2008.04.10

●「映画人九条の会」が抗議声明を発表

「映画人九条の会」メールより

 
 映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止問題が社会問題になっていますが、3月27日、自民党の有村治子参議院議員は、参院内閣委員会で映画「靖国」問題を取り上げ、専門委員(審査員)の思想・信条にまで立ち入り、一委員が「映画人九条の会」のメンバーであることを問題にしました。

 有村議員は、「映画人九条の会」を特定の政治的イデオロギーに立つ活動であると断じ「映画人九条の会のメンバーであることを知らないで選んだのか」「(その委員の)政治的、思想的活動が当該映画の助成金交付決定に影響を与えたのではないかという疑念を払拭せよ」などと執拗に文化庁に迫ったのです。

 憲法を守ることは、政治家や公務員、そして国民の責務ですが、その立場を表明しただけで特定の政治的イデオロギーに立つ活動だと断じ、国会で問題にするとは、まさに異常な事態です。まるで一昔前の赤狩りのようです。

 私たち「映画人九条の会」は、「映画人九条の会」に対するこのような理不尽な言及と非難を看過することはできません。

 「映画人九条の会」は本日4月10日、「映画人九条の会」代表委員9名全員の同意と、運営委員会全員の同意を得て、添付のような抗議声明を発表しました。
 ぜひともこの抗議声明をお読みいただき、映画の公的支援への政治介入、「映画人九条の会」への不当な圧力に抗議する私たちの真意をご理解くださるようお願い申し上げます。

                           映画人九条の会事務局長 高橋邦夫

以下抗議文本文

 
 映画「靖国」をめぐり、
 「映画人九条の会」への不当な非難的言及に抗議する。

 日中合作の長編記録映画「靖国 YASUKUNI」に対し、自由民主党の稲田朋美衆議院議員がクレイムをつけたことに端を発し、4月公開予定の映画館が次々と上映を中止する異常な事態が起きています。

 私たち日本国憲法第9条を守る一点で集まる「映画人九条の会」でも、このような事態が憲法の基本的人権、表現の自由にかかわる重大事として注目してきましたが、会の性格上、個々の問題で行動を起こすことは控えてきました。

 ところが自由民主党の有村治子参議院議員が、3月27日の参院内閣委員会で映画「靖国」問題を取り上げ、映画「靖国」が日本芸術文化振興会の助成を受けた経緯を追及、とくに助成承認にかかわった専門委員(審査員)の思想・信条にまで立ち入り、一委員が「映画人九条の会」のメンバーであることを問題にしました。

有村議員は、「映画人九条の会」を特定の政治的イデオロギーに立つ活動であると断じ、「映画人九条の会のメンバーであることを知らないで選んだのか」「(その委員の)政治的、思想的活動が当該映画の助成金交付決定に影響を与えたのではないかという疑念を払拭せよ」などと執拗に文化庁に迫り、専門委員として審査に当たったことにあからさまな疑義を呈したのです。

 憲法99条が定める通り、政治家や公務員には憲法擁護義務があり、そして国民には憲法を守っていく責任がありますが、その立場を表明しただけで特定の政治的イデオロギーに立つ活動だと断じ、国会で問題にするとは、まさに異常な事態です。これは、1940年代末から1950年代前半にかけてアメリカの下院非米活動委員会が強行した“赤狩り”=ブラッククリストづくりに匹敵する暴言です。

 映画「靖国」の上映中止問題全体を論じることは別にして、私たち「映画人九条の会」に対するこのような理不尽な言及と非難を黙視することはできません。

 有村議員のこのような非難は、有村議員、稲田議員らの映画「靖国」に対する攻撃と圧力が反憲法的、反民主主義的な本質を持っていることを自ら暴露するものです。

 そもそもドキュメンタリー映画は、社会が直面している問題を取り上げて、作者の視点から描くものです。それを偏っているとか、中立であるかどうかということを問題にするのは、映画の本質を分かっていないということです。

 私たち「映画人九条の会」は、有村議員の不当な非難的言及が持つ反憲法的な危険な意図について広く注意を喚起するとともに、有村議員の非難的言及とこれに同調する動きに強く抗議します。

   2008年4月10日

       映画人九条の会
              代表委員 大澤 豊(映画監督)、小山内美江子(脚本家)
       神山征二郎(映画監督)、ジャン・ユンカーマン(ドキュメンタリー映画監督)
             高畑 勲(アニメーション映画監督)、羽田澄子(記録映画作家)
     降旗康男(映画監督)、山内 久(シナリオライター)、山田和夫(映画評論家)

                        事務局長 高橋邦夫(映演労連委員長)
                                    運営委員会一同

 【連絡先】〒113-0033東京都文京区本郷2-12-9 グランディールお茶の水301
          HP http://kenpo-9.net/  メールwebmaster@kenpo-9.net

参考リンク

第169回国会 内閣委員会 第3号 平成二十年三月二十七日(木曜日)
   昼休憩を挟んで午後一番の質疑応答で、問題になっている有村治子議員の
    質疑応答を全文読むことが出来ます。

上記質疑応答 参議院インターネット動画
   39分39秒頃から、この問題の質疑応答開始。

 「映画人九条の会」会員として、
 私も強く有村治子議員に抗議します!

