2009.01.22

●ガザ戦争で逆転する善悪(田中宇)

田中宇の国際ニュース解説 2009年1月13日 http://tanakanews.com/ 
メルマガより転載

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★ガザ戦争で逆転する善悪
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 ガザ地区とイスラエルとの間は、フェンスと地雷原が設けられた境界線によって隔離されているが、ガザの北端にある境界線からイスラエル領内を2キロほど北上した場所に「ヤドモルデハイ」という、牧畜と養蜂を営んでいるイスラエル人のキブツ(農業共同体村落)がある。ヤド・モルデハイは、ヘブライ語で「モルデハイを記念する」という意味だ。モルデハイとは、第二次大戦中の1943年にワルシャワのゲットー(ユダヤ人居住区)で、強制収容所送りに反対してドイツ軍に立ち向かう蜂起の指導者だったユダヤ人青年、モルデハイ・アニーレビッツ(Mordechaj Anielewicz)のことである。

 モルデハイは、ワルシャワ・ゲットー蜂起の中で行方知れず(戦死または自害したと思われている)となり、蜂起を生き延びた5万人のユダヤ人の多くは、トレブリンカなど強制収容所に送られた。モルデハイは、ユダヤ人社会、特にシオニスト(イスラエル建国支持者)に英雄視され、1943年末にポーランド出身者が中心に作った上記のキブツに、モルデハイを記念する名前がつけられた。1948年にイスラエル国家が独立宣言した直後、第一次中東戦争が起こり、キブツの周辺もエジプト軍とイスラエル軍との戦場となったが、イスラエル軍はエジプト軍をガザに追い出し、キブツ周辺に住んでいた無数のパレスチナ人が難民としてガザに強制移住させられた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mordechaj_Anielewicz

 ヤドモルデハイのキブツの丘の上には、エジプト軍に空爆されて廃墟となった給水塔が、今も戦争記念碑として立っている。そのとなりには、手榴弾を右手に持つモルデハイ・アニーレビッツの銅像が立っている。この2つの記念碑が意味するところは「ユダヤ人は欧州のゲットーで蜂起してナチスと戦い、建国後はエジプトなどアラブ諸国と戦った末に国土を獲得した。この闘争精神を忘れるな」ということだろう。この精神は、イスラエル社会の全体に浸透している。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Yad-Mordechai-Anilevich-memorial-1.jpg
http://en.wikipedia.org/wiki/Yad_Mordechai

 イスラエル人は、ゲットーやナチスの強制収容所からの解放を目指して戦ってきたはずなのだが、今のイスラエルは「ナチスと戦う人々」から「ナチスそのもの」へと、「正義」から「悪」へと転換してしまっている。ワルシャワのゲットーから脱出してイスラエルを建国した人々は、もともと住んでいたパレスチナ人をガザに押し込め、ガザにゲットーを作ってしまった。

▼ガザで戦争犯罪を繰り返すイスラエル軍

 ガザ地区に侵攻したイスラエル軍は1月4日、ガザ市街のはずれにあるゼイトン(Zeitoun)の町を占領した。イスラエル軍は、住民の中のサモウニ一族(Samouni)の若者3人を尋問した後、この一族が利敵行為をしそうだと考えたらしく、一族の約110人の老若男女を、一つの建物に押し込め、出てこないよう命じた。そして翌朝、イスラエル空軍がこの建物を空爆し、30人が殺された。負傷者を救出するため、赤十字の救急車が現場に向かったが、イスラエル軍の攻撃を受け、4日後まで現場に行けなかった。国連の人権高等弁務官は、この事件に対する真相究明を開始すると表明した。国際赤十字は、救急車を攻撃し、空爆で負傷した市民を放置したイスラエルを非難した。
http://news.antiwar.com/2009/01/09/report-israel-forced-civilians-into-single-house-repeatedly-bombed-it/
http://www.nytimes.com/2009/01/06/world/middleeast/06scene.html

 またイスラエル軍は1月6日、ガザ北方のジャバリア難民キャンプで国連が運営していた女学校を空爆した。国連施設であるためイスラエルに空爆されるおそれが低いと考えられていた女学校には千人以上の住民が避難しており、3発の空爆で46人の避難民が殺された。国連はイスラエル軍に、女学校を含むすべての国連施設の詳細な場所を連絡してあったが、それでも空爆された。
http://www.geopoliticalmonitor.com/content/weekly_forecasts/2009-01-12/israels-losing-pr-war-january-12-2009/

 イスラエル軍は当初、女学校に潜んでいたハマスの部隊が攻撃してきたので反撃しただけだと釈明し、動画まで用意して発表したが、現場にいた国連要員が、ハマスの部隊を女学校に入れたことはないと反論した。発表された動画は、何年も前に他の学校を撮った映像だった。ウソがばれたイスラエルは「女学校の近くからハマスが攻撃してきたので反撃したが、爆弾の着地点が少しずれて女学校に当たってしまった」と言い直した。
http://news.antiwar.com/2009/01/11/israels-re-revised-story-attack-on-un-school-was-a-malfunction/

 イスラエルは、人道上問題がある白リン弾を今回ガザで使用した件でも、世界から非難されている。またイスラエルは「ハマスが停戦延長に応じなかったので侵攻せざるを得なくなった」と説明していたが、実は開戦2週間前の12月14日、ハマスがイスラエルに停戦延長を提案したのに、イスラエルは断っていたことが、和平交渉を仲裁する米カーター元大統領の陣営による調査によって判明した。カーターは「イスラエルが戦争を回避したければ、簡単にできたはずだ」と述べている。イスラエルのガザ侵攻は自衛ではないことが、しだいに確定しつつある。
http://atheonews.blogspot.com/2009/01/israel-rejected-hamas-cease-fire-offer.html
http://www.dailystar.com.lb/article.asp?edition_id=10&categ_id=2&article_id=98899

 1月上旬に相次いで起きた、これらの戦争犯罪的な事件や暴露を機に、世界の世論は、それまでの「ハマスなどイスラム主義武装勢力が悪であり、イスラ
エルは自衛しているだけ」というものから「イスラム主義勢力との戦いを口実
にガザの市民を大量殺害しているイスラエルは極悪だ」というものに転換した。

 これまでは親イスラエル的だった米国のマスコミは、イスラエル非難の記事
を載せ始めた。中東問題に関する極右言論で知られるウォールストリート・ジ
ャーナルでさえ、1月10日に「イスラエルは、ハマスによる小さな攻撃を口
実に大規模なガザ侵攻を行い、市民を無差別に攻撃した。これは自衛策として
正当化できるものではない。戦争犯罪など、重大な国際法違反である」とする
記事を出した。
http://online.wsj.com/article/SB123154826952369919.html

 1月10-11日には、西欧など世界中で、イスラエルの戦争犯罪を非難す
る市民のデモや集会が開かれ、いくつかの西欧諸都市では10万-20万人規
模の市民が集まった。ブッシュ政権への気遣いを口実に、ガザ侵攻について沈
黙してきた就任間近のオバマ新大統領に対しても、看過するなという世論の圧
力が強まった。「オバマは、11月のムンバイテロを非難したくせに、今回の
イスラエルの戦争犯罪には黙っている。ブッシュと同じだ」という批判も出た。
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-gaza-obama7-2009jan07,0,5174045.story

▼今のモルデハイはガザにいる

 1月7日、ローマ法王ベネディクト16世の側近であるレナート・マルティ
ーノ枢機卿(Renato Martino)が、イタリア語のネットメディア http://sussidiario.net/
によるインタビューの中で、ガザ戦争について「(イスラエルもハマスも)双
方とも身勝手だが、被害を受けるのは弱者の民衆(パレスチナ人)だ。今やガ
ザは、巨大な強制収容所のようなものになりつつある」と述べた。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/01/10/AR2009011001688_pf.html

