走行できる

shockチャック・ノリスは以前、無限まで数を数えたことがある…。しかも2回

shock大概の人は死神を恐れる。チャック・ノリスにとって死神はまだ若造である

shockチャック・ノリスはドラマ「24」に出演したが12分37秒で事件を解決してしまい、ドラマはお蔵入りとなった

shock合衆国内での主な死因は  1.心臓病 2.チャック・ノリス 3.癌 である


こんなにも愛されている国民的スターなんですねhappy02


   

 

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2014.10.13

同じものだけど…ちがった奴をくれ! ブレイク・スナイダーの「10のストーリー・タイプ」

Give me the Same thing… Only Different!

『SAVE THE CATの法則』(ブレイク・スナイダー著)の第2章のタイトルです。

この第2章では、個性的な作品、面白い作品を作るために必要なものの一つとして、自分の作りたい作品のジャンルを知ること、同じジャンルの作品をできるだけたくさん観ることを勧めています。

引用-P49~
平凡でないもの、典型的でないものを作るには、まずはそれまでの歴史や伝統をよく知る必要がある。これまでに製作された何百本という映画、特に自分の書きたい脚本と同じジャンルの映画については徹底的に知っておくべき。

ところが驚いたことに、映画で身を立てようとしている人間が、映画の引用が出来ない。自分が書きたいジャンルの映画さえ引用できないのだ。

いいかい、言っておくけど、名監督はみんな引用できるんだ。

引用とは「その映画がどう機能しているか、その仕組みを説明できる」ということ。

映画というのは、感情を引き起こすために作られた複雑な機械のようなもの。これを部品に分解して、組み立て直すようにならなければ。

そのためには、好きな映画、最近の映画だけでなく、もっともっと歴史を遡って、いろいろな映画の種類を知り、どんな系統にはどんな作品があり、どうして発展してきたのかを理解しなければならない。つまり<ジャンル>

平凡でなく《同じものだけど…ちがった奴》を作るには、自分の映画のジャンルを熟知し、ひねりの加え方を学ばなきゃいけない。

書いてる途中、道を見失った時、同じジャンルの作品を参考にし、プロットや登場人物からヒントをもらう。                                                                                              


【スナイダー独自の10のジャンル】

1 家のなかのモンスター(Monster in the House)

『エクソシスト』(73) 『ジョーズ』(75) 『エイリアン』(79) 『13日の金曜日』(80) 『エルム街の悪夢』(84) 『危険な情事』(87) 『トレマーズ』(90) 『ジュラシック・パーク』(93) 『スクリーム』シリーズ(96~) 『パニック・ルーム』(02) 『ザ・リング』(02) 『ソウ』(04)など

◆「危ない! 奴に食われるな!」という単純で原始的なルール。
◆音声を消して上映しても<話はわかる>映画。
◆取り憑かれた屋敷など幽霊関係の話もこのジャンル。
◆限定空間に“異物(モンスター)”が侵入することで、登場人物はそれとの対決を強いられる。
◆ホラーばかりでなく、おなじ構造を利用したコメディもある。


2 金の羊毛(Golden Fleece)

『オズの魔法使い』(39) 『荒野の七人』(60) 『特攻大作戦』(67) 『がんばれ!ベアーズ』(76) 『スターウォーズ』(77) 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85) 『大災難P.T.A.』(87) 『プライベート・ライアン』(98) 『ロード・トリップ』(00) 『オーシャンズ11』(01) 『そして、ひと粒のひかり』(04)など

◆ギリシャ神話に由来。

◆主人公は何か(金の羊毛)を求めて旅に出かけ、途中で人々と出会い、いろいろなことを経験。最終的に発見するのは別のモノ=自分自身。

◆大事なのは、進んだ距離ではなく、どう変化したか。
◆《ロードムービー》を書く際に知っておいたほうがいいジャンル。
◆《泥棒モノ》も含む。


3 魔法のランプ(Out of the Bottle)

