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2008.04.10

●備忘録:「ハリウッドの映画人は“戦争”を告発する」



ハリウッドの映画人は“戦争”を告発する
――イラク戦争5周年に際して――


 米ブッシュ政権がイラクへの侵略戦争を開始して5年。戦争は“ベトナム化”と呼ばれるほど泥沼化し、米軍に協力して参加した「有志連合」の国ぐには、日本以外相次いで軍の撤退または削減を余儀なくされて、何よりも米国民の過半数は「イラク戦争ノー」の意思表示をするまでになった。

 そして開戦時より少なからぬ第一線映画人が反戦の側に立っていたハリウッドの良心は、昨年後半から作品を通じてはっきりと「イラク反戦」を主張しはじめ、4月から日本でも一連の力作、秀作が公開される。
 とりあえず試写を見た3本について──。

■「大いなる陰謀
 ロバート・レッドフォード監督の「大いなる陰謀」は、自分自身とトム・クルーズ、メリル・ストリープらが競演、「何のために戦うのか? 何のために死ぬのか?」をキャッチフレーズにうたう、文字通り真摯にアメリカ国民に“いま”を問う力作となった。

 クルーズの大統領側近で軍事顧問である上院議員は、大手テレビ局のベテラン記者(ストリープ)を招き、アフガニスタンの秘密作戦をリークする。イラク戦場の泥沼化から目をそらすため、アフガニスタンの高地を奇襲占領する計画。すでに作戦は開始され、大手テレビ局を利用して宣伝、あわよくば自分の大統領選出馬の追い風にしようとしていた。

 テレビ記者は米兵の犠牲など一切無頓着な官僚に疑惑を抱く。その秘密作戦で2人の若い米兵が氷雪の山中に取り残され、孤立し、死地におちいる。この2人の兵士はカリフォルニア大学の優秀な学生、恩師(レッドフォード)のとめるのを聞かず、志願した。そしていま恩師はもう一人の教え子に、いまいかに生きるべきかを説き聞かせる……。

 映画は1時間半のコンパクトな作品で、激しい戦闘シーンもほとんどない。クルーズ対ストリープ、レッドフォード対学生の静かだが緊張した対話が、戦場シーンをはさんで平行して進む。地味なたたずまいだが、その心にしみる問題意識、「こんな戦争で死んでいいのか?」と突きつける問いの厳しさに、胸をつかれる。

■「告発のとき
 ポール・ハギス監督の「告発のとき」も抑制された地味なトーンのなかに、イラク戦争の真実に迫る。

 トミー・リー・ジョーンズ(日本では缶コーヒーBOSSのテレビCMで有名な)の父親が、イラクから帰国した息子が行方不明と聞く。シャーリーズ・セロンの女刑事とともに、息子の行方をさがす。
 そして息子の無残な焼死体を発見、息子の戦友たちにかけられた容疑、そして息子も含めた彼らがイラクで行った市民や捕虜への残虐行為が浮かび上がる。国を愛し、軍につとめた経験のある父親にはとても信じられない。

 ラストで星条旗を掲揚するシーンをぜひ見逃さないようにしてほしい。そこに映画の「告発」の意味が痛切に込められているからである。

■「さよなら。いつかわかること
 ジェームズ・C・ストラウス監督の第1回作「さよなら。いつかわかること」は、さらに静かな情感をたたえた作品。

 ジョン・キューザックの父親は8歳と12歳の幼い姉妹とともに、軍曹としてイラクに出征した妻=母親を待っている。ある朝、その母が戦死した知らせが届く。しかし彼は幼い姉妹に、その事実を告げることが出来ない。

 子どもを連れてフロリダのテーマパークへのドライブに行く。その途中で子どもの目を盗み自宅に電話をする。いまは亡き妻が吹き込んだ留守番電話のメッセージが響き、その声と対話する切ない悲しみが伝わる。そして旅の最後に、彼は子どもたちに真実を話す……。

 主人公の父親はイラク戦争に反対しているわけではない。戦争に批判的な弟と論争するくらい、むしろ保守的な男をも、どうしようもない悲しみでむち打つ戦争の痛み。この父親がはっきりと反戦の側に進み出るのは時間の問題である。

 これまでに試写を見た上記3本で痛感するのは、これらの作品のスタッフたちは明らかに商業主義に妥協せず、ひたすら戦争に向き合っていること。
 昨年11月から今年の2月にかけて、ハリウッドのシナリオ作家や映画俳優たちは自己のユニオンに結集して、新しい要求を貫徹した。その自己主張の強さと組織的行動力と、こうした一連の「反戦映画」の登場は無縁ではない。                                  


           山田和夫(映画人九条の会代表委員/映画評論家)(2008.3.21)
                     映画人九条の会mail No.27

 

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