 米国の サイモン・ウィゼンタール協会(かつてホロコーストに懐疑的な記
事を載せた文芸春秋社の雑誌「マルコポーロ」を潰した団体)などのシオニス
ト団体やイスラエル政府は、この発言に対し「ガザをナチスの収容所にたとえ
るとは言語道断だ」とローマ教会を非難した。しかし今や世界では、ガザが巨
大な強制収容所であることを否定する人の方が少ないだろう。シオニストの主
張に同調する人は、日に日に減っている。

 パレスチナ人をガザに閉じ込めるイスラエルは、以前はアパルトヘイト(黒
人隔離政策)をやっていた南アフリカにたとえられていたが、今ではその「悪
さ」はナチス級に格上げされつつある。今回のガザ侵攻によって、イスラエル
がガザに対して行っている行為は「アパルトヘイト並みの悪」から「ホロコー
スト並みの極悪」へと「昇格」した。

 このような視点で、ガザのすぐ外にあるイスラエルのヤドモルデハイ・キブ
ツの丘に立っている、ワルシャワ・ゲットー蜂起指導者モルデハイの銅像を見
ると、以前とは異なる意味を包含しているのがわかる。モルデハイ像の前に立
つと、2キロ離れたガザを攻撃するイスラエル軍が発射するミサイルの爆発音
や銃声が絶え間なく聞こえ、爆発の噴煙があちこちから上がるのが見える。
http://wire.antiwar.com/2009/01/10/shadow-of-warsaw-ghetto-over-gaza-israel-border/

 1943年には、手榴弾を持ってナチスに立ち向かう青年モルデハイは、ワ
ルシャワのユダヤ人ゲットーにいた。しかし、今のモルデハイは、ユダヤ人で
はない。ガザという名のゲットーに住むパレスチナ人である。立ち向かう相手
はナチスではなく「ナチス化」したイスラエルである。ハマスを支援してイス
ラエル軍と戦うガザの無数の青年たちこそ、現在のモルデハイである。

 今後もし、現在のモルデハイたち(ガザの青年たち)が「解放」されるとし
たら、その時には、以前のモルデハイ(イスラエル人)は、今の解放された状
態(イスラエルという国家を持つこと)を失い、シオニスト運動は破綻する可
能性が高い。

 もともとハマスは、イスラエルが支援して大きくした勢力である。米国は
90年代、中東和平実現のためにアラファトをチュニスからガザに戻したが、
和平を嫌うシオニスト右派は、アラファトに対抗して仲間割れを起こしうる勢力
をパレスチナ政界に作るため、ひそかにハマスを支援した。その後、ブッシュ
のテロ戦争によって反米イスラム主義が扇動され、ハマスは大きくなった。そ
の意味では、ハマスの青年がモルデハイになり、イスラエルがナチスになるの
は、米イスラエルのシオニストによる自業自得である。

▼悪の枢軸に入れるイスラエル

 イスラエルの人口の約15%は、イスラエル建国時や第三次中東戦争時に難
民化せず、自宅を離れずに居残ったアラブ系(パレスチナ人)で、彼らは参政
権を持つイスラエル国民である。ガザ侵攻後、アラブ系イスラエル人は反戦運
動を展開したが、これを受けてイスラエルの選挙管理委員会は1月12日、反
戦色があるアラブ系の2つの政党に対し、2月の総選挙での出馬を禁止する処
分を決定した。これにより、アラブ系国会議員の約半数が再出馬できなくなった。
http://news.antiwar.com/2009/01/12/israel-bans-arab-parties-from-election/

 イスラエルは従来、中東で唯一の民主主義国家であることを自慢にしてきた。
アラブ系政党は、連立与党への参加を誘われることはなかったが、議会内の勢
力としては認められていた。しかし今回の禁止処分によって、イスラエルの民
主主義は限定的な色彩を強めた。イスラエルは、イスラム聖職者組織の許可を
もらわないと立候補できないイランと大して違わない「準民主主義」の国家に
なった。

 おまけに、イランは核兵器を持っておらず、IAEAに加盟して査察も受け
ているのに対し、イスラエルは秘密裏に400発もの核弾頭を持ち、IAEA
にも加盟せず、査察要請も拒否している。多民族国家のイランは国内少数派に
対する人権侵害が多いが、イスラエルもパレスチナ人に対する人権侵害やガザ
での虐殺など、人権侵害の面でもイランに引けを取らない。ブッシュ政権はイ
ランや北朝鮮を「悪の枢軸」に指定したが、イスラエルは十分、悪の枢軸に加
盟できる豊富な「悪さ」を蓄積している。

▼停戦は困難、イランとも戦争か?

 イスラエルが早期にガザ戦争を終わらせられれば、イスラエルの悪さは、ホ
ロコースト級からアパルトヘイト級に格下げできるかもしれない。しかし、エ
ジプトが仲裁し、イスラエルが受諾していた最新の停戦案を、ハマスは拒否す
る決定を1月11日に下した。ハマスは、イスラエルとエジプトによって閉じ
込められているガザの境界を開放することを停戦受諾の条件としていたが、イ
スラエルもエジプトも拒否しているからだ。停戦は実現しそうもない。
http://www.debka.com/headline.php?hid=5844

 イスラエル軍は、数日中に停戦が実現しない場合、ハマスを壊滅させるまで
戦争を続けねばならなくなると表明している。今のところイスラエル軍は、ガ
ザ地区の北部を占めるガザ市街に入っておらず、ガザ市街を包囲する布陣だが、
このままだと近いうちにイスラエル軍はガザ市街地の中に侵攻し、市街戦が始
まる。死者が急増する。

 今後、戦争が長引くほど、イスラエルの戦争犯罪は増える。イスラエルは、
北方のレバノン南部のイスラム主義武装勢力ヒズボラ(シーア派)とも開戦す
る可能性が強まる。ヒズボラは慎重な態度をとっているが、イスラエル軍はレ
バノン上空で戦闘機を低空飛行するなど、挑発行為を繰り返している。イスラ
エルは、ガザとレバノンの両方で戦争するという自滅策を考えているかのよう
に見える。ヒズボラと開戦すると、イランやシリアとも開戦する中東大戦争が
近くなる。オバマ陣営の顧問をしている米国のペリー元国防長官は1月8日に
「今年中にイスラエルがイランに戦争を仕掛ける危機が起きるだろう」と発言した。
http://www.newsmax.com/newsfront/obama_nuclear_challenges/2009/01/08/169238.html

 イランが戦争になると、今は下落している原油価格が再高騰する。イスラエ
ルがイランを攻撃すると、報復措置としてイラクの親イラン派のゲリラがイラ
ク駐留米軍にゲリラ戦を仕掛け、米軍はクウェートからバグダッドに至る唯一
の補給路をゲリラに奪われて壊滅し、米国は地上軍(陸軍と海兵隊)の大半を
失い、世界のパワーバランスが塗り替えられるだろうと、米国の軍事専門家ウ
ィリアム・リンドが1月9日の記事で書いている。
http://www.upi.com/Security_Industry/2009/01/09/Attack_on_Iran_would_threaten_US_army_in_Iraq/UPI-14521231534545/

 中東での善悪関係が転換する中で、米政府は、ブッシュ政権の「イスラム=
悪、イスラエル=善」を脱却し、オバマ政権は「喧嘩両成敗、米国による中立
指向の仲裁」へと転換しようとしている。ガザ戦争についてオバマができる限
り沈黙しようと考えてきたのは、ガザ侵攻が長引くほど、イスラエルは世界か
ら悪者とみなされる傾向が強まり、中立的な仲裁がやりやすくなるからかもし
れない。イスラエルが米政界を牛耳っている現状から考えると、早い段階で何
か表明するとしたら「イスラエル支持」を表明せざるを得なかった。米議会は
いまだに強くイスラエルを支持しているが、米国外の世界の世論に引きずられ
るかたちをとれば、以前よりは中立な態度をとりやすくなっいる。