『コクーン』(85) 『ラブ・ポーションNo.9』(92) 『マスク』(94) 『ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合』(96) 『フラバー』(97) 『ハート・オブ・ウーマン』(00) 『ブルース・オールマイティ』(03) 『ハービー 機械じかけのキューピッド』(05)など

逆バージョン:願いの代わりに、呪いが叶う(天罰が下る)
『フリーキー・フライデー』(76) 『オール・オブ・ミー/突然半身が女に!』(84) 『恋はデ・ジャヴ』(93) 『ライアーライアー』(97) 『フォーチュン・クッキー』(03)など

◆主人公は魔法に(もしくは呪いに)かかり、最終的に勝利を収める。
◆「もしも~があったらいいのに……」というタイプのお話。


4 難題に直面した平凡な奴(Dude with a Problem)

『コンドル』(75) 『ターミネーター』(84) 『ダイ・ハード』(88) 『愛がこわれるとき』(91) 『シンドラーのリスト』(93) 『ブレーキ・ダウン』(97) 『タイタニック』(97) 『ディープインパクト』(98) 『オープン・ウォーター』(03)など

◆映画のスタイルやジャンルも様々で、引き起こす感情の幅も広い。
◆どこにでもいそうな奴が、とんでもない状況に巻き込まれるストーリー。
◆普通の人間が、勇気を振り絞って、解決しなければならない問題に直面する。


5 人生の岐路・人生の節目(Rites Of Passage)

『失われた週末』(45) 『酒とバラの日々』(62) 『テン』(79) 『クレイマー、クレイマー』(79) 『普通の人々』(80) 『男が女を愛するとき』(94) 『28DAYS』(00) 『ナポレオン・ダイナマイト(旧題:バス男)』(04)など

◆人生の節目になるような出来事や経験を扱う。


6 バディ(相棒)との友情(Buddy Love)

ローレル&ハーディ、ボブ・ホープとビング・クロスビー、『赤ちゃん教育』(38) 『女性№1』(43) 『パットとマイク』(52) 『明日に向かって撃て』(69) 『ワイルド・ブラック/少年の黒い馬』(79) 『48時間』(82) 『E.T.』(82) 『リーサル・ウェポン』(87) 『レインマン』(88) 『恋人たちの予感』(89) 『テルマ&ルイーズ』(91) 『ウェインズ・ワールド』(92・93) 『ジム・キャリーはMr.ダマー』(95) 『タイタニック』(97) 『トゥー・ウィークス・ノーティス』(02) 『ファインディング・ニモ』(03) 『10日間で男を上手にフル方法』(03) 『ブロークバック・マウンテン』(05)など

◆男同士や警官同士や友情だけでなく、ラブストーリーも含まれる。また女同士、魚同士、少年と犬なども。

◆バデイの仮面を剥がせば、ラブストーリー(逆に言えば、ラブストーリーはセックスの可能性がプラスされた《バディとの友情》映画)

◆最初<バディ>はお互いを嫌っている。旅をしていくうちにお互いの存在が必要だと気がつく。やがて、連れ添ってきたバディと喧嘩になる。しかし、お互いなくして生きていけず、エゴを捨てて仲良くするしかないことを最終確認。二人は覚悟を決める。

◆もし《バディとの友情》の脚本を書きたいなら、このジャンルの構成やパターンをしっかり理解しよう。

◆DVDを何十本も観て、じっくり研究してみると、こんなにパターンがそっくりだったんだ!とわかる。

◆なぜパターンが似てしまうのか? そのパターンだったら、必ず上手く行くと分かっているから。


7 なぜやったのか(Whydunit)

『市民ケーン』(41) 『チャイナタウン』(74) 『大統領の陰謀』(76) 『チャイナ・シンドローム』(79) 『ブレード・ランナー』(82) 『JFK』(91) 『ファーゴ』(96) 『インサイダー』(99) 『ミスティック・リバー』(03) 『BRICK ブリック』(06)など