 映像作品で一つの時代を描くということは、その時代を追体験するということ。
 だからこそ「あの時代に戻ってはいけない」という危機感も強くなる。
 今の平和の礎となられた人々のためにも、平和憲法を守らねばと思う。

 どんな政治団体にも属さず、憲法を守りたいとだけ念じて「映画人九条の会」に
 参加しただけで、私はアカなのですか? 私は左なのですか?

 映像の本質を全く理解できない彼らが、“中国人”監督だということに過剰反応しているようにしか私には見えない。
 自己の正当性しか見えない偏狭な彼らは醜い。

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●備忘録:「ハリウッドの映画人は“戦争”を告発する」



ハリウッドの映画人は“戦争”を告発する
――イラク戦争5周年に際して――


 米ブッシュ政権がイラクへの侵略戦争を開始して5年。戦争は“ベトナム化”と呼ばれるほど泥沼化し、米軍に協力して参加した「有志連合」の国ぐには、日本以外相次いで軍の撤退または削減を余儀なくされて、何よりも米国民の過半数は「イラク戦争ノー」の意思表示をするまでになった。

 そして開戦時より少なからぬ第一線映画人が反戦の側に立っていたハリウッドの良心は、昨年後半から作品を通じてはっきりと「イラク反戦」を主張しはじめ、4月から日本でも一連の力作、秀作が公開される。
 とりあえず試写を見た3本について──。

■「大いなる陰謀
 ロバート・レッドフォード監督の「大いなる陰謀」は、自分自身とトム・クルーズ、メリル・ストリープらが競演、「何のために戦うのか? 何のために死ぬのか?」をキャッチフレーズにうたう、文字通り真摯にアメリカ国民に“いま”を問う力作となった。

 クルーズの大統領側近で軍事顧問である上院議員は、大手テレビ局のベテラン記者(ストリープ)を招き、アフガニスタンの秘密作戦をリークする。イラク戦場の泥沼化から目をそらすため、アフガニスタンの高地を奇襲占領する計画。すでに作戦は開始され、大手テレビ局を利用して宣伝、あわよくば自分の大統領選出馬の追い風にしようとしていた。

 テレビ記者は米兵の犠牲など一切無頓着な官僚に疑惑を抱く。その秘密作戦で2人の若い米兵が氷雪の山中に取り残され、孤立し、死地におちいる。この2人の兵士はカリフォルニア大学の優秀な学生、恩師(レッドフォード)のとめるのを聞かず、志願した。そしていま恩師はもう一人の教え子に、いまいかに生きるべきかを説き聞かせる……。

 映画は1時間半のコンパクトな作品で、激しい戦闘シーンもほとんどない。クルーズ対ストリープ、レッドフォード対学生の静かだが緊張した対話が、戦場シーンをはさんで平行して進む。地味なたたずまいだが、その心にしみる問題意識、「こんな戦争で死んでいいのか?」と突きつける問いの厳しさに、胸をつかれる。

■「告発のとき
 ポール・ハギス監督の「告発のとき」も抑制された地味なトーンのなかに、イラク戦争の真実に迫る。

 トミー・リー・ジョーンズ(日本では缶コーヒーBOSSのテレビCMで有名な)の父親が、イラクから帰国した息子が行方不明と聞く。シャーリーズ・セロンの女刑事とともに、息子の行方をさがす。
 そして息子の無残な焼死体を発見、息子の戦友たちにかけられた容疑、そして息子も含めた彼らがイラクで行った市民や捕虜への残虐行為が浮かび上がる。国を愛し、軍につとめた経験のある父親にはとても信じられない。

 ラストで星条旗を掲揚するシーンをぜひ見逃さないようにしてほしい。そこに映画の「告発」の意味が痛切に込められているからである。

■「さよなら。いつかわかること
 ジェームズ・C・ストラウス監督の第1回作「さよなら。いつかわかること」は、さらに静かな情感をたたえた作品。

 ジョン・キューザックの父親は8歳と12歳の幼い姉妹とともに、軍曹としてイラクに出征した妻=母親を待っている。ある朝、その母が戦死した知らせが届く。しかし彼は幼い姉妹に、その事実を告げることが出来ない。

 子どもを連れてフロリダのテーマパークへのドライブに行く。その途中で子どもの目を盗み自宅に電話をする。いまは亡き妻が吹き込んだ留守番電話のメッセージが響き、その声と対話する切ない悲しみが伝わる。そして旅の最後に、彼は子どもたちに真実を話す……。

 主人公の父親はイラク戦争に反対しているわけではない。戦争に批判的な弟と論争するくらい、むしろ保守的な男をも、どうしようもない悲しみでむち打つ戦争の痛み。この父親がはっきりと反戦の側に進み出るのは時間の問題である。

 これまでに試写を見た上記3本で痛感するのは、これらの作品のスタッフたちは明らかに商業主義に妥協せず、ひたすら戦争に向き合っていること。
 昨年11月から今年の2月にかけて、ハリウッドのシナリオ作家や映画俳優たちは自己のユニオンに結集して、新しい要求を貫徹した。その自己主張の強さと組織的行動力と、こうした一連の「反戦映画」の登場は無縁ではない。                                  


           山田和夫(映画人九条の会代表委員/映画評論家)(2008.3.21)
                     映画人九条の会mail No.27

 

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2008.04.09

●備忘録:映画「靖国」に政治圧力!