 ガザ戦争による善悪転換が引き起こしそうなことは、ほかにもある。それは、
シオニストが「ホロコースト」(ナチスによるユダヤ人虐殺)を誇張すること
で世界の世論を引きつけ、国際政治力を拡大維持してきたプロパガンダ戦略が
弱まることだ。ホロコーストの事実性に対して疑問を持つことは、依然として
世界的に禁じられており、シオニストによるホロコースト誇張戦略自体はまだ
破綻していない。だが、すでにイスラエルは今回のガザ戦争によってナチス並
みの「極悪者」になりつつある。イスラエルの「被害者としての強み」は「加
害者としての弱み」によって打ち消される傾向が強まる。
http://tanakanews.com/f1220holocaust.htm


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/090113Gaza.htm


●関連記事

ガザ・中東大戦争の瀬戸際
http://tanakanews.com/090103Gaza.htm

オバマに贈られる中東大戦争
http://tanakanews.com/081228Gaza.htm

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2009.01.12

●大槻教授【オバマに幻想は禁物】の記事内容って

【オバマに幻想は禁物】(大槻義彦のページ)

下記引用

ところがここに我らがオバマ次期大統領の登場です。現在、ハワイで静養中のこの人、こうコメントしているのです。
「我が家にロケット弾が打ち込まれ、娘が怪我をしたら、そのままにはできない。」
と、イスラエルのガザ爆撃を支持したのです。

信じられないコメントですね。
これが4日間で400人も殺す報復の正当化なのですから、呆れるやら驚くやら。

この大槻教授の書き方だと、ハワイ静養中のオバマ氏がガザ爆撃に対して「我が家にロケット弾が打ち込まれ、娘が怪我をしたら、そのままにはできない。」とイスラエル支持の発言をした、と読めてしまうのですが。

「我が家にロケット弾が打ち込まれ、娘が怪我をしたら、そのままにはできない。」
このオバマ氏の発言は、08年7月に選挙キャンペーンでイスラエルを訪れた時、ガザに近いスデロットの町でのコメントです。

イスラエル国防相エフド・バラクは、08年12月29日、ガザ攻撃を開始したことの自己正当化に、08年7月のイスラエル訪問時のオバマの発言「もしも娘たち二人が寝ている間にロケット弾が自宅めがけて発射されるようなら、それを防ぐためできることは何でもするとオバマは言った」と引用したのです。

参考
オバマ、ガザに関する沈黙を非難される(マスコミに載らない海外記事)

イスラエル国防相が攻撃を正当化、オバマ氏のコメントも引き合いに(AFP)

ちなみに、この時、オバマ氏はイスラエルと同時にパレスチナ自治区も訪れアッバス自治政府議長とも会談しています。

参考
オバマ氏、イスラエル大統領・パレスチナ自治政府議長と会談(08年7月24日 読売新聞)



オバマ氏のライバルだったマケイン氏はイスラエルは訪れてもパレスチナ自治区は訪れていません。

さて、大槻教授は前述の引用に続いて、下記のようにコメントしています。

理由なくしてパレスチナがイスラエルにロケットを打ったのではないのです。個人の家を理由なくして攻撃し、その家の娘に怪我をさせた、という類の個人例に政治・文化の対立を同列化してしまって、イスラエルの戦争を支持しているオバマ次期大統領。暗澹たる思いです。

故意にか、もしくは迂闊にか、オバマ氏の発言をガザ爆撃開始後にそれを肯定した発言と思い、イスラエルの戦争を支持しているオバマ次期大統領に暗澹たる思いを抱いて【オバマに幻想は禁物】とした大槻教授。

テレビで拝見するにいつも論理的、科学的に論証する教授にしてはオバマ氏の発言の引用の仕方が杜撰だなと感じてしまったのですが、ただ、【オバマに幻想は禁物】という教授の主旨には、実は私も90%は同感せざるを得ないような、同様の不安を感じているのです。

というのも、オバマ氏は2008年6月4日、親イスラエル・ロビー団体(AIPAC:アメリカ・イスラエル広報委員会)の年次総会でかなりイスラエル寄りの演説をしています。

参考
バラク・オバマ民主党大統領候補のAIPAC演説

イスラエル・ロビーの金と票は過去から現在まで、アメリカの選挙に大きな影響を与えています。

07年、ジミー・カーター元大統領は「なぜ、どの上下両院議員もイスラエルとパレスチナとの間で中立な立場をとり、交渉によって和平を達成させようと言わない雰囲気になっているのか」と発言した。

 AIPACの会計責任者を務めたモリス・アミタイは、カーター元大統領の疑問に答える形で次のように述べた。

 「イスラエルの保守政権に対して反対の政策を支持する立場をとると解釈されることは、再選を目指す議員にとって政治的に自殺することなのです」
          (『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』土井敏邦より)

AIPACでのオバマ氏の演説がイスラエル・ロビーに対しての建前であるのか本音であるのか、それは大統領就任後の彼を見てみないとわかりません。

当ブログの記事「なぜアメリカは戦争を続けるのか(抜粋)」の中でリチャード・パール国防総省顧問は 「世界は変わりました。もう前の状態には戻れません。アメリカの政策は一握りの人間に牛耳られているが、その連中が政権から去ればすぐに元通りになるだろうという意見をよく耳にします。しかし、それは間違いです。なぜなら、人間は変わるからです。」 と述べている。

だとしたら、建前がいつの間にか本音に Change ってこともありうる。

オバマ氏の選挙キャンペーン中のイスラエル寄りの発言がどうかイスラエル・ロビーに向けての建前であって欲しい。

オバマ氏にはパレスチナとイスラエルの間にあって、中立であって欲しい。

オバマ氏の「変化」が中東問題においては、幻想ではなかったと確信させて欲しい。

これ以上、子供たちの血が彼の地に流れませんように……。

と諸々祈る思いです。

参考:イスラエル・ロビー関連

米新大統領の中東政策の行方は?(2)(土井敏邦Webコラム)
(『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』の要約から[1])

米新大統領の中東政策の行方は?(3)(土井敏邦Webコラム)
(『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』の要約から[2])

米新大統領の中東政策の行方は?(4)(土井敏邦Webコラム)
(『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』の要約から[3])

パレスチナ/オバマとイスラエル(ピープルズニュース)

イスラエルに歯向かえる米国大統領はいない(バルセロナより愛をこめて)
   P.C.ロバーツ:Counter Punch誌



参考:ガザ侵攻関連

イスラエルの嘘プロパガンダ・マシン全開(益岡賢のページ)
   
スチュアート・リトルウッド

イスラエルのガザ攻撃をめぐる嘘トップ・ファイブ(益岡賢のページ)
   ジェレミー・R・ハモンド

アラブの人たちはどうして私たちをこんなにも憎むのか?
   ──私たちはその答えを知っているはずだ(パレスチナ情報センター) 
   ロバート・フィスク:インディペンデント紙

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2009.01.11

●ホロコーストにはホロコーストを?!

8003

  図http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2556480/3670497
  イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)への攻撃ポイント
  および被害状況を示したもの。(c)AFP

 連日報道されるガザの現実に言葉もない……
 
 ホロコースト、ジェノサイド、エスニック・クレンジング(民族浄化)……これらの言葉によって連想させられるユダヤ人の悲惨な歴史。
 被害者であったはずのユダヤ人が、今は加害者に……。

 ガザ攻撃14日目 「集めておいて、一度に殺す」(P-navi info)

  なぜ……?!



pen イスラエル人(ユダヤ人)とは

 
イスラエル人は、旧約聖書では アブラハム、イサク、ヤコブと続く系譜の子孫で、ヤコブ(彼の別名がイスラエル)の12人の息子たちを祖とする『12部族』から成り立っているとされている。
 先祖のアブラハムが、特別神に対し敬虔であったため、神から「その子孫を星のように増やす」と“約束”され、また、 「『乳と蜜の流れるカナンの地(現在のイスラエル国中部一帯とヨルダン川西岸地区)』という豊かな土地を与える」とも“約束”された(『創世記』)。

 この「神に対し敬虔・忠実」であることによって神から選ばれ(旧約聖書中、神が「我が民」と呼ぶのはイスラエル人のこと)神からカナンの土地を与えると『約束』されたことが、イスラエル民族がカナン(地理学的には『パレスチナ』)を自分たちの領土 とする根拠となっている。