◆フーダニット<だれがやったのか?>よりも、重要なのはホワイダニット<なぜやったのか?>

◆<犯罪>が<事件>として明るみに出た時、その背後にある想像もしなかった人間の邪悪な性が暴かれるというジャンル。

◆探偵モノや社会派ドラマの共通項:
観客を人間の心の闇へと連れて行き、スクリーン上の探偵が観客の代わりにその謎を解くかに見えるが、真相を突き止めるのは観客自身。観客は探偵が集めた情報をもとに自分でその真相を明らかにし、意外な結果に衝撃を受ける。

◆もし、推理モノを書きたければ、《なぜやったのか?》の名作をいろいろ見るべき。探偵がどういうふうに観客の代わりをしているか、よく観察。そして登場人物の心の闇を探ることが観客自身の内面を探ることになるのか考えてみる。


8 バカの勝利(The Fool Triumphant)

『天国から落ちた男』(79) 『トッツィー』(82) 『アマデウス』(84) 『レナードの朝』(90) 『チャーリー』(92) 『デーヴ』(93) 『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94) 『チャンス』(97)  『キューティ・ブロンド』(01) 『40歳の童貞男』(05)など

◆ストーリーとしては最も古いタイプ、サイレント時代の道化物、チャップリンやキートン、ロイドなどもここに含まれる。

◆負け犬のバカに対してもっと大きくて権力の悪者-たいていは体制側-が存在する。

◆どんなに神聖で立派な体制や組織であっても、<バカ>は容赦せずおちょくり、こてんぱんに批判する。

◆賢いバカのストーリーは、社会のアウトサイダーの人生でもある。アウトサイダーが勝利すると、観客も自分が勝利したような快感を味わう。


9 組織のなかで(Institutionalized)

『M★A★S★H マッシュ』(70 アメリカの軍隊・群集心理の狂気) 
『ゴッドファーザー』シリーズ(72~ マフィア一族) 
『カッコーの巣の上で』(75 精神病院) 
『アニマル・ハウス』(78 大学・
優等生サークルVS劣等生サークル) 
『9時から5時まで』(80 企業・上司 VS OL) 
『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89 ブルックリン・人種) 
『リストラ・マン』(99 コンピューター企業) 
『アメリカン・ビューティ』(99 現代アメリカの郊外) 
『トレーニングデイ』(01 新人刑事の1日) 
『クラッシュ』(05 多民族国家アメリカ)など

◆組織や集団、施設、家族や一族のストーリー扱うジャンル。
◆組織や集団を動かす根底に狂気や自滅的なものが多いという共通項。
◆個人よりも集団を優先することの是非を描く。


10 スーパーヒーロー(Superhero)

『レイジング・ブル』(80 ミドル級チャンピオン) 
『バッドマン』(89 犯罪都市ゴッサム・シティ、億万長者) 
『ライオンキング』(94 動物たちの王国プライド・ランドの王子) 
『マトリックス』(99 天才クラッカー) 
『グラディエーター』(00 聖剣士) 
『ビューティフル・マインド』(01 天才数学者・統合失調症) 
『スパイダーマン2』(04)

◆《難題に直面した平凡な奴》の対極。超人的な力を持つ主人公が、ありきたりで平凡な状況に置かれ、周囲から理解されない。超人的な才能を持つ一方で、辛さや苦しみも抱えている。

◆フランケンシュタイン、ドラキュラ、X-メンなども同じジャンル。





ボグラー独自の10のジャンルかどうかは別にして、プロの脚本家は作品に取り組む前に、同じようなテーマの作品をたくさん観るって、自然にやっていることではないでしょうか。

私は観ますね。構成の段階から、とにかく自分の作りたい作品のキーワードに引っかかりそうな映画、本、資料はできるだけ多く観て、読む。

そして、頭の中に100の情報が集まったとして、作品の中に投影されるのは10~20くらいか。作品の中で使わない情報は取捨選択して、バックストーリーで使うこともあります。

しかし、たくさんの作品を観たら、似てこないか?