 映画『靖国』 予告編 

 

 

映画「靖国」に政治圧力!

 靖国神社をテーマにしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)が3月18日、一部映画館(新宿バルト9)で上映とりやめになったと報じられました。
 別の上映予定館である銀座シネパトスに対しても右翼の街宣車が押しかけ、「『靖国』の上映を中止しろ!」と叫んで、上映中止運動を展開しています。上映館が失われかねない異常事態です。

 ことの発端は、週刊新潮が「反日映画に政府出資の基金から助成金が出ているのはおかしい」旨の記事を書いたことでした。
 この記事が出たあと、自民党・稲田朋美議員らが映画「靖国」への公的助成が適切だったかどうかを検証するための「試写会」を、文化庁を通じて配給会社に「要請」しました。
 国会議員試写会は3月12日に行われましたが、与党議員らによる事前試写会の強要は、国政調査権を盾にした権力者の「検閲」の強要、公的支援への政治的介入のように思われてなりません。

 稲田議員は試写会後、「イデオロギー的メッセージを感じた」「ある種のイデオロギーをもった映画に公的基金から助成するのは相応しくない」旨の発言をし、芸術文化振興基金からの助成取り消しを求めた、とも伝えられています。

 これは、映画の表現の自由が侵されかねない重大問題です。映画が表現物として、作り手のある種の主張、社会へのメッセージ、イデオロギーを持つのは当然のことですが、それを理由に権力の中枢にいる国会議員らが公的助成取り消しを求めるなどということは、絶対に許されてはならないことです。
 もしこんなことがまかり通れば、社会的、政治的テーマとメッセージを持つ映画は、公的支援を受けられずに苦境に陥ってしまいます。ことは文化への公的支援の根幹にかかわる問題でもあります。
 また、右翼などの上映妨害運動が激化すれば、上映を取りやめる映画館がさらに増えるおそれもあります。映画の公開の場が奪われつつあることに強い憤りを感じます。

 映画「靖国」は、毎年8月15日に狂態を繰り返す靖国神社の様々な姿を映し出すとともに、靖国神社のご神体である日本刀「靖国刀」(昭和8年から終戦まで、8100振りの刀が靖国神社境内で作られた)を打つ老刀匠に迫り、アジア諸国への侵略戦争における日本刀の意味と役割をいっさいのナレーションなしに静かに描き出したものです。

 この映画について一水会顧問の鈴木邦男氏は「これは『愛日映画』だ!」と言い、自民党・島村宜伸議員(元・文部大臣)は「自虐的な歴史観に観客を無理やり引っ張り込むものではなかった」と語っています。

 このような映画に政治的な圧力がかけられ、公的支援の取り消しが求められ、上映中止運動まで起こるなどということは、まさに日本社会の異常さを示すものです。

 映演労連(映画演劇労働組合連合会)は3月19日、文化庁に対して説明と見解を求めるべく交渉を申し入れ、3月25日には自民党・稲田朋美議員に公的助成への政治的介入に抗議する「抗議要請文」を送付しました。
 なお現在、映画「靖国」の公式ホームページに乗っている上映予定館は、4月12日から東京の銀座シネパトス、シネマート六本木、渋谷Q-AXシネマだけです。

                     映画人九条の会Mail No.27 より(3月31日)

関連記事・リンク

映画『靖国 YASUKUNI』公式サイト

シナリオ作家協会など「靖国」上映中止に抗議 
                          (スポーツ報知 4月8日)

『靖国』が上映決定!支援ぞくぞくと…5月から全国で順次公開
                          (シネマトゥデイ 4月7日)

靖国」上映中止に懸念…民放報道局長らが声明
                          (スポーツ報知 4月7日)

「靖国」映画館はなぜ上映中止したか   (毎日新聞 4月7日)

『靖国』上映中止 自主規制の過ぎる怖さ (東京新聞 4月2日)

稲田朋美という政治家の言動を注視する  (天木直人のブログ 4月1日) 

映画「靖国」東京での上映中止 一部政治団体が働きかけの動き
                           (産経新聞 3月31日)

香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞(3月)

話題騒然の「靖国」映画が、ベルリン国際映画祭で大絶賛
                          (HOLLYWOOD CHANNNEL 2月19日)

米・サンダンス映画祭 ドキュメンタリー部門最優秀審査員賞を受賞
                      (08年1月)

釜山国際映画祭で上映       (07年10月)

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