 が、“神から与えられた土地”のはずなのに、ヤコブ(イスラエル)の12人の息子たちは、カナン地方の不作もあって、早くもその息子たちの代に、皆 豊かなエジプトへ移住してしまった。
 その後400年間、12人の息子たちの子孫(12部族)はカナンに帰ることなく、豊かなエジプト国内で爆発的に人口を増やす。特にナイル河デルタ地帯のゴセンという地域は、イスラエル人が人口のほとんどを占めるまでになっていた。
 当時エジプトは新王国時代(第18~19王朝)に入っていたが、エジプト王家は、増え過ぎ かつよく働き、エジプトの多神教を拒むイスラエル人を疎ましく思い始め、やがて露骨な差別政策を採り始めた。

 イスラエル人たちは、モーゼの指導の下、神の力によってエジプトにさんざ災いをもたらし、ファラオにも抵抗した(過越の祭りの始まり)。
 そしてついに、住みづらくなったエジプトを脱出したが、旅の途中で偶像崇拝などを行って神の怒りを買い、罰としてその後、シナイ半島の荒野を40年間もさまようことになる。

 エジプトを脱出し、シナイ山で『十戒』を授かったものの、イスラエル人たちは数十年間、シナイ半島の荒野をさまよった(『出エジプト記』)。
 ようやく“先祖アブラハムが神から約束された土地”「カナンの地」を目にしたそのとき、モーゼはこの地に入ることなく、息を引き取った。

 モーゼの跡を継いだヨシュアが全イスラエル人(12部族・約60万人)を率い、最初に攻略したカナン地方の街が、エリコ(ヨルダン川西岸地区)だった(『ヨシュア記』)。
   
 イスラエル民族が長い間エジプトに住み、留守にしていた400年の間に、本籍地?であるカナンの地は、すっかり他の民族の居住地となっていたのだった(なんせ400年も留守にしていたのだから、仕方がない…)。

 だが、イスラエル民族のこの土地についての執着心はとても強かった
 次々と異民族の街を攻略し、やがてカナン全土はイスラエル人のものとなる(もちろんこれで安定はせず、周囲の異民族、ペリシテ人、アンモン人、ミデアン人などとの小競合いは延々と続く)。
 旧約聖書では、「神はイスラエル人たちの信仰を試すために、約束の地に異民族を置いたままにした」と説明されている。

 イスラエル人(ユダヤ人)は、19世紀末~20世紀後半にかけてのパレスチナ移住、イスラエル建国に伴う、先住(?)民族のアラブ・パレスチナ人や周辺アラブ人との抗争(中東戦争)… と同じようなことを、古代にもしていたのだ。

 紀元1世紀、ローマ軍に徹底抗戦した一部のユダヤ人たちがいたが、彼らもついに敗れ、マサダの要塞(砦)で、婦女子も含めて全滅した。

 この後、ユダヤ人たちの本格的なディアスポーラ(離散)が始まる。
 ヨーロッパ、中東、アフリカ各地に、ユダヤ人は拡散していったが、どこへ行っても、彼らイスラエル人の言語であるヘブライ語で書かれた『旧約聖書』を手放さず(註:『新約聖書』の方は、ほとんどがギリシャ語で書かれていた)、その『選民思想(神がイスラエル人を選んだという思想)』ゆえか、民族的アイデンティティを2000年間も保ち続けた。

 ユダヤ人たちはヨーロッパでも、集まって『ゲットー』といわれる居住区に住んだりした。
 キリスト教のヨーロッパ諸国では、「ユダヤの民衆がイエス・キリストを死に追いやった」と解釈されていたため、差別・迫害を受けることになる。

 ユダヤ人たちの団結力が強いこと、自分たちこそが神に選ばれたという『選民思想』を持っていたこと、また、商売が上手な人が多く『ベニスの商人』のような強欲なイメージを植え付けられていたことなどが、その差別(や妬み)を助長していった(実際、金融業はユダヤ人が握っていた と言われている)。

  http://www.tazawa-jp.com/mid-east/israel.htm より





pen イスラエルとパレスチナの歴史


1947年以前、パレスチナの地にイスラエルという国は存在していなかった。

1947年    国連総会、「ユダヤ人国家」と「アラブ人国家」に分割する
          決議案が採択
             この時の面積比は53:47
  
   この裏側には、イギリスのダブルブッキングがあった。
   第1次世界大戦でオスマントルコと戦ったイギリスが、アラブに協力を求める
   ためにアラブの盟主に独立を約束し、その一方で、戦費を出してくれたユダ
   ヤ人に対しても、郷土建設を支持
してしまっていた。

   そして、第2次世界大戦で、ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)
   が起きた。国連としても「流浪の民」ユダヤ人による国家建設を認める方向に
   動いた。
   裏にいたのはアメリカである。国内にユダヤ人を多く抱えていたからだ。
   この時も多額の金銭が使われた。

1948年 アラブ人の地に、そこに住んでいた人々を押しのける形で突然、
       ユダヤ教国家が誕生

      追い出された人々(アラブ人)は難民化し、周辺アラブ諸国は、建国した
             ばかりのイスラエルに戦いを挑んだ。第一次中東戦争(1948年)だ。
      しかし、必死の防戦をするイスラエルに軍配が上がった。
      
             その頃は、ガザ地区もヨルダン川西岸もイスラエルの領土には含まれて
      いない。
      それでも、パレスチナ全体の77%をイスラエルが押さえた

1956年 第二次中東戦争
1967年 第三次中東戦争

      戦争は二次、三次と続き、イスラエルは圧倒的軍事力を背景に、エジプト
      のシナイ半島、ガザ地区、ヨルダン統治下にあったヨルダン川西岸、
      エルサレムの東側、レバノンとシリアにまたがるゴラン高原を占領し、
      領土を拡大した。

1973年 第四次中東戦争 

1979年 エジプトと平和条約を締結。

1993年 パレスチナ解放機構(PLO)と相互承認を行い、暫定自治原則宣言
      (オスロ合意)に署名。

1994年 ヨルダンと平和条約を締結。

      現在は、シナイ半島をエジプトに返し、ガザ地区とヨルダン川西岸の
           一部にパレスチナ自治区を認めている。

      
      しかし、認められたはずのヨルダン川西岸を詳細にみると、自治区といっ
      ても土地が細かく分断され、その間にイスラエル人の入植地が散在
          
している。
      
      さらにコンクリートの壁で囲ってパレスチナ人を閉じこめ、行き来も
           ままならない状況が作られている。

      
      このまま国境が固定されれば、イスラエル88%、パレスチナ12%の
           領土配分になる。

      すでに国連決議とは大きな開きが生まれている。

      自治政府とイスラエル政府との間には、互いの存在を認める合意がかわ
      されている(1993年のオスロ合意)が、実行のプロセスがきちんと守られ
      ないことに民衆はイライラを募らせている。
      そうした民衆の思いに応えたのが、イスラム原理主義のハマスだ。

      ハマスは、イスラエルの存在そのものを否定し、パレスチナ人による
      パレスチナ国家の建設を掲げている。

      しかし、激しい武力闘争だけでなく、学校や病院など福祉施設を人々に
      提供して、幅広い支持を集めている。

      同じ原理主義組織はレバノンにもある。ヒズボラだ。
      ロケット弾をハマスが南から打ち込めば、北からもこれに呼応してロケット
      弾が打ち込まれる。

      パレスチナ問題の解決は、幻視すら出来ない。
      オスロ合意で「相互に相手を承認する」としたならば、もっとイスラエルは
      パレスチナに譲らなければならない。
      
      占有率53%を88%に拡大しているのはいかにも不合理。

      自治区をヨルダン川西岸とガザ地区に分断しているのも異常だ。

      互いの聖地・エルサレムを共同管理、あるいは国連管理下に置き、
      領土を50:50に南北でスパッと分けるような思い切った方法を取らない
      と、この問題は解決しない。たくさんの血がまだ流れる。

 イスラエル88%、パレスチナ12%の不合理(視点・森啓次郎エッセイ)より

     Lipen1x_

つまり、イスラエル人(ユダヤ人)は約2000年前の旧約聖書に書かれている『選民思想(神がイスラエル人を選んだという思想)』を信じ、さらに旧約聖書の「『乳と蜜の流れるカナンの地(パレスチナ)』という豊かな土地を与える」との“約束”を信じ、「神はイスラエル人たちの信仰を試すために、約束の地に異民族を置いたままにした」と信じているために異民族(パレスチナ人、アラブ人)を迫害し、追い出そうとしているのか?