ボグラーは次のように言ってます。

これパクリじゃない? と思ったら……パクるのをやめる

これってお決まりのパターンじゃない? と思ったら……ひねりを加える
よくあるやり方? と思ったら……新しい方法を考える

しかし、まずは、お決まりのパターンを使いたくなる理由と利点をきちんと理解しておこう。パターンやルールが生まれるのには、それ相応の理由がある。

ルールをしっかり理解し、応用できるようになると、そういったものに制約されている感覚がなくなり、開放感を感じるはず。
打ち破りたいものを理解してはじめて、本物の創造性を発揮できるのだから。

これも、プロは(経験値から)自然に、やっていることだと思う。


ところでクリストファー・ボグラー&デイビッド・マッケナの『物語の法則』に【プロの映画脚本家になりたい人のための五カ年計画】という章があって、ラストに
           
□100日間で100本の台本を読む を挙げています。
  ○脚本を読み終えるごとに、ストーリーのシノプシスを2~3ページにまとめる。
   中心となるキャラクター、主眼となる対立、相互アクション、話の始まり、
   中盤、終わりなど物語の根幹を見つけ出す。
  ○脚本の内容を一文でまとめる(ログライン)
◆脚本を読むことで、自分がマスターしたい形式が分かってくる
◆脚本の構成要素を分解することで、それぞれの要素がどう機能しているかを学ぶことができる。

結局、スナイダーもボグラーたちも同じことを言ってるわけです。

映画の歴史を遡って、できるだけ映画をたくさん観て、たくさん読んで、分析してみること。そして、それぞれの要素がどう機能しているかを知り、身につけることで、それらのルールを応用して、より新しい独自の個性的なものとして創造できる、と。

ということで、映画の仕事をしたければ、歴史を遡り優れた作品をたくさん観ようね、学生諸君!

   

 

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2009.10.02

『ママの遺したラヴソング』&『ママの想い出』

母物二本、借りていたDVDをようやく観る。

09a_love_song_for_bobby_long2 『ママの遺したラヴソング』
製作 2004年
ジャンル ヒューマンドラマ
監督&脚本  シェイニー・ゲイベル
原作  ロナルド・イヴァレット・カップス

出演  ジョン・トラヴォルタ 、スカーレット・ヨハンソン 、ガブリエル・マック 、デボラ・カーラ・アンガー 、デイン・ローデス


繊細に揺れ動く思春期の少女(18才)役のスカーレット・ヨハンソン、上手いです。
中年というか初老のジョン・トラヴォルタはちょっとショック。でも見事役にはまっている。

観終わった印象は悪くない。
しかし、なんか中途半端。


【メインキャラ設定】

◆パーシー(スカーレット・ヨハンソン)
 始まり:フロリダ州で母親に見捨てられたというトラウマに支配され、高校を中退して男と同棲中のパーシー。ジャンクフードばかり食べている。
  ↓
 母の訃報をほったらかしにしていた同棲相手に怒り、別れを告げる。
  ↓
 ルイジアナ州ニューオリンズの母の家へ。そこで、母の家に暮らす二人の男と出会う。
  ↓
 この男たちとの出会いによって変化していくパーシー。
 ◇ジャンクフードを食べるシーンがなくなる
 ◇自堕落だった彼女が家の手入れなどし始める
 ◇衣装も、ドレスなどに変化していく

 ※矛盾&疑問
  これほど母の愛に飢え、母を求めていた少女だけど、自分の父親に関しては一度も話が出てこない。これって不自然では?