イスラエルのイラン・パペ(Ilan Pappe)というユダヤ人の歴史学者は、現イスラエルのシオニズムを、いつの時代であれ容認し難い人種差別であり、「エスニック・クレンジング(民族浄化)」と断じています。

  パペから学ぶ歴史認識と多文化共生

 
森啓次郎氏がエッセイで述べているように、また、イラン・パペ氏が主張するように、一刻も早く一つの土地で二民族が共生できる日が来ますよう。

子供たちの血がこれ以上流されないよう……。

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2009.01.06

●ガザ・中東大戦争の瀬戸際(田中宇)

メルマガ:田中宇の国際ニュース解説 2009年1月3日 より転載

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★ガザ・中東大戦争の瀬戸際
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 イスラエル軍が、ガザに地上軍侵攻しそうな感じになっている。イスラエル政府は閣議でイスラエル軍のガザへの地上軍侵攻を了承した。ガザのハマスは、早く侵攻してこいといわんばかりに、ヘブライ語でイスラエルを挑発する発表を繰り返している。
http://www.debka.com/headline.php?hid=5817

 イスラエルは12月27日からガザを空爆しているが、すでにガザ地区内でイスラエルが空爆の対象としていたハマスの拠点に対する空爆はほとんど終わり、もう空爆対象がない状態になっている。イスラエル軍はハマス幹部の居宅を次々に空爆している。イスラエルの世論調査では、85%が戦争継続に賛成している。
http://news.antiwar.com/2009/01/01/at-least-425-killed-in-gaza-as-israel-running-out-of-things-to-bomb/
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/middle_east/article5434559.ece

 イスラエル側では、ガザに近い地域の病院に対し、患者を他の地域の病院に避難させるよう指示が出た。これは、ガザの近くの病院のベッドを空けておき、これからガザに侵攻して負傷するイスラエル地上軍兵士を、これらの病院に搬送するためであると、イスラエル軍が認めている。ガザに残っていた400人の外国人も、1月2日に、ガザからイスラエルに出ることが許された。これも、侵攻準備の一環と考えられている。
http://news.antiwar.com/2009/01/01/ground-invasion-of-the-gaza-strip-appears-imminent/

 もともと、今回のガザ戦争を誘発したのは、ハマスである。ハマスは、12月19日にイスラエルとの停戦協定が切れた後、イスラエルへの短距離ミサイルの発射を再開し、イスラエルを苛立たせた。ハマスは、イスラエル地上軍をガザに侵攻させ、05年のガザ撤退以来やめていたガザに対する軍事占領を復活させた後、占領軍に対しゲリラ戦を展開して、イスラエルを占領の泥沼に引っ張り込むつもりだろうと、イスラエル軍の諜報機関であるモサド系の情報サイト「デブカ・ファイル」が書いている。
http://www.debka.com/headline.php?hid=5815

 同サイトによると、すでにハマスの軍事部隊は、一般市民のふりをしてガザ地区内の一般のアパートに分散して入居し、ゲリラ戦の準備をしている。またイスラエル軍は、地上軍侵攻してガザ地区の全体を占領した後、ガザを5つのブロックに分割し、パレスチナ人が相互に行き来できないようにして占領すると予測している。加えてイスラエル軍は、ガザとエジプトの間の13キロの国境線沿いの「フィラデルフィア・ルート」と呼ばれる細長い地域(幅は数百メートル)を再占領する予定だという。この地域は2005年にイスラエルの前
シャロン政権がガザから撤退した際、イスラエル軍からエジプト軍へと、管轄が委譲されている。
http://www.jewishvirtuallibrary.org/jsource/History/gazasettle_map.html

▼停戦協定を破って空爆開始したイスラエル

 国際社会では、イスラエルとハマスを停戦させる努力が行われている。来週には、フランスのサルコジ大統領がイスラエルを訪問する。しかし、停戦が実現する可能性は非常に低い。
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5j77SAUqvhQio6Hupkw4M4grDmiQQD95DULO80

 なぜなら、イスラエルが12月27日にガザを空爆し始めた時、イスラエルは前日にハマスと結んでいた48時間の停戦協定を破って空爆したからである。
ハマスは、停戦期間中だったのでイスラエルの空爆を予測しておらず、無防備に集会を開いており、そこを空爆されて多くの死者が出た。空爆開始時、イスラエル軍の死者が異例に少なかったが、これはハマスが停戦の態勢で無防備だったからだろう。エジプトも、事前にイスラエルの空爆予定を知っていたが、自国のイスラム過激派の分派であるハマスに潰れてほしいと思っていたため、ハマスには何も伝えずにだました。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1051211.html
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-3646178,00.html

 ハマスは、イスラエルとの停戦協定を信じたばかりに、だまし討ちの空爆を受けた。いったんイスラエルにだまされた以上、ハマスはもう簡単には停戦に応じないだろう。

▼リブニとバラクの政争

 なぜイスラエルは、わざわざ停戦協定を破って空爆を開始したのか。私の読みは「バラクとリブニの政争」である。イスラエルの国防大臣のバラクは好戦派で、労働党の党首である。外務大臣のリブニは戦争を抑止したい外交派で、カディマの党首である。イスラエルは2月10日に総選挙があるが、バラクの労働党は劣勢だった。ガザ戦争の開戦によって、リブニ支持を食うかたちでバラク支持が急増したと指摘されている。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1051210.html

 バラクは、ガザで徹底的に戦争をしてハマスをやり込める戦略を主張している。リブニは早期に外交交渉に持ち込み、欧米など国際社会を巻き込みつつ停戦すべきだと主張している。だが、空爆開始時にイスラエルが停戦協定を破っているので、交渉しても停戦できない。バラクは、リブニの戦略を破綻させるために、わざわざ停戦協定を破って開戦したと推察できる。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050437.html

 バラクが今回、このような策略をやったのは、おそらく2006年夏のレバノンのヒズボラとの戦争の教訓からである。レバノン戦争当時も、バラクが国防相、リブニが外相だった。バラクは戦争拡大を希求したが、レバノンだけでなくシリアと開戦したら大戦争に発展して大変なことになるというリブニの主張が通り、開戦から1カ月後に国連の仲裁で停戦した。イスラエルは国家存続できたが、イスラエルと戦って負けなかったヒズボラは中東全域で英雄視された。
http://tanakanews.com/g0822israel.htm

 イスラエルは、シリアやイランと戦争になったら終わりである。バラクは、イスラエルを自滅させようとしている米国のネオコンやチェイニー副大統領ら「隠れ多極主義者」の一派であり、リブニは彼らの謀略によるイスラエルの自滅を防ごうとしていると、私には見える。

 もともと、米国の策略によってイスラエルが潰されかけていることを察知したのはシャロン前首相で、02年に西岸との境界に隔離壁を建設する計画を開始し、05年秋にはガザからイスラエル軍と入植者を撤退させ、パレスチナとの間を隔離し、イスラエルが戦争に巻き込まれるのを防ごうとした。だが、シャロンは06年初めに脳卒中で倒れ(暗殺?)今も植物人間である。リブニは、このシャロンが自分の後継者にするため、90年代末にモサド要員から引っ張り上げて選挙に出馬させ、政治家として育てた人材である。
http://en.wikipedia.org/wiki/Tzipi_Livni
http://tanakanews.com/d0113israel.htm