◆ボビー・ロング(ジョン・トラヴォルタ)
 始まり:アル中の自堕落な中年男。
  ↓
 もと大学文学部教授で、作家の言葉を借りてしか自分を語れない男。
 T.S.エリオット、ジョルジュ・サンド、モリエール、ロバート・フロスト、ロバート・ブラウニング、アーサー・ミラー、マーク・トウェイン、ウィリアム・バロウズ、チャールズ・ディケンズなどなどの作家の言葉。
  ↓
 後半、ついに切れた弟子から“自分の言葉で喋れ”といわれる

 ※矛盾&疑問
  最初、このキャラ設定はさすがと思った。作家の言葉が次から次に出てきて、もと文学部教授というキャラを上手く表現している。

  しかし、ボビー・ロングの語られなかった過去が分かってくるにしたがって・・・彼も心に深い傷を持っていると分かる・・・他人(作家)の言葉や歌でしか自分を表現しようとしないということは相当心が病んでいる証のように見えてくる。

  この部分の追求と描写が弱い。
  弟子のローソン(ゲイブリエル・マック)によって、ボビーの不幸な過去が語られるが、その過去があまりにもありきたりの過去。ありきたりの過去でも、トラウマの深さは人それぞれなのでいいとは思うのだけれど、それにしてもいまいちボビーという男に人間性の深みが感じられない。

  たとえ過去の自分の不幸に囚われ、自責・自虐の人生を送っていたとしても、新しく心引かれ、寝た女性が妊娠したとしたら、誰の子なのか気にならなかったのだろうか?

◆ローソン(ゲイブリエル・マック)
 なぜここまでボビーの言いなりになっているのかよくわからない。

 ボビーとの関係をパーシーに語ることでボビーとローソンの関係が分かってくる。

 ローソンはボビーの優秀な生徒であり、ローソン自身、文学部教授のボビーに憧れていた。
  ↓
 ローソンとボビーは親しくなり、ボビーはローソンの若くて刺激的な仲間たちと過ごすことが多くなる。その挙句、ボビーは浮気をして離婚。可愛がっていた幼い息子と定期的に会っていた。が、そんなある日、ボビーはローソンに引き止められて息子との面会に遅れてしまう。そのせいである不幸に襲われる。
  ↓
 ローソンはボビーの不幸はすべて自分のせいだと自分を責めている。
 そしてボビーの言いなりにボビーの自伝を書くことに人生を費やしている。
 二人の関係はいつまで経っても教授と生徒の関係。
  ↓
 ローソンはボビーの下を去って、ジョージアナ(デボラ・アンガー)と暮らそうとする。しかし、ローソンとジョージアナとの間に愛はないとボビーからズバリ指摘されされてしまう。
  ↓
 惹かれ始めているローソンとパーシー。
  ↓
 深く傷ついているはずのジョージアナだが、現実を受け止めて(多分?)、ローソンにもパーシーにもボビーにも優しい・・・・・・

 ※疑問
 ローソン、そしてジョージアナの苦悩や葛藤がどこか中途半端で曖昧にされている。
 なので、この二人の在り方もどこかご都合主義に感じてしまう。
 シナリオには描かれていたが、編集で切られたとしか思えない。



【ストーリー展開】
 分かりやすい、心温まるストーリーなんだけど、ところどころ誤魔化して曖昧にしてストーリーを進めているところが気になってしまう。

 ◆3人で暮らすことになるが、ローソン(ゲイブリエル・マック)はボビーに「(パーシーに)あのことを秘密にしていていいのか」と気にする。
  
  いかにも重大な秘密のように語らせるけど、見ている側にはそれほど気を持たせるような重大な秘密とは思えない・・・・・。
  もしかして、まだ語られていないすごい秘密でもあるのかと期待して観たが、結局、すでに映画の中で語られていることをパーシーだけが知らないというだけの秘密。

  かつてのパーシーの同棲相手が乗り込んできて、彼女はやっとある事実を知って、一挙にクライマックスへと向かうのだが、観客はこの秘密のことをすでに知っているために、パーシーが受けたほどの衝撃は受けない。

  映画全体がボヤけて感じるのは、そのせいだろうか・・・・・・・・・・・・・・・。

 ◆映画の起の部分でパーシーは母の形見の入った箱を見る。しかし、その箱をほったらかしにして、ラストのラストになって箱の中を見る。そこには観客にも明かされていない、新しい事実が入っていた・・・・。んだけれど、全体を見ていれば予想のつく展開。

  このラストのために、ご都合的に最初、箱をほったらかしにさせたようで、この展開もなんだかスッキリしない。

 ◆全体的にご都合主義的な展開が気にはなるけど、ただ、パーシーの感情の流れは分かりやすく描かれている。

  自分は母親に放棄(ネグレクト)された人間だと思い込み、自分の存在を自己肯定できない少女(かなり荒んでいる)
    ↓
  母親の死を知り、故郷に飛んでいく(内心は母との繋がりを求めている)
    ↓
  母の知り合いだという二人の男たちと同居する羽目になる(一度は反発するが、戻ってくる)
    ↓
  二人の男、そして周囲の人々によって、それまで知らなかった母の姿を知っていく。
    ↓
  母がパーシーを愛していたこと、パーシーの名前にも母の愛がこもっていることを知る。(ただ、なぜ幼いパーシーを祖母に預けたのか、その事情は不明のまま)
    ↓
  少しづつ変化する少女、自分の夢を語る(少しづつ自己肯定していく)
    ↓
  男二人は少女の夢をかなえてやるために、高校復学に尽力する。
    ↓
  荒んだ少女から普通の年頃の少女に変化していくパーシー(自分が母から愛されていたことや男二人との心の交流の中から、自分の存在意義と自分の居場所を見つけて安定していく)
    ↓
  血尿の出ているボビーの体を心配し、ボビーとの関係で荒れているローソンの気持ちを宥め・・・自分以外の人間の心配をし、彼らのアル中を治そうとするパーシー。(立場の逆転、パーシーの成長)
    ↓
  一つのファミリーのように気持ちが近づいていく3人。
    ↓
  そんな時、もと同棲相手がパーシー宛の弁護士の手紙を持って現れる。そこで、男二人がある事実を隠していたことを知り、激怒。パーシーは二人を追い出し、家を売ろうとする。
    ↓
  やっと母の遺品を整理する気になるパーシー。その遺品の中に、誰も知らなかったある事実が書かれており激しいショックを受けるパーシー。
  母は遺言で自分の死後、1年間だけ二人の男にこの家に住むことを許していた。そんな母の遺言の理由=遺志=贈り物にやっと気がつくパーシー、そして男たち。



分かりやすいストーリーだし、役者さんもみんないいのに、絶賛できないのはどこか、なにかを端折っているからのような気がする。
シナリオがもともとそうなのか、編集でそうなったのか・・・・・ちょっと残念。

09mamanoomoide2_2『ママの想い出』
製作 1948年アメリカ  マズルカ形式
原題 I REMEMBER MAMA
監督 ジョージ・スティーヴンス
原作 キャスリン・フォーブス 小説「ママの銀行預金」
脚本 ウィット・ボディーン
出演 アイリーン・ダン、バーバラ・ベル・ゲデス、オスカー・ホモルカ

1910年のサンフランシスコ。ノルウェー移住の大工の一家。両親と4人の子供たちのハンソン一家は、貧しいながらも幸せに暮していた。毎週土曜日の晩にパパの稼ぎをみんなで勘定するのだが、いつもギリギリ・・・ママは銀行にかなくても済んだというのが口癖だった・・・。

口うるさいオバたちからも頼りにされ、いつも一家の太陽であるママ。
ママの励ましで小説家としてデビューする長女が、そんな母親の思い出を語る形で展開していく心温まるホームドラマ。

 

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