 一方、バラクの方はイスラエル軍のエリート特殊部隊(サエレト・マトカル)の出身で、1976年のエンテベ空港でのパレスチナゲリラによるハイジャック機からの救出作戦の成功で一躍有名になり、同じ部隊にいたネタニヤフ(リクード党首)と並ぶ、イスラエルの有力政治家となった。しかしエンテベ作戦は、モサドがゲリラを扇動してハイジャックを挙行させた、やらせ事件だったことが暴露されている。
http://tanakanews.com/071009israel.htm

 もしかすると、労働党とリクードというイスラエルの伝統的な二大政党を率いているバラクとネタニヤフは、イスラエル愛国主義の象徴のふりをして実は正反対で、本当は両人とも、過激なネオコンや入植者集団と同じ「好戦的な戦略をやりすぎてイスラエルを自滅させる」という隠れた戦略を持った「ロスチャイルドのスパイ」なのかもしれない。
http://tanakanews.com/f0622israel.htm

 ハマスを武力で潰すことはできない。ガザの150万人のパレスチナ人は、イスラエルに封じ込められている限り、ハマスと一心同体であり、ハマスの現幹部を殺害しても、別の人々が幹部になるだけだ。ガザをエジプトや国際社会に押しつけるシャロンやリブニのやり方が妥当だ。ハマスを武力で潰すべきだと言っているバラクやネタニヤフには、隠された意図があると疑った方がよい。

▼焦点はラファ国境の開放

 イスラエル地上軍がガザ侵攻しそうな中、焦点の一つは、ガザとエジプトとの間のラファ国境が閉鎖されたままであるかどうかという点になっている。ハマスはイスラエルから経済制裁を受けていた08年1月、この国境の壁を破壊し、ガザの人々が自由にエジプトに行けるようにした。エジプト軍が国境の壁を修復し、自由往来は1週間で終わったが、今回の戦争で、再びハマスはエジプトに国境を開放せよと求めている。エジプトのムバラク政権は、ハマスの兄貴分に当たる野党のイスラム同胞団を活気づけたくないので、ラファ国境の開放を拒否している。
http://tanakanews.com/080125Gaza.htm

 イスラエル軍が地上侵攻したら、ガザとエジプトの国境線にあるフィラデルフィア・ルートをエジプトから奪還するだろう。このルートの警備は、もともとイスラエルのシャロン前政権が、05年のガザ撤退の際にエジプトに押しつけたものだ。エジプトは今回、イスラエル軍が来たらルートから自国軍を引き揚げ、奪還を喜んで黙認するだろう。ガザのエジプト側を封じ込めておく責任は、エジプトからイスラエルに戻る。

 エジプトはガザと同じアラブ人なので、ハマスがエジプトに「ラファ国境を開けろ」と求めて騒げば、同胞であるエジプト国内の世論が同調し、エジプト政府も何らかの対応をせざるを得ず、08年1月にハマスがガザの壁を破壊したときも黙認した。だが相手がイスラエルだと、同情や黙認など全くなく、ガザの壁を壊そうとする動きは銃弾乱射で容赦なく阻止される。イスラエルがフィラデルフィア・ルートを奪還すると、ガザは再びイスラエルによって完全に封印される。ハマスが再びラファの壁を壊し、ガザとエジプトをつなげる挙に出るなら、イスラエル地上軍によるガザ再占領が完了する前にやらねばならない。

 もしイスラエル地上軍のガザ侵攻が展開している間に、ラファ国境の壁がハマスによって破壊され、エジプト軍がハマスとの交戦を避け、ガザとエジプトがつながった場合、ガザ戦争はエジプトに波及する。エジプトのイスラム主義者の義勇軍が武器を持ってガザに流入する事態になりうる。米国傀儡のエジプト政府は、イスラエルに宣戦布告せず、優柔不断な態度をとるだろうが、国民は政府よりイスラム同胞団を支持する傾向を強め、エジプトは混乱に陥る。他のアラブ諸国やイランから、エジプトにイスラム主義の義勇軍が押し寄せるかもしれない。事態は中東大戦争に近づく。

 逆に、ハマスの行動がイスラエル軍やエジプト軍に抑止され、ラファ国境が開かないまま、イスラエル軍がフィラデルフィア・ルートを再占領し、ガザを分割占領した場合、ガザはシャロンのガザ撤退前の状況に戻る。ガザ戦争が中東大戦争に発展する可能性は減るが、ガザの諸問題はすべてイスラエルの責任になる状況が復活する。ガザをエジプトと、西岸をヨルダンとつなげ、アラブ諸国にパレスチナの面倒をみさせ、イスラエルは隔離壁を作ってパレスチナと縁を切るという、シャロン前首相からオルメルト現首相に引き継がれた問題解決策は破綻する。

 このシャロン案の前にあったのは、西岸とガザにPLO主流派(ファタハ)による親米・親イスラエルのパレスチナ国家を創建するという2国式(オスロ合意型)の中東和平計画であるが、もはやそれに戻ることも無理だ。ガザは反米反イスラエルのハマスが抑えており、西岸のファタハの人気が凋落しているからだ。和平の行き詰まりの中、ガザと西岸のパレスチナ人がイスラエルに苦しめられるアパルトヘイト的な状況だけが残る。

 前から書いているが、ガザの戦争が中東大戦争に発展するかどうかは、今後の世界全体にとって非常に重要だ。中東大戦争になれば、原油価格の再高騰でインフレが再燃し、ドル崩壊の引き金になりかねない。中東大戦争にならなければ、原油反騰は限定的となり、イランやロシア、ベネズエラといった反米諸国の窮乏が拡大し、世界の多極化に歯止めがかかる。対米従属を続けたい日本国としては、中東大戦争が避けられるよう、神仏に祈るしかない。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/090103Gaza.htm


★関連記事

オバマに贈られる中東大戦争
http://tanakanews.com/081228Gaza.htm

パレスチナ見聞録(1)ガザ地区
http://tanakanews.com/b0115gaza.htm

ガザ訪問記(上)
http://tanakanews.com/d1020gaza1.htm

ガザ訪問記(下)
http://tanakanews.com/d1020gaza2.htm

イスラエル英雄伝:ネタニヤフとバラク
http://tanakanews.com/990607israel.htm

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2009.01.05

●オバマに贈られる中東大戦争(田中宇)

昨年12月27日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ全域でハマスの拠点を標的とした大規模な空爆を開始したとのニュースを聞いた時、思わず「悪魔がまた中東に降り立った」と思ってしまった。

悪魔=アメリカの軍産複合体・ネオコン

世界規模の不況の中にあって、どこかで大きな戦争を仕掛けるのではないかと思っていたが、やっぱりって感じだ。

以下、私の最も信頼するフリージャーナリスト・田中宇氏のメルマガから転載。

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★オバマに贈られる中東大戦争
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 12月27日、イスラエル軍がパレスチナのガザ地区を空爆し、200人以上の死者が出た。空爆は、イスラエルがエジプト領だったガザを乗っ取った第三次中東戦争(1967年)以来の大規模なものだ。イスラエルのバラク国防相は、空爆だけでなく、近いうちに地上軍侵攻も行わざるを得ないだろうと表明している。イスラエル軍は、戦闘の拡大と長期化を準備している。今回のガザ戦争は、短期間に終わりそうもない。
http://www.khabrein.info/index.php?option=com_content&task=view&id=18839&Itemid=57
http://wire.antiwar.com/2008/12/27/snap-analysis-israel-hamas-conflict-could-escalate/

 ハマスは「第3インティファーダ」の民衆蜂起の開始を、パレスチナ人に呼びかけた。パレスチナのとなりのヨルダン(国民の6割がパレスチナ人)では、議員30人が同国に駐在するイスラエル大使の追放を政府に要求した。アラブ諸国の中でイスラエルと国交があるのはヨルダンとエジプトのみだが、アラブとイスラエルの関係も、ガザ開戦によって急速に険悪化しそうだ。イスラム世界では、マスコミが今回のイスラエル軍のガザ侵攻を「ガザ虐殺」と呼んで強く非難しており、反米反イスラエルのイスラム主義がさらに扇動されるだろう。
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5ibSBvnCkEIdLQVlh_5MJui2uEGJA
http://ww4report.com/node/6571

 開戦によって、パレスチナ和平交渉を今後再開することは、おそらく不可能になった。米国のオバマ新政権は、パレスチナ和平の成功を外交面での最優先課題の一つにしているが、その実現は、就任3週間前の現時点で、すでにほとんど無理になった。

 パレスチナ社会は、親米のファタハ(パレスチナ自治政府。西岸)と、反米のハマス(ガザ)に分裂しており、しだいにハマスが優勢になっているが、米欧イスラエルはハマスを「テロ組織」とみなし、ファタハのみを正当なパレスチナ代表とみなし、交渉相手にしている。しかし、来年1月9日には、ファタハのアッバス大統領の任期が、後継者もいないまま終わる。選挙をやるとハマスに負けるアッバスは、大統領選挙をやれず、後継者を決められなかった。
http://wire.antiwar.com/2008/12/16/abbas-says-hell-call-palestinian-vote-very-soon/

 アッバスは、任期満了後も米欧やアラブの承認を受けて続投する可能性があるが、今回のガザ開戦によって、アッバスは続投してもパレスチナ人に全く支援されなくなるだろう。今後、ガザ戦争が長引くほど、反米反イスラエルのインティファーダの蜂起が、ガザから西岸へと広がり、親米のアッバスは嫌われる。オバマ政権は、パレスチナ和平をやろうにも「テロリスト」のハマスを容認しない限りパレスチナ人の代表者がいないという、行き詰まりの状態になる。

▼国際軍に国境警備させる戦略

 今回のガザ開戦は、12月19日にイスラエルとハマスの間の半年間の停戦が終わり、停戦協定の延長交渉が失敗したために起きた。イスラエルでは来年2月に総選挙が控えており、与党カディマは、本心ではハマスと和解したいと思っているが、ハマスに対して弱腰だと有権者に思われたくないので、エジプトが仲裁した停戦延長交渉で譲歩できず、開戦せざるを得なくなった。

 このまま戦争が続くと、戦闘はガザから西岸、そしてレバノン南部でのヒズボラとの戦いへと拡大し、シリアとも戦争になってイランも巻き込まれ、07年ごろから何度も書いている「中東大戦争」になりかねない。イスラエルは、核戦争や国家破滅にもなりかねない危険な綱渡りをしている。

 とはいえイスラエルは、何の目的もなく危険な開戦をしたわけではない。おそらく、06年夏のレバノンでのヒズボラとの戦争と同様の停戦戦略を考えている。それは、ガザでの戦争を国連の仲裁によって停戦し、国連もしくはNATOが編成する国際軍をガザとイスラエルとの国境沿いに展開してもらい、ハマスがイスラエルにミサイルを撃ち込むことを国際軍に抑止してもらって停戦を持続可能にした上で、ハマスと和解する魂胆と推測できる。イスラエルは、国際軍に国境警備させ、イスラム主義者(と米国の多極主義者)によるイスラエル潰しを不可能にして、国家存続する戦略だろう。

 イスラエルの新聞ハアレツは12月27日の記事で「国際的な介入によって停戦に至るまでに、何日かかり、どこで戦闘が行われるか(西岸やレバノン南部にまで拡大するのかどうか)予測が難しい」と、戦争の行き着く先が国際軍の呼び込みであることを、さらりと書いている。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050405.html

 07年秋の「アナポリス和平会議」以来、パレスチナ和平は、米国、EU、ロシア、国連という4者(カルテット)が仲裁する態勢になっている。米ブッシュ政権はハマス敵視で「ファタハとしか交渉してはいけない」という姿勢をイスラエルやEUに強要したが、もうすぐファタハが潰れ、ブッシュ政権も終わる。イスラエルとしては、オバマ政権がハマス敵視をやめることを前提に、カルテットにガザ停戦を仲裁させ、ハマスとの和解を行う腹づもりだろう。ロシア、国連、EUは、ハマスをパレスチナ人の代表とみなすことに抵抗が少ない。

 しかしそもそも、ガザの停戦が12月に切れ、大統領がオバマに代わるときにイスラエルが戦争に巻き込まれているように設定したのは、ブッシュ政権の謀略である。ブッシュ政権は、表向きはイスラエル支持だが、裏では06年夏にイスラエルとヒズボラをレバノンで戦争させ、中東大戦争を起こそうとするなど、イスラエルを潰そうとしてきた。こうした経緯を考えると、ガザ戦争がイスラエルの思惑どおり停戦できるかどうかは怪しい。失敗すれば、中東全域を巻き込む大戦争になる。

 今回の開戦に際しては、12月22日から「イスラエルはガザ侵攻を決定し、関係各国に通告した」という記事が出ており、私は記事の執筆を開始したものの、私事にかまけて時間がかかっているうちに、開戦してしまった。以下は、開戦前日の12月26日にできていた記事である。書き直してさらに時間を食うより、早く配信した方がいいと思うので、そのまま以下に貼りつける。
http://news.antiwar.com/2008/12/21/israel-launches-global-pr-campaign-ahead-of-gaza-invasion/

▼中東和平をめぐるこの1年の流れ

 パレスチナのガザ地区における、イスラエル政府とハマス(ガザを統治するパレスチナ人のイスラム主義武装勢力)との間の6カ月間の停戦協定が、12月19日に失効した。6月19日にエジプトの仲裁で締結された、半年間の停戦協定の期間が切れた。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1047959.html

 すでに停戦協定が切れる2週間ほど前から、ハマスはイスラエル領内に向かって短距離ミサイルを発射し始め、これに対してイスラエル軍は、戦車や攻撃用ヘリコプターで、ガザにちょっと侵攻しては撤退する手法で、再戦争の泥沼にはまらないよう警戒しながら報復的攻撃を再開していた。
http://electronicintifada.net/v2/article10032.shtml

 イスラエル軍が大規模にガザへ侵攻し、本格的な戦争になると、イスラエルとパレスチナ人の間で和平を結ぶことは不可能になる。戦争はレバノンのヒズボラ(シーア派イスラム教徒武装勢力)との戦闘に飛び火し、イスラエルはシリアやイランとも開戦して中東大戦争になる可能性が高くなり、イスラエルが核兵器を使う懸念が強まる。イスラム世界と、それに同調する中南米など発展途上国(米欧日以外の国々)の全体で反イスラエル感情が強まる。イスラエルは追い詰められ、中東各都市やモスクワなどを400発持っている核兵器で攻撃する「サムソン・オプション」を行使した挙げ句、滅亡しかねない。
http://www.uruknet.de/?p=m49340&hd=&size=1&l=e

 イスラエルの上層部は、自国の滅亡を防ぐため、何とか戦争を避け、パレスチナ和平をやりたいと考え、米政府に頼んで07年11月に米国アナポリスで中東和平会議を開かせた。だが、米イスラエルの右派(チェイニーやネオコン、リクード右派)が、対立を煽る妨害策を展開したため和平は進展しなかった。
今年2-3月ごろには、逆にイスラエルがハマスやヒズボラとの対立が激化し、私が「中東大戦争が近い」と何度も書くような事態になった。
http://www.tanakanews.com/080301gaza.htm

 イスラエルのオルメルト政権は、何とか戦争開始を回避し、エジプトやサウジアラビアが仲介する和解策に乗り、6月19日のハマスとの停戦協定にこぎつけた。イスラエル政府は、半年間の停戦の間に、パレスチナ側との和平交渉を進めようとした。パレスチナは西岸のファタハ(親米派)とガザのハマス(反米派)が対立しているが、エジプトに両者を和解させた上でイスラエルとの和平交渉にはいるとか、ファタハにガザの再乗っ取りを成功させるべくテコ入れするとか、イスラエルはいくつかのシナリオを模索した。

 しかしその直後、再び米イスラエルの右派からの妨害策が入り、オルメルトはスキャンダルを暴露されて検察に取り調べを受け、辞任を表明せざるを得なくなった。与党カディマでは9月に党大会を開き、オルメルトの後継党首としてリブニ外相を選び、カディマ単独では議会の多数をとれないので、リブニは新規連立政権の組閣を開始した。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1022114.html

 だが、イスラエル政界では右派の力が意外に強く、リブニは10月末の組閣期限までに組閣できず、来年2月に総選挙を行わねばならなくなった。それまでの間、首相職は辞任表明した死に体のオルメルトが続投しているが、こんな混乱状態ではパレスチナ側との和平も進展せず、12月19日の停戦期限が来てしまった。
http://www.reuters.com/article/vcCandidateFeed7/idUSTRE49P30I20081026

▼和平したいのに好戦的にならざるを得ないイスラエル

 イスラエルは来年2月に総選挙を行うが、ガザで正式に戦争が始まると、野党リクード内の少数派である好戦的なリクード右派に人気が集まり、与党の中道的なカディマや、和平をやらざるを得ないと気づいて好戦右派から和平派に転換したリクード主流派のネタニヤフ党首が不利になる。すでにネタニヤフは、リクード内で右派の反乱的な台頭に苦戦し、総選挙の立候補者名簿の中に右派を多くせざるを得なくなっている。ガザが戦争になり、総選挙で右派議員が増えるほど、イスラエル政府は和平方針を採れなくなる。
http://news.antiwar.com/2008/12/09/even-more-hawkish-likud-gears-up-for-february-elections/
http://www.taipeitimes.com/News/world/archives/2008/12/10/2003430787

 イスラエル政府は、選挙で右派を勝たせたくないので、何とかガザで戦争しないですむようにしたい。停戦期限前からイスラエル軍はガザに侵攻しているのだが、イスラエルはガザにマスコミを入れないようにしているので、戦況はほとんど報道されず、ガザでは戦争が起きていないことになっている。イスラエル国内では「ハマスと戦争できない以上、和解交渉するしかない」という意見もあるものの、ハマスからの毎日のミサイル砲撃を受け、イスラエル国内の世論は好戦性を増しており、リブニら主要候補はみな「ハマスがミサイル攻撃を止めない限り、間もなくガザに侵攻してハマスを退治する」と言わざるを得なくなっている。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1048368.html
http://news.antiwar.com/2008/12/21/israel-launches-global-pr-campaign-ahead-of-gaza-invasion/

 イスラエルは、半年前と同様、ハマスとの再停戦の交渉をエジプトに仲裁してもらっている。リブニはカイロに行ってエジプトのムバラク大統領と会談した。しかし、停戦延長交渉が行われている一方で、イスラエル政府は12月24日に開戦を検討する閣議を5時間にわたって開いた。
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1049009.html
http://www.nytimes.com/2008/12/25/world/middleeast/25mideast.html

 今年6月にハマスとの停戦を締結する前の時期にも、毎日ガザからイスラエルにミサイルが飛んできて「もうすぐ戦争だ」「いや、間もなく停戦協定を結べる」といった情報が何週間か交錯し、結局停戦できた。今回はどうなるか。
半年ぶりに瀬戸際状態が再現されている。
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-3552906,00.html
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?cid=1209627012903&pagename=JPost%2FJPArticle%2FShowFull

 ブッシュ政権は、金融危機やアフガンの戦況など、米国が抱えるさまざまな危機が、オバマ政権になってから全崩壊的にひどくなるような仕掛けを随所に作っている観がある。イスラエルとハマス・ヒズボラ・イランなどとの戦争も、オバマ政権の就任前後に勃発するような仕掛けにしてあるとも思える。ブッシュ政権の高官がイスラエルに対し、ガザ侵攻やイラン空爆を挙行するなら、オバマ就任後まで待てと言ったと報じられている。
http://news.antiwar.com/2008/11/24/report-us-asked-israel-not-to-start-any-major-wars-until-obama-takes-office/

 米国の大統領選挙でオバマが当選する前後「オバマの就任直後に国際政治の大きな危機が起きる」という予測を、バイデン副大統領やパウエル元国務長官らが放った。この予測が正確であるとしたら、最もありそうなのがイスラエルがガザに侵攻し、それがレバノン・シリア・イランとの中東大戦争に拡大していくことだ。オバマ就任まで1カ月を切った現時点で、国際政治危機としてほかに起こりそうなことは、インドとパキスタンの戦争ぐらいである。
http://tanakanews.com/081028mideast.htm

 印パ間では、インドがパキスタンに要求したテロ容疑者引き渡しの期限が12月26日に過ぎており、インドは要求が受け入れられない場合、パキスタンをミサイル攻撃するかもしれないと言っている。すでに印パ両軍は、国境沿いなどで警戒態勢をとっている。パキスタンは陸軍の一部を、対アフガニスタン国境から、インド国境の方に移動させた。パレスチナと印パの両方で、オバマ就任に合わせて戦争が始まるかもしれない。
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5hkiMxbHNH0BqgpWA2ZG6VD6wVTmAD95AN8A80



この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/081228Gaza.htm

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2006.09.17

●戦争の足音:中東(9/14)

■9/14 「レバノンに100万発以上の子爆弾を落とした」 イスラエル軍司令官(P-navi info
http://0000000000.net/p-navi/info/

イスラエルのハアレツ紙が報じたところによると、12日(火)にイスラエル軍のロケット・ユニットの司令官自身が、レバノンで120万発以上の子爆弾を含んだ最低1800発のクラスター爆弾を使ったこと を明らかにしている。それに加え、国際法で禁じられているリン砲弾を使ったことも証言した。

この司令官は 「街を爆弾で埋め尽くした」(註・「街」はtownsで複数形)「我々がやったことは、正気の沙汰ではなく、醜悪だ」 と語ったという。

さらに証言では、精度が低いことを知りつつ、「マルティプル・ロケット発射システム(MLRS)」を使ったことも出ている。このシステムは大量にロケットを飛ばせるが、正確に標的に当たらないとハアレツ紙は書いている。

停戦後に不発となって残ったクラスター爆弾により殺されたレバノン人は約20人。クラスター爆弾をイスラエルが使ったのは停戦直前に集中していることもわかっている。この停戦直前の時期に、米国からイスラエルへのクラスター爆弾を含む武器輸送は駆け込みのように大量に行われていた。

国連では40%のクラスター爆弾が不発のまま、地雷となってレバノンに残っていると計算しているが、レバノンの状況をもって、クラスター爆弾を国連の使用禁止武器リストに加えるようにと6つの国が要求をだした(オーストリア、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、スウェーデン、バチカン)。

Israeli Commander: we dropped more than a million cluster bombs on Lebanon より)
http://www.imemc.org/content/view/

■9/14 瓦礫の中を歩いて  イスラエルはアメリカ合衆国製クラスター爆弾を使った:フランクリン・ラム(国際法学者)http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/lebanon060914.html

(略)
別の調査からは、イスラエルが2006年7月から8月の紛争で用いたクラスター爆弾全体のうち、60%近くを停戦直前の72時間に使った ことが確認されている。現場の軍事アナリストたちは、その理由として2つが考えられると述べている。

1.イスラエル指導部が抱く苛立ちや憎しみ、怒り。また、リタニ川までをイスラエルが再占領しようとしたことに対するヒズボラのレジスタンスをレバノン人の85%以上(レバノンの中流階級やキリスト教徒も含む)が支持していることに対する復讐に取り憑かれたこと。

2.イスラエルが米国製のクラスター爆弾のストックをできるだけ早く減らしたかったこと----ペンタゴンは、M-26といった最新型のクラスター爆弾をイスラエルが注文するためには、これまでのストックを減らさなくてはならないと条件を付けている。
これが、ほとんど遺物とも言える33年前の型のCBU-58が極めて多く用いられた理由である。
新たに発注を出すためにイスラエルはCBUの在庫を一掃したのだと、あるレバノン軍情報筋は述べている。

(略